健康維持

エアコンの設置部材が不足しています——2026年夏「本体はあるのに付けられない」の背景と、いまできる備え

公開日: 2026-06-15 · 更新日: 2026-07-27 · 約9分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

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「エアコン、そろそろ買い替えなきゃ」――そう思って売り場に向かったあなたに、いちばん最初にお伝えしたいことがあります。
2026年のこの夏は、エアコン本体は買えても、取り付け工事がすぐには進まないケースが各地で報じられました。不足しているのはエアコンそのものではなく、設置工事に欠かせない“部材”のほう。一部の業者だけの話ではなく、テレビや業界紙、民間の全国調査でも取り上げられている出来事です。
今日はあわてず、でも正確に。いま何が起きているのか、なぜ「代替品でしのぐ」ことも難しいのか、そして私たちはどう備えればいいのかを、ていねいに整理してみますね。

2026年7月27日 追記・訂正:初出時に、出典の日付と一部の数値に誤りがありました。確認できる公表資料に差し替えています。あわせて「2027年問題」の説明を、資源エネルギー庁およびメーカーの公式説明にもとづいて全面的に書き直しました。買い替えを急がせる趣旨の記述も改めています。

「本体はあるのに、付けられない」――いま現場で起きていること

2026年6月11日に配信された福岡TNCニュース(テレビ西日本)の「夏本番前なのにエアコン“設置待ち”」という報道では、エアコン本体も設置部材も入荷できず、設置を待つ状態が広がっていると伝えられました。販売店への取材として、購入者が前年同期比で「3割ほど増えている」一方、室外機を据える架台は「1か月ほど前からほとんど入荷しなくなった」、配管化粧カバーは入荷まで「1か月から1か月半かかっている」という声が紹介されています。
つまり今年は、「お店にエアコンが並んでいない」のではありません。本体はあるのに、それを壁に取り付け、室外機とつなぐための“周辺部材”が入ってこないために、工事の予定が立てにくい――そういう状況です。

これは九州だけの話ではありません。帝国データバンクが2026年5月21日〜31日に全国4,604社を対象に行った「中東情勢に伴うナフサなど石油製品供給状況に関する影響調査」では、影響を受けている企業のうち「仕入コストの上昇」を挙げた企業が83.9%、「調達が不安定・入手困難」を挙げた企業が73.0%にのぼりました。数字を見ても、これが“ごく一部の話”ではないことが分かります。

足りないのは「エアコン」ではなく「工事の部材」

では、具体的に何が足りないのでしょうか。報道や施工業者の声を整理すると、不足しているのは次のような“地味だけれど絶対に欠かせない”部材たちです。

  • 架台(かだい)……室外機を地面やベランダに据えるためのプラスチック製の台。最も深刻に不足している部材のひとつ。
  • 配管化粧カバー(スリムダクト)……配管を保護・目隠しする外装カバー。特に黒など一部の色は製造が止まっているとの情報も。
  • 被覆銅管(冷媒配管)……エアコンの心臓部をつなぐ配管。後述するとおり、銅の高騰でも値上がり・品薄に。
  • 断熱材・保温材……配管に巻く被覆。原料がナフサ由来のため供給が不安定。
  • 粘着テープ・パテ(穴埋め材)・ドレンホース……いずれも工事に必須の消耗部材で、品薄が指摘されています。

どれか一つでも欠ければ、安全で確実な設置工事は成立しません。「本体+これらの部材が、ひと組そろって初めて1台のエアコンが動く」――この当たり前の前提が、いま崩れかけているのです。

原因①:ナフサ不足(中東情勢)でプラスチック部材が入らない

ひとつめの原因は、ナフサの不足です。ナフサとは原油から精製される石油化学の基礎原料で、プラスチック製品の“もと”になるもの。架台、配管カバー、断熱材、テープ類といった部材は、いずれもこのナフサ由来のプラスチックでできています。
報道によれば、中東情勢の悪化を受けてナフサの調達が不安定になり、メーカーが部材の出荷を制限。架台については「約3か月前から出荷制限が予定され、約1か月前からはほとんど入ってこなくなった」という現場の証言も伝えられています。

原油の上流(ナフサ)でつまずくと、その下流にあるプラスチック部材すべてに、同時に影響が及んでしまう。

ここが今回の問題の根の深いところです。「あるメーカーの一品番だけ足りない」のではなく、石油化学という共通の“川上”が細っているために、関連するプラスチック部材がまとめて品薄になっているのです。

原因②:銅の高騰で「銅管」も品薄・値上がり

ふたつめの原因は、まったく別の素材――です。エアコンの冷媒配管(銅管)は、その名のとおり金属の銅でできています。こちらはナフサとは関係なく、銅地金そのものの価格高騰が直撃しています。
現場からは「エアコン用の銅管は3年前と比べて約3倍に値上がりした」という声が上がっており、配線に使う電線(銅)も2026年4月から25%の値上げ。さらに一部では業者による買い占めも指摘され、品薄に拍車をかけています。

つまり2026年のエアコン工事は、「プラスチック部材=ナフサ不足」「金属部材=銅高騰」という、原因の異なる二つの逆風が同時に吹いている状態。だからこそ、片方が落ち着いてもすぐには解消しない、根の深い品薄になっているのです。

不足している部材主な原因
架台・配管カバー・断熱材・テープ・パテナフサ不足(中東情勢→石油化学原料の調達難)
銅管(冷媒配管)・電線銅地金の高騰(国際相場・買い占めなど)

メーカーは半年で三度の値上げと出荷制限に踏み切った

この二つの逆風は、メーカーの動きにもはっきり表れています。空調用の被覆銅管などを手がける因幡電機産業は、日刊産業新聞の報道によれば、2026年前半に三度の値上げを通知しました。

  • 2026年2月1日出荷分〜銅地金プレミアムの大幅上昇を理由に、コイル・直管の全製品で標準単価を一律20%以上引き上げ。
  • 2026年4月1日出荷分〜:同じくコイル・直管の全製品を対象に、現行価格比20%以上の追加引き上げ。
  • 2026年6月1日出荷分〜中東情勢の緊迫化による樹脂原材料の調達難を理由に、さらに20%以上の緊急引き上げ。あわせて出荷数量の制限や納期回答の遅れが生じる可能性も示されました。

半年たらずのあいだに、理由の異なる値上げが三度。しかも「値段が上がる」だけでなく、「数を絞る・納期が読めなくなる」という出荷制限がセットになっています。値上げを受け入れても、そもそも“モノが回ってこない”――それが現場の実感だと報じられています。

「代替品でしのぐ」も、ほぼ不可能なワケ

「銅管が足りないなら、別の素材の配管を使えばいいのでは?」「カバーは何か他のもので代用できないの?」――そう思いますよね。けれど、ここがいちばんお伝えしたいところで、今回は“代替品でしのぐ”という逃げ道も、現実にはほとんど残されていないのです。

銅管の代わりは、事実上ない

エアコンの冷媒配管は、長年にわたってほぼ100%が銅管でまかなわれてきました。代替として注目されるアルミ配管も研究・規格化が進められてはいますが、アルミは「水に弱い」といった弱点があり、一般家庭の取り付け工事で当たり前に使える段階には至っていません。規格や施工指針の整備が進む途上であり、街の電器店がすぐに切り替えられるものではないのです。
つまり、銅管が足りないからといって、明日からアルミ管で代用――というわけにはいきません。冷媒配管は「銅でなければならない」場面がほとんどで、ここに代替の余地がほぼないのです。

プラスチック部材は「代わりも同じナフサ由来」

では架台やカバー、テープはどうでしょう。これも厳しい話で、代わりに使える製品も、結局は同じナフサ由来のプラスチックです。原料の“川上”が細っている以上、別メーカー・別品番に替えても、同じ供給制約の中で奪い合うことになります。色や規格が合うものを探し回っても在庫が見つからない、という事態が各地で起きているのは、このためです。
木やコンクリートで架台を自作する、といった応急策が語られることもありますが、強度・耐候性・安全性の観点から、正規の工事として誰にでもすすめられるものではありません。「ありもので代用してとりあえず動かす」が通用しにくい――それがエアコン工事の難しさなのです。

重なる「2027年問題」――ただし、急いで買う理由にはなりません

この部材不足に、いわゆる「2027年問題」が重なっています。2027年4月に家庭用エアコンの省エネ基準(トップランナー基準)が強化される予定で、「基準が変わる前の今のうちに買い替えよう」という需要が前倒しで生まれている、と報じられています。実際、前掲の福岡TNCニュースでも、購入者が前年同期比で3割ほど増えていることが、部材不足と並ぶ“設置待ち”の要因として挙げられていました。

ここは誤解が広まりやすいところなので、公式の説明を確認しておきます。
資源エネルギー庁およびメーカーの解説によれば、トップランナー制度は製品を製造・出荷するメーカーに対して適用される制度で、メーカーがその年度に出荷する製品全体(加重平均)で目標値の達成を求める仕組みです。個々の製品に一律の基準クリアを義務づけるものではありません。
また、いまご家庭で使っているエアコンを買い替える必要はなく、引き続き使えます。2027年4月に「使えなくなる」「買えなくなる」わけではありません。

もちろん、基準の強化にともなって低価格帯モデルの品ぞろえが変わり、平均的な価格が上がっていく可能性は指摘されています。ただ、それは「いま慌てて買わないと損をする」という話とは別です。エアコンは10年前後使う設備ですから、本体価格だけでなく、省エネ性能の向上による電気代の差も含めて総合的に判断するほうが、結果的に家計にやさしいことが多い、というのがメーカー側の案内でもあります。
「2027年問題」は、買い替えを急かす材料ではなく、買い替えの時期を落ち着いて計画するための前提として受け取るのが適切だと思います。

まとめると:工事までに時間がかかることを前提に動く

ここまでを整理すると、2026年の夏は次の条件が重なっていると報じられています。

  1. 設置に必須の部材(架台・カバー・銅管・断熱材など)が、ナフサ不足と銅高騰という二つの原因で同時に品薄になっている。
  2. メーカーが値上げと出荷制限に踏み切り、モノが回りにくくなっている。
  3. 代替品でしのぐ道も限られている(銅管に代わりがなく、プラ部材は代替も同じナフサ由来)。
  4. 2027年問題を意識した買い替え需要が前倒しで増え、工事の順番待ちが伸びている。

ここから言えるのは、「本体を買った日に涼しくなる」とは限らないので、工事までの待ち時間を前提に段取りを組んでおきたい、ということです。
どのくらい待つかは、地域・業者・在庫の巡り合わせで大きく変わります。実際の納期は、必ずお近くの販売店・施工業者にご確認ください。ここで大切なのは、待ち時間があるかもしれないと分かったうえで、その間の暑さ対策を先に用意しておくことです。

では、どうすればいい?――あわてないための、現実的な備え

待ち時間があるかもしれないと知ったうえで、私たちにできることもちゃんとあります。落ち込むより、できる準備を一つずつ。順番が大事なので、いちばん急ぐものから並べます。

① まず、熱中症から身を守る手段を先に確保する

これが最優先です。工事を待つあいだの空白を、扇風機やサーキュレーターで空気を動かす、遮光カーテンやすだれで日差しを遮る、冷感寝具や保冷剤を使うといった手段で埋めておきましょう。あわせて、こまめな水分・塩分補給を。
そして何より、冷房をがまんしないことです。「電気代がもったいないから」と冷房を控えるのは、いちばん避けたい選択です。自宅のエアコンが不調なら、日中は図書館や商業施設、自治体のクーリングシェルターなど涼しい場所へ避難するのも立派な対策です。とくに高齢のご家族がいるお宅では、熱中症は命にかかわります。無理せず過ごす工夫を、家族で共有しておきましょう。

② “今あるエアコン”を最大限に活かす

買い替えを考える前に、いま使っているエアコンの実力を取り戻してあげましょう。フィルター掃除、室外機まわりの風通しの確保、必要ならプロのクリーニング。これだけで効きが変わることは珍しくありません。新品の設置に時間がかかる今年は、「手元の一台を元気にする」ことが何よりの近道です。
※ 内部の分解洗浄や電装部分に触れる作業は、感電・故障・保証切れの原因になります。ご自身で行うのはフィルターと外側の掃除までにして、それ以上はメーカーや専門業者にご相談ください。

③ 買い替えるなら「工事の予約まで含めて」段取りする

買い替えが必要なら、本体の購入と工事の予約をセットで考えるのが確実です。本体だけ先に確保しても、部材と職人さんの手配が付かなければ涼しくはなりません。購入前に「取り付け可能な時期」を必ず確認し、工事日まで押さえられるお店を選びましょう。見積もりも、複数の業者に早めに相談しておくと比較ができて安心です。
ただし、「2027年問題があるから今すぐ」とせかす必要はありません。前述のとおり、いま使っているエアコンが使えなくなるわけではないからです。壊れていて生活に支障が出ているなら急ぐ、まだ動くなら電気代の差も含めて落ち着いて比べる――その線引きで十分だと思います。

まとめ:知っておくことが、いちばんの“涼”になる

2026年のエアコン事情は、「本体はあるのに付けられない」という、これまであまりなかった形の困りごとです。ナフサ不足と銅高騰という二つの逆風、代替の効きにくい部材、そして2027年問題を意識した需要の前倒し――いくつもの要因が重なって、工事までに時間がかかりやすい状況が報じられています。
だからこそ、煽られて飛びつくのでも、知らずに後手に回るのでもなく、「いま何が起きているのかを正しく知って、できる備えを淡々と進める」。それが、この暑い夏をいちばん心穏やかに越えるコツだと思うのです。
そして繰り返しになりますが、いちばん優先すべきは買い物ではなく、いま目の前の暑さから身を守ることです。エアコンが付くまでのあいだ、どうか冷房と休息をがまんしないでください。
あなたとご家族が、この夏も無理なく、やさしい涼しさのなかで過ごせますように。

※本記事は2026年5〜6月時点の報道・調査・メーカー公表資料をもとにまとめ、2026年7月27日に出典と数値、および「2027年問題」の説明を修正したものです。部材の需給・価格・納期は日々変化するため、購入・工事の際は必ず最新の情報と、お近くの販売店・施工業者にご確認ください。価格・納期・在庫はお店や地域によって異なります。本記事は一般的な情報の紹介であり、特定の製品の購入を推奨するものではありません。

よくある質問

Q. エアコン本体はあるのに設置できないと聞きました。なぜですか?

本体ではなく、架台や配管カバー、銅管、断熱材といった設置部材が不足しているためと報告されています。部材が届かず工事が進まない例が出ているとされています。

Q. 設置部材が不足しているのはどんな背景があるのですか?

中東情勢などによるナフサ(石油化学の基礎原料)の供給不安と、銅価格の高騰が影響しているとされます。帝国データバンクが2026年5月に全国4,604社を対象に行った調査では、影響を受けた企業のうち83.9%が仕入コストの上昇、73.0%が調達の不安定・入手困難を挙げています。

Q. 「2027年問題」があるので、今のうちに買い替えたほうがよいのでしょうか?

急ぐ必要はないとされています。2027年4月に強化される省エネ基準(トップランナー制度)は、メーカーが出荷する製品全体の加重平均に対する目標であり、個々の製品に一律の基準クリアを義務づけるものではありません。資源エネルギー庁やメーカーの説明でも、いま使用中のエアコンを買い替える必要はなく、引き続き使えるとされています。本体価格だけでなく電気代の差も含めて総合的にご判断ください。

Q. 工事を待つあいだ、今すぐできる対策はありますか?

まず熱中症を防ぐことが最優先です。扇風機やサーキュレーター、遮光カーテン、冷感寝具などを使い、こまめに水分・塩分を補給し、冷房をがまんしないことが呼びかけられています。涼しい場所へ避難するのも有効です。あわせて、今あるエアコンのフィルター掃除や室外機まわりの風通しの確保も効果が期待できます。体調の変化を感じたときは無理をせず医療機関にご相談ください。

参考にした情報源

  1. 福岡TNCニュース(テレビ西日本)「夏本番前なのにエアコン“設置待ち” 『ナフサ不足』と『2027年問題』ダブルパンチ 本体も設置に必要な部材も入荷できず」2026年6月11日配信。記事を見る
  2. 帝国データバンク「中東情勢に伴うナフサなど石油製品供給状況に関する影響調査」(2026年5月21日〜31日実施・有効回答4,604社)。調査結果を見る
  3. 資源エネルギー庁「エネこれ」27年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート!エアコンについて知っておくべきポイントは? 解説を見る
  4. パナソニック「エアコン2027年問題とは?嘘とホント、価格への影響、省エネ性をわかりやすく解説」解説を見る
  5. 日刊産業新聞「因幡電機産業 空調用被覆銅管値上げ 2月出荷から」2025年12月22日。記事を見る
  6. 日刊産業新聞「因幡電産 空調用被覆銅管値上げ 4月出荷分から」2026年2月18日。記事を見る
  7. 日刊産業新聞「因幡電産 被覆銅管 緊急値上げ 樹脂原材料調達難で 6月出荷分から」2026年5月13日。記事を見る

※ 本記事は上記の報道・調査・公表資料をもとに、一般的な情報として編集したものです。部材の需給・価格・納期は変動するため、実際の購入・工事にあたっては必ずお近くの販売店・施工業者に最新の状況をご確認ください。

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