「お酒も適量なら体に良い」――長く語られてきた言説です。これを大規模な臨床試験できちんと確かめよう、という計画がありました。ところがその裏で、酒類業界の資金が大きく関わっていたことが明らかになり、試験は中止されます。
「適度な飲酒は心臓に良いか」を検証する1万人規模の臨床試験(MACH試験)が計画されました。しかし、その資金の大部分を酒類大手が提供しようとし、一部の研究者が業界への資金要請に関与していたことが2018年に報道されました。
独立性が損なわれ、中止へ
米NIH(国立衛生研究所)は内部調査の結果、研究の独立性・中立性が損なわれていると判断し、試験を中止したと報じられています。「業界が望む結論(適度な飲酒は健康に良い)を出すために設計されたのではないか」という疑念が、その背景にありました。
「適度な飲酒は健康」説のゆらぎ
かつての観察研究では、適度な飲酒と心疾患リスク低下の関連が報告されました。しかし、「飲まない人」に体調を崩してやめた人が含まれるなどの偏りが指摘され、近年は「健康にとって安全な飲酒量はない」とする分析も出ています。詳しい反証はこちらの記事で。
この事例は、業界が望む結論に研究そのものが誘導されうる危うさを示しています。たとえ一流の研究機関でも、資金源との距離が近すぎれば中立性は揺らぎます。「誰が研究費を出しているか」は、結果を読むうえで欠かせない情報です。
私たちはどう受け止めるか
お酒を楽しむこと自体を否定する話ではありません。ただ「適量なら健康に良い」を免罪符にしないこと、そして健康情報の背後にある資金源に目を向けることが大切です。
※本記事は公表された報道や研究をもとにした情報提供です。飲酒の適量には個人差があり、体質・持病・服薬状況によって異なります。飲酒については医療機関にご相談ください。未成年の飲酒は法律で禁止されています。
背景:なぜこの研究が話題になったのか
「適度な飲酒は心臓に良いか」を検証する1万人規模の臨床試験(MACH試験)で、資金の大部分を酒類大手が提供しようとし、一部の研究者が業界への資金要請に関与していたことが2018年に報道され、研究の独立性が問われたためです。
実生活での受け止め方
米NIHは研究の独立性・中立性が損なわれているとして試験を中止したと報じられ、かつて観察研究で見えた心疾患リスク低下の関連も偏りが指摘され、近年は安全な飲酒量はないとする分析も出ています。お酒を楽しむこと自体を否定する話ではありませんが、「適量なら健康に良い」を免罪符にせず、健康情報の背後にある資金源に目を向けたいところです。飲酒には個人差や健康リスクがあり、不安があれば医療機関に相談を。