この記事の要点
- 大腸がんは2023年に15万4,039例が新たに診断され、2024年には5万4,416人が亡くなっています。
- 国立がん研究センターは、喫煙・飲酒・高身長が大腸がんのリスクを高めることを「確実」と評価しています。肥満も危険性を高める要因に挙げられています。
- 一方で運動はリスクを下げることが「ほぼ確実」、食物繊維とカルシウムは「可能性あり」とされています。
- 診断から5年後の生存率は全体で69.9%。ただし、がんが大腸にとどまっているうちに見つかれば94.3%、離れた臓器に広がってからだと17.6%と、大きな差があります。
- 国の指針では、40歳以上は年1回の便潜血検査が勧められています。
大腸がんは、日本で最も多く診断されるがんのひとつです。一方で、生活習慣との関わりがよく調べられていて、早く見つかれば治療の見込みが高いがんでもあります。
この記事では、国立がん研究センターの統計と評価、世界保健機関(WHO)の見解、厚生労働省の指針という一次資料だけをもとに、なりやすくする習慣、年齢との関係、生存率、そして日々の食事と運動で何ができるかを整理します。
大腸がんはどれくらい多いのか
まず全体の規模です。いずれも国立がん研究センター「がん情報サービス」が公表している全国の統計です。
| 項目 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 新たに診断された数(2023年) | 154,039例 | 85,208例 | 68,830例 |
| 亡くなった数(2024年) | 54,416人 | 28,826人 | 25,590人 |
| 診断から5年後の相対生存率(2018年診断例) | 69.9% | 71.0% | 68.4% |
人口10万人あたりでみると、新たに診断される率は男性140.9、女性107.8で、男性のほうがやや多い傾向です。
何歳から増えるのか
大腸がんは年齢とともにはっきり増えるがんです。2023年の全国がん登録から、人口10万人あたりの罹患率(男女計)を年代別に抜き出しました。
| 年齢 | 人口10万人あたり |
|---|---|
| 35〜39歳 | 14.7 |
| 40〜44歳 | 25.1 |
| 45〜49歳 | 41.5 |
| 50〜54歳 | 67.1 |
| 55〜59歳 | 107.5 |
| 60〜64歳 | 159.7 |
| 65〜69歳 | 225.9 |
| 70〜74歳 | 310.6 |
| 75〜79歳 | 348.2 |
| 80〜84歳 | 383.5 |
40代前半と60代前半を比べると、およそ6倍です。40代後半から増え始め、50代以降で一気に多くなるという形です。国の大腸がん検診が40歳以上を対象にしているのは、この増え方と対応しています。
なりやすくする生活習慣と体質
国立がん研究センターは、日本人を対象にした研究をまとめて、生活習慣とがんの関係を「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」などの段階で評価しています。大腸がんについての主な評価は次のとおりです。
| 要因 | 大腸がんとの関係 | 評価の出どころ |
|---|---|---|
| 喫煙 | リスクを高める:確実 | 国立がん研究センター(2020年に「確実」へ更新) |
| 飲酒 | リスクを高める:確実 | 国立がん研究センター(2008年に「確実」へ更新) |
| 高身長 | リスクを高める:確実(大腸・結腸) | 国立がん研究センター(2024年に「確実」へ更新) |
| 肥満 | 危険性を高める | 国立がん研究センター がん情報サービス |
| 赤肉(牛・豚・羊など) | リスクを高める:可能性あり | 国立がん研究センター |
| 加工肉・赤肉(女性) | 危険性を高める可能性 | 国立がん研究センター がん情報サービス |
| 糖尿病と関連する指標 | リスクを高める:可能性あり | 国立がん研究センター |
| 炎症性腸疾患 | 危険性を高める | 国立がん研究センター がん情報サービス |
| 家族の病歴 | 関わりがある(家族性大腸腺腫症・リンチ症候群の家系では近親者に多い) | 国立がん研究センター がん情報サービス |
身長のように自分では変えられない要因もありますが、喫煙と飲酒は「確実」とされる中で、自分の意思で変えられる代表です。お酒については、当サイトの「健康に安全な飲酒量はない」は本当かもあわせてどうぞ。
加工肉と赤肉:WHOの評価と数字
世界保健機関(WHO)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、2015年に次のように分類しました。
- 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど、塩漬け・燻製などで加工した肉):「ヒトに対して発がん性がある」グループ1
- 赤肉(牛・豚・羊などの哺乳類の肉):「おそらく発がん性がある」グループ2A
WHOの解説によると、10件の研究をまとめた分析では、毎日50gの加工肉を食べるごとに大腸がんのリスクが約18%高まると推定されています。赤肉については証拠がそれほど強くないとしたうえで、因果関係が証明された場合には毎日100gごとに17%高まりうる、としています。
ここで注意したいのは、これがリスクの相対的な上がり方だという点です。「食べたら大腸がんになる」という意味ではありません。グループ1という分類も「がんを起こす証拠がどれだけ確かか」を示すもので、危険の大きさそのものを示すものではない、とWHO自身が説明しています。
リスクを下げるとされる習慣
反対に、リスクを下げる方向の評価もあります。
| 習慣 | 評価 |
|---|---|
| 運動(体を動かすこと) | リスクを下げる:ほぼ確実(とくに結腸がん) |
| 食物繊維 | リスクを下げる:可能性あり |
| カルシウム | リスクを下げる:可能性あり |
また国立がん研究センターは、がん全般について、禁煙・節酒・バランスのよい食事・活発に体を動かすこと・適正な体形の維持が、日本人を対象とした研究で有効とわかっているとしています。大腸がんのリスク要因とほぼ重なる内容です。
食生活でできること
- 加工肉は「毎日の定番」にしない。朝のハム・ソーセージ、昼の加工肉のサンドイッチが続いているなら、週の何日かを魚・卵・豆製品に置き換えるところから。
- 赤肉は量を意識する。鶏肉や魚と組み合わせて、赤肉ばかりにならないようにする。
- 食物繊維を増やす。野菜、海藻、きのこ、豆、全粒穀物、果物。詳しくは食物繊維と大腸の健康|レビューが示す現在地で整理しています。
- カルシウムを食事からとる。乳製品、小魚、大豆製品、青菜など。
- お酒は減らす。飲酒は「確実」にリスクを高める要因です。
運動でできること
評価が「ほぼ確実」とされているのが運動です。特別な競技である必要はなく、国立がん研究センターの表現も「活発に身体を動かすこと」です。
- 通勤や買い物で歩く距離を少し延ばす
- 週に何度か、息が少し弾む程度の運動を入れる(40代から始める安全な有酸素運動)
- 座りっぱなしの時間を途中で区切る
運動は体重の管理にもつながるため、肥満という別のリスク要因にも同時に働きかけられます。
生存率:見つかったときの広がり方で大きく変わる
全国がん登録にもとづく、2018年に診断された人の5年相対生存率を、診断時のがんの広がり方ごとに示します(男女計)。
| 診断時の広がり | 5年相対生存率 | 診断された人のうちの割合 |
|---|---|---|
| 限局(がんが大腸にとどまっている) | 94.3% | 45.6% |
| 領域(近くのリンパ節や隣の臓器に広がっている) | 74.5% | 28.4% |
| 遠隔(肝臓・肺など離れた臓器に転移している) | 17.6% | 19.1% |
| 全体 | 69.9% | — |
大腸にとどまっているうちに見つかれば、5年後の生存率は9割を超えます。一方、離れた臓器に広がってからでは2割を下回ります。いつ見つかるかが、結果を大きく左右することがわかります。
「相対生存率」とは、がん以外の原因で亡くなる影響をできるだけ取り除き、がんによってどれだけ命が失われるかをみる指標です。なお、ここでの数字は診断された時点からの生存率で、手術を受けた人だけに限った数字ではありません。また過去に診断された人のデータなので、治療の進歩により、これから治療を受ける人には当てはまらない可能性があります。
手術のあと:再発率と経過観察
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、手術のあとの再発率は、最初に見つかったときのステージ(病期)によって異なります。
- ステージⅠ:約5%
- ステージⅡ:約15%
- ステージⅢ:約30%
粘膜内にとどまるがん(ステージ0)は、完全に切除すれば再発することはほとんどないとされています。そして再発する人の85%以上は手術後3年以内に、95%以上は5年以内に見つかっています。手術後に一定期間、定期的な検査が続くのはこのためです。
手術に向けた体づくりについては、がん手術前2週間の自宅筋トレは意味があるかで研究を紹介しています。
検診:40歳から年1回の便潜血検査
厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で、大腸がん検診の方法が定められています。
- 対象:男女とも40歳以上
- 間隔:1年に1回
- 内容:問診と便潜血検査。がんからの出血は出たり出なかったりするため、2日分の便を採ります
- 費用:ほとんどの市区町村で多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受けられます
結果が「要精密検査」となったら、必ず精密検査(通常は大腸内視鏡検査)を受けてください。厚生労働省によると、要精密検査となった人のうち実際に大腸がんが見つかる割合は3.02%、およそ33人に1人です。多くは結果的にがんではありませんが、その「33人に1人」を見逃さないための検査です。
また、1回の検診で見つからないこともあるため、毎年受けることが勧められています。
気をつけたい症状
早い段階では、自覚症状はほとんどありません。進行すると、次のような症状があらわれることがあります。
- 便に血が混じる(血便・下血)、便の表面に血がつく
- 慢性的な出血による貧血(めまいなど)
- 便秘や下痢、便が細くなる、便が残る感じがする
- おなかが張る
こうした症状が続く場合は、次の検診を待たずに医療機関を受診してください。検診は症状のない人を対象にしたものです。
この記事の数字について
- 評価の「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」は、国立がん研究センターが日本人を対象にした研究を総合して判断した証拠の確からしさの段階です。どれだけリスクが変わるかという大きさを示すものではありません。
- いずれも集団を対象にした研究にもとづく傾向で、個人の将来を予測するものではありません。
- 本記事は一般的な情報の紹介であり、診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状や家族の病歴がある方、治療中の方は、医療機関にご相談ください。
出典(一次資料)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん種別統計情報 大腸」(罹患2023年・死亡2024年・5年相対生存率2018年診断例)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計 データダウンロード」(全国がん登録 年齢階級別罹患率2023年、臨床進行度別5年相対生存率2018年診断例)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 予防・検診」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がんについて」(症状)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 治療」(手術後の再発率)
- 国立がん研究センター がん対策研究所「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」評価一覧
- WHO「Cancer: Carcinogenicity of the consumption of red meat and processed meat」
- 厚生労働省「がん検診」(要精密検査者のがん発見割合)