この記事の要点
- 運動の前か後かを直接比べた3つの試験では、どれも差がありませんでした。2021年の総説も「今のところ気にする必要はない」と結論しています。
- 8週間の試験では、飲むタイミングだけでなく、クレアチンを飲んだ群とプラセボ(偽物)の群の間にも差が出ませんでした。
- ローディング(最初に多めに飲んで筋肉の貯蔵量を早く増やす方法)は、国際スポーツ栄養学会の公式見解で「貯蔵量を増やす最も効果的な方法」とされています。一方で、ローディングをせず1日3gを28日間続ける方法も併記されています(貯蔵量の増え方はゆるやか)。
- 高齢者の統合分析では、除脂肪量はローディングの有無にかかわらず増えましたが、筋力の上乗せはローディングを含む試験を除くと見られなくなりました。
- 総説・公式見解・統合分析の著者の多くが、クレアチン関連企業との関係を開示しています。
クレアチンを買った人が最初に迷うのは、「いつ飲むか」と「最初にたくさん飲むべきか」です。プロテインでも「運動直後に飲むべきか」がよく議論されますが、クレアチンではどうなのか。飲み方に関する研究を一次資料で確認します。
読む一次資料
| 資料 | 内容 | 入手性 |
|---|---|---|
| ① Kreider RB ほか(国際スポーツ栄養学会の公式見解) J Int Soc Sports Nutr 2017;14:18. | クレアチンの安全性と飲み方の公式見解 | 全文無料 |
| ② Ribeiro F, Longobardi I, Perim P ほか Nutrients 2021;13(8):2844. | 飲むタイミングについての総説 | 全文無料 |
| ③ Antonio J, Ciccone V. J Int Soc Sports Nutr 2013;10:36. | 運動の直前 vs 直後・男性19人・4週間 | 全文無料 |
| ④ Dinan NE, Hagele AM, Jagim AR ほか Front Sports Act Living 2022;4:1033842. | 運動前 vs 運動後 vs プラセボ・34人・8週間 | 全文無料 |
| ⑤ Forbes SC, Krentz JR, Candow DG. J Sports Med Phys Fitness 2021;61(9):1219-1225. | 体の左右で直前と直後を比べた10人・8週間 | 有料(要旨のみ) |
| ⑥ Forbes SC, Candow DG, Ostojic SM ほか Nutrients 2021;13(6):1912. | 高齢者での飲み方(量・ローディング・筋トレの日だけ)の統合分析 | 全文無料 |
⑤以外は全文が読めるので、数値は論文本文から取りました。⑤は要旨に書かれた範囲に限っています。
基本の飲み方──公式見解は何と言っているか
国際スポーツ栄養学会の公式見解(2017年)は、飲み方を次のように整理しています。
| 方法 | 内容 | 公式見解の評価 |
|---|---|---|
| ローディング | 1回5gを1日4回(体重1kgあたり約0.3g)、5〜7日間。その後は1日3〜5gで維持 | 筋肉の貯蔵量を増やす最も効果的な方法 |
| ローディングなし | 1日3gを28日間 | 貯蔵量はゆるやかに増える。満たされるまでは運動への効果が小さい可能性 |
公式見解はほかに、次の点も挙げています。
- 体の大きい選手では、維持に1日5〜10gが必要な場合がある
- 炭水化物や、炭水化物とたんぱく質と一緒にとると、体に残りやすいと報告されている
- いったん貯蔵量が上がると、やめても元の水準に戻るまで4〜6週間かかる
つまりローディングは貯蔵量を早く増やすための方法です。公式見解は、ローディングをしない方法でも貯蔵量はゆるやかに増えるとしつつ、十分に満たされるまでの間は運動への効果が小さい可能性があると書いています。
結果① 運動の前か後か──直接比べた3つの試験
| 試験 | 対象・期間 | 比べたもの | 結果 |
|---|---|---|---|
| ③ Antonio ら(2013年) | 趣味でボディビルをする男性19人・4週間 | 5gを運動の直前 vs 直後 | 通常の統計検定では差なし。別の解析手法で「直後のほうが良い可能性がある」と記載 |
| ④ Dinan ら(2022年) | 筋トレ経験のある大学生アスリート男女34人・8週間 | 5gを運動の前1時間以内 vs 後1時間以内 vs プラセボ | 3群とも同じように向上し、差なし |
| ⑤ Forbes ら(2021年) | 若い男女10人・8週間 | 体の片側は運動直前、反対側は直後に飲む日を割り当て | 筋肉の厚み・筋力とも同程度 |
④の試験は特に注目に値します。3群とも、ホエイプロテイン25gと炭水化物25gを一緒にとっていました。8週間で3群とも除脂肪量(平均+1.34kg)や筋力(下半身の最大挙上重量で平均+7.32kg)は伸びましたが、論文は「クレアチンを飲むことも、そのタイミングも、結果に影響しなかった」と書いています。つまりこの試験では、プラセボとの差も出ませんでした。
また④では、47人が参加して34人が最後まで残りました。体重増加に関連する副作用を理由にやめた人が4人いましたが、その内訳は運動前群2人・プラセボ群2人でした。
③の試験の「直後のほうが良い可能性」は、通常の統計検定で差が出なかったあとに、別の解析手法で示されたものです。著者のうち1人がスポーツサプリのブランドの顧問を以前務めていたことを開示しています。
結果② 総説の結論──「今のところ気にする必要はない」
2021年の総説②は、タイミングに関する研究を整理したうえで、次のように結論しています。
- 運動の後に飲むほうが良いという弱い根拠はあるが、その仕組みは確かめられていない
- タイミングが意味を持つとしても、貯蔵量を満たしている最初の時期だけで、満たされた後はおそらく関係がない
- 既存の研究は結果が食い違っており、トレーニングの時間に合わせて飲む時間を変えることは、今のところ確かな根拠に支えられておらず、気にすべき問題ではない
結果③ 高齢者での飲み方──量・ローディング・筋トレの日だけ
2021年の統合分析⑥は、高齢者を対象に飲み方の違いを比べています。
| 飲み方 | 除脂肪量(プラセボとの差) | 筋力 |
|---|---|---|
| 1日5g超(ローディングあり・なし) | +1.21kg | レッグプレスで上乗せあり |
| 1日5g超(ローディングありの試験を除く) | +1.16kg | ― |
| 1日5g以下(ローディングあり・なし) | +1.40kg | ローディング後に5g以下を続けた場合、チェストプレスで上乗せあり |
| ローディングありの試験をすべて除く | ― | チェストプレス・レッグプレスとも上乗せなし |
| 筋トレの日だけ飲む | +1.73kg | チェストプレス・レッグプレスとも上乗せあり |
除脂肪量はローディングの有無や量にかかわらず増えています。一方、筋力の上乗せはローディングを含む試験に依存しており、それらを除くと差が見られなくなりました。また「筋トレの日だけ飲む」やり方でも、除脂肪量と筋力の上乗せが報告されています。
資金と利益相反
- ①公式見解:著者の多くが、サプリ企業からの研究費、顧問料、サプリ製品の売上に応じた報酬(ロイヤリティ)、特許出願、サプリ企業の役員職などを開示しています。筆頭著者は、サプリ業界の団体と学会の依頼でこの改訂版を作成したと記載しています。
- ②総説:著者の1人がクレアチン製造企業から研究費・講演料を受け、その科学顧問を務めていると開示しています。別の1人は同社からクレアチンの無償提供を受けていました。
- ③Antonio らの試験:著者の1人がスポーツサプリブランドの顧問を以前務めていたと開示しています。
- ④Dinan らの試験:大学の研究費で行われ、利益相反はないと明記されています。
- ⑤Forbes らの片側比較の試験:本文が有料のため、資金源と利益相反は要旨からは確認できませんでした。
- ⑥高齢者の統合分析:外部資金なし。著者の複数人がクレアチン製造企業の科学顧問であることや、クレアチン販売企業の役員を以前務めていたこと、関連する特許の保有を開示しています。
企業との関係がないと明記された④の試験で、タイミングの差もプラセボとの差も出なかったことは、読み方の上で覚えておいてよい点だと思います。
この研究が言えないこと
- 日本人集団のデータではありません。米国・カナダ・ブラジルなどの研究で、日本人を対象にしたものは含まれていません。
- 「いつ飲んでも同じ」と証明されたわけではありません。タイミングを直接比べた試験は3つだけで、人数は10〜34人と少なく、期間も4〜8週間です。差があっても検出できていない可能性はあります。
- ④の試験は、クレアチンそのものの効果を否定するものではありません。全員がプロテインと炭水化物をとっていたこと、筋トレ経験者が対象だったこと、8週間と短いことなど、条件が限られています。
- ローディングの要・不要は目的次第です。公式見解は「最も効果的」としますが、比べているのは貯蔵量が満たされる速さです。長期的な筋肉・筋力の差は、この見解からは分かりません。
- 高齢者の分析を若い人に当てはめることはできません。また、筋力の上乗せがローディングを含む試験に依存していた点は、試験の数が少ないことによる偶然の可能性もあります。
- 「筋トレの日だけ」の結果は、ほかの飲み方と直接比べたものではありません。その飲み方をした試験だけをまとめてプラセボと比べた結果です。
- 著者と企業の関係があります。6本のうち4本で、著者にクレアチンやサプリ企業との関係が開示されています(⑤は要旨からは確認できません)。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 運動の前か後かは、今ある研究を見る限り神経質になる必要はなさそうです。直接比べた3つの試験のどれでも差は出ていません。毎日忘れずに続けやすい時間に飲むほうが現実的だと考えます。
- 公式見解によれば、貯蔵量はやめても4〜6週間は元に戻らないとされています。1日飲み忘れた程度で慌てる必要はなさそうです。
- ローディングをするかどうかは、貯蔵量を早く増やしたいかどうかで決めればよいと考えます。急がないなら、公式見解が併記している1日3g・28日間の方法もあります(貯蔵量の増え方はゆるやかです)。
- 飲み始めに体重が増えることがあり、④の試験でもそれを理由にやめた人がいました(プラセボ群にもいました)。体重の数字だけで判断しないほうがよいと考えます。
- 腎臓の病気がある方や薬を飲んでいる方は、摂取の前に医師に相談してください。反応には個人差があります。
まとめ
「クレアチンはいつ飲むべきか」を、6つの一次資料で確認しました。運動の前か後かを直接比べた3つの試験ではどれも差がなく、総説も「今のところ気にすべき問題ではない」と結論しています。企業との関係がない8週間の試験では、タイミングだけでなくプラセボとの差も出ませんでした。
ローディングは貯蔵量を早く増やすための方法で、公式見解はローディングなしで1日3gを28日間続ける方法も併記しています。高齢者の分析では、除脂肪量はローディングの有無にかかわらず増えた一方、筋力の上乗せはローディングを含む試験に依存していました。
飲み方の細部よりも、続けること、そして筋トレそのもののほうが大事だというのが、一次資料を読んだ範囲での結論です。クレアチンによる上乗せの大きさそのものについては、筋肉を直接測った研究の記事もあわせてご覧ください。
出典(一次資料)
- Kreider RB, Kalman DS, Antonio J, Ziegenfuss TN, Wildman R, Collins R, Candow DG, Kleiner SM ほか. “International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine.” J Int Soc Sports Nutr 2017;14:18.(全文無料)PMC5469049
- Ribeiro F, Longobardi I, Perim P, Duarte B, Ferreira P, Gualano B, Roschel H, Saunders B. “Timing of Creatine Supplementation around Exercise: A Real Concern?” Nutrients 2021;13(8):2844.(全文無料)PMC8401986
- Antonio J, Ciccone V. “The effects of pre versus post workout supplementation of creatine monohydrate on body composition and strength.” J Int Soc Sports Nutr 2013;10:36.(全文無料)PMC3750511
- Dinan NE, Hagele AM, Jagim AR, Miller MG, Kerksick CM. “Effects of creatine monohydrate timing on resistance training adaptations and body composition after 8 weeks in male and female collegiate athletes.” Front Sports Act Living 2022;4:1033842.(全文無料)PMC9708881
- Forbes SC, Krentz JR, Candow DG. “Timing of creatine supplementation does not influence gains in unilateral muscle hypertrophy or strength from resistance training in young adults.” J Sports Med Phys Fitness 2021;61(9):1219-1225. europepmc.org/article/MED/34610729
- Forbes SC, Candow DG, Ostojic SM, Roberts MD, Chilibeck PD. “Meta-Analysis Examining the Importance of Creatine Ingestion Strategies on Lean Tissue Mass and Strength in Older Adults.” Nutrients 2021;13(6):1912.(全文無料)PMC8229907