この記事の要点
- クレアチンを飲みながら筋トレをすると、61試験の統合分析で除脂肪量が平均1.39kg多く増えたことが報告されています。ただし除脂肪量には水分も含まれるため、「筋肉そのものが太くなったのか」は別に確かめる必要があります。
- そこで、MRI・CT・超音波で筋肉を直接測った10研究だけをまとめた2023年の統合分析を読みます。
- 結果は「ごく小さい上乗せ」でした。筋肉の厚みの差は、腕で約1.0〜1.6mm、脚で約1.1〜1.3mmです。
- どの部位でも推定の幅がゼロをまたいでおり、「差があるらしい」とは言えても「確実にある」とまでは言い切れません。
- 若い人のほうが上乗せが大きい傾向があり、10研究のうち差が出た4研究のうち3研究は若年者でした。
- 統合分析の著者のうち3人が、クレアチン関連企業との関係を開示しています。
田園生活では以前、61試験・1,457人の統合分析を紹介しました。クレアチンを飲みながら筋トレをすると、飲まない場合より除脂肪量が1.39kg、体重が0.89kg多く増えたという結果です。
ただ、ここには引っかかる点があります。除脂肪量とは「体重から脂肪を引いた残り」で、筋肉だけでなく水分や骨も含みます。クレアチンは筋肉の中に水分を引き込むことが知られており、飲み始めに体重が増えるのはそのためだと説明されます。では、水分ではなく筋肉そのものは、どれくらい太くなっているのか。今回はそこを確かめます。
読む一次資料
| 資料 | 内容 | 入手性 |
|---|---|---|
| Burke R, Piñero A, Coleman M ほか Nutrients 2023;15(9):2116. | 筋肉を画像で直接測った10研究の統合分析 | 全文無料 |
| (比較用)Ashtary-Larky D ほか J Int Soc Sports Nutr 2025;22(sup1):2586523. | 61試験・1,457人の統合分析(除脂肪量) | 全文無料 |
数値は論文本文から取りました。
設計──「直接測った研究」だけを集める
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象とした研究 | 健康な成人を、筋トレ+クレアチンと筋トレ+プラセボ(偽物)に無作為に分けた試験 |
| 期間の条件 | 6週間以上 |
| 測定の条件 | MRI・CT・超音波で、特定の部位の筋肉の厚みや断面積を直接測ったもの |
| 集まった数 | 10研究・44の測定結果 |
体組成計のように「全身の除脂肪量を推定する」方法ではなく、腕や脚の筋肉そのものを画像で測った研究に絞っているのがこの分析の特徴です。
結果① 全体では「ごく小さい上乗せ」
44の測定結果をまとめると、効果の大きさを示す指標は0.11(95%の確からしさの範囲で−0.02〜0.25)でした。著者らはこれを「クレアチンに有利な、ごく小さい効果」と表現しています。範囲の下限がわずかにマイナスに入っているので、差がない可能性も残ります。
結果② 部位ごとの筋肉の厚みの差
| 部位 | クレアチン群との差(推定) | 推定の幅 |
|---|---|---|
| 上腕の後ろ(肘を伸ばす筋肉) | +0.16cm | −0.10〜0.39cm |
| 上腕の前(肘を曲げる筋肉) | +0.10cm | −0.13〜0.32cm |
| 太ももの前(膝を伸ばす筋肉) | +0.13cm | −0.07〜0.37cm |
| 太ももの後ろ(膝を曲げる筋肉) | +0.11cm | −0.06〜0.31cm |
どの部位も、差は1〜2mm弱です。そして4部位すべてで推定の幅がマイナスからプラスまで広がっています。脚について論文は、クレアチンのほうが上回っている確率を85%と計算しています。「上回っている可能性が高い」とは言えても、「確実に上回る」とは言えない水準です。
結果③ 10研究の中身──若い人ほど差が出やすい?
| 研究 | 対象 | 期間 | 筋肉の太さへの上乗せ |
|---|---|---|---|
| Candow ら | 若く運動習慣のある未経験の男女38人 | 6週 | あり(肘を曲げる筋肉) |
| Pakulak ら | 筋トレ経験のある若い男女13人 | 6週 | あり(膝を伸ばす筋肉) |
| Sousa-Silva ら | 筋トレ未経験の若い男性17人 | 8週 | あり(肘を曲げる筋肉) |
| Mills ら | 運動習慣のある若い男女22人 | 6週 | 差なし |
| Candow ら | 筋トレ未経験の高齢男性25人 | 10週 | あり(肘を伸ばす筋肉) |
| Bernat ら | 筋トレ未経験の高齢男性24人 | 8週 | 差なし |
| Candow ら | 筋トレ未経験の高齢男性46人 | 12か月 | 差なし |
| Candow ら | 筋トレ未経験の高齢男女52人 | 12か月 | 差なし(前腕の断面積) |
| Chilibeck ら | 筋トレ未経験の閉経後女性33人 | 12か月 | 差なし |
| Roschel ら | 虚弱・虚弱予備群の高齢男女88人 | 16週 | 差なし(太ももの筋肉の断面積) |
差が出た4研究のうち3研究は若年者で、高齢者の6研究で差が出たのは1研究だけでした。論文の追加解析でも、若年者のほうが上乗せが大きい傾向(効果の大きさの指標で0.17、ただし推定の幅は−0.09〜0.45)が示されています。
一方で、どの研究も13〜88人と小規模です。高齢者の研究には12か月という長いものも含まれており、期間の違いも結果に影響している可能性があります。
資金と利益相反
論文には「外部資金なし」と明記されています。一方、著者のうち3人が次の関係を開示しています。
- 1人は、クレアチン製品も扱うスポーツサプリメーカーの科学顧問を以前務めていた。
- 1人は、企業から資金を得たクレアチン研究の実施、クレアチンの無償提供、学会発表の旅費支援を受けており、クレアチン製造企業の科学顧問を務め、クレアチンに関する訴訟で専門家証人・顧問も務めている。
- 1人は、クレアチン製品を販売する企業の科学顧問を以前務め、クレアチンの教育用動画を販売している。
また、上の表の10研究のうち4研究は、この統合分析の著者の1人が筆頭著者です。
この研究が言えないこと
- 日本人集団のデータではありません。集められた10研究の中に、日本人を対象にしたものは見当たりません。
- 「確実に太くなる」とは言えません。全体でも部位別でも、推定の幅がゼロをまたいでいます。差がない可能性は残ります。
- 研究の数も人数も少ないです。10研究で、1研究あたり13〜88人です。
- 高齢者の研究が多く、若年者についての結論は4研究に頼っています。若年者で差が出やすいという傾向も、推定の幅がゼロをまたいでいます。
- 画像で測った厚みにも水分は含まれえます。クレアチンは筋肉の細胞に水分を引き込むとされており、画像で測った筋肉の厚みから水分の分だけを完全に切り分けることはできません。
- 測ったのは特定の部位だけです。腕や脚の一部の厚みであって、全身の筋肉量ではありません。
- 期間・用量・筋トレの内容がばらばらです。6週間から12か月まで、飲み方も研究ごとに違います。
- 著者と研究の独立性が十分とは言えません。著者の3人が関連企業との関係を開示しており、集めた研究のうち4研究は著者自身が筆頭著者です。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 「クレアチンを飲めば筋肉が一気に太くなる」という期待とは、ずいぶん違う数字です。数か月で1〜2mm弱という上乗せは、鏡で分かる変化ではありません。
- 体重計や体組成計の数字が飲み始めに大きく動くのは、主に水分の影響と考えられます。筋肉が太くなった速さと、体重が増えた速さは別物として見たほうがよさそうです。
- それでも、筋トレで得られる筋肥大そのものに比べれば小さな差でも、「少しでも上乗せしたい」人にとってはゼロではない、という読み方もできます。どちらに重きを置くかは目的次第です。
- 若い人で差が出やすく高齢者で出にくい傾向は、飲み方や筋トレの強さの違いも含めて、まだ整理されていません。反応には個人差があります。
- 主役はあくまで筋トレです。セット数や頻度といった練習の中身のほうが、筋肉の太さに与える影響は大きいと考えます。
まとめ
「クレアチンで筋肉は本当に太くなるのか」を、筋肉を画像で直接測った10研究の統合分析で確認しました。結果は「ごく小さい上乗せ」で、筋肉の厚みの差は腕で約1.0〜1.6mm、脚で約1.1〜1.3mmでした。どの部位でも推定の幅がゼロをまたいでおり、確実とまでは言い切れません。
61試験の統合分析で見た「除脂肪量+1.39kg」は、水分を含んだ数字です。筋肉そのものの太さで見ると、上乗せはずっと控えめになります。クレアチンは「筋肉を太くするサプリ」というより、「筋トレの上にわずかに積み増すかもしれないサプリ」と捉えるのが、一次資料を読んだ範囲での実態に近いと考えます。
出典(一次資料)
- Burke R, Piñero A, Coleman M, Mohan A, Sapuppo M, Augustin F, Aragon AA, Candow DG ほか. “The Effects of Creatine Supplementation Combined with Resistance Training on Regional Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-Analysis.” Nutrients 2023;15(9):2116.(全文無料)europepmc.org/article/MED/37432300
- Ashtary-Larky D, Mohammadi S, Hajizadeh L, Mousavi SAH, Forbes SC, Candow DG, Antonio J. “Creatine supplementation and resistance training: a comparison between novice and experienced lifters.” J Int Soc Sports Nutr 2025;22(sup1):2586523.(全文無料)PMC12777911