研究ノート · プロテイン量と筋肥大

プロテインを増やせば筋肉はもっと増えるのか|31人の試験

公開日: 2026-09-14 · 約10分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

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この記事の要点

  • 筋トレのボリューム(量)を増やすなら、プロテインの摂取量もそれに比例して増やすべきだ、という考え方があります。米国オーバーン大学の研究チームが、この考え方を実際に試した試験を報告しています。
  • 大学生年代の訓練経験者男性31人を3群に分け、6週間かけて週10セット/種目から週32セット/種目までトレーニング量を増やしていきました(研究チームいわく「6週間という期間で調べられた中ではこれまでで最大のボリューム」)。同時に、プロテインを週ごとに25g/日から150g/日まで段階的に増やす群(GWP)と、25g/日で一定の群(WP)、そしてプロテインではなくマルトデキストリン(糖質)30g/日だけを摂る群(MALTO)を比較しました。
  • プロテインを段階的に増やした群は除脂肪量が+2.93kg増え、脂肪量が-1.00kg減りました。ところが糖質だけを摂った群でも除脂肪量が+2.35kg増えており、統計的に「プロテインを増やした群のほうが優れている」とは言えない結果でした。
  • 理由として研究チームが挙げているのは、全群がすでに1日あたり体重1kgあたり2.0g超のタンパク質を自己申告で摂取していたことです。これは「効果が頭打ちになるとされる目安(体重1kgあたり約1.6g/日)」をすでに超えていた水準でした。
  • 資金源はRenaissance Periodization社(マイケル・イズラテル氏が主任科学顧問を務める企業)からの寄付を含みます。イズラテル氏自身が研究デザインとデータ解釈に関与したことも開示されています。

筋トレを続けていると、「もっと追い込むならプロテインも増やさないといけないのでは」と考える人は多いと思います。トレーニング量(ボリューム)を増やせば筋肉の分解と合成のサイクルが活発になるはずなので、それに合わせてタンパク質の供給量も増やす、という発想は直感的には理にかなっています。では、実際にトレーニング量を極端に増やしながらプロテインの量も比例して増やすと、増やさない場合と比べて筋肉の増え方に違いが出るのでしょうか。これを正面から試した研究を一次資料で読みます。

読む一次資料

項目内容
本体Haun CT, Vann CG, Mobley CB, Roberson PA, Osburn SC, Holmes HM, Mumford PM, Romero MA, Young KC, Moon JR, Gladden LB, Arnold RD, Israetel MA, Kirby AN, Roberts MD.
“Effects of Graded Whey Supplementation During Extreme-Volume Resistance Training.”
Frontiers in Nutrition 2018;5:84
実施機関オーバーン大学(Auburn University)運動学部(米国アラバマ州)。責任著者Michael D. Robertsの研究室(Roberts Lab)が実施
研究の種類無作為化比較試験(3群並行)
入手性オープンアクセス(CC BY)=全文無料。数値はすべて本文と抄録から確認しました
一次資料PMC6141782(PubMed Central・全文)

先に著者の並びについて触れておきます。この研究も「マイケル・イズラテル(Michael Israetel)の研究」ではありません。著者15人のうち13番目の共著者で、研究の設計と実施を主導したのは筆頭著者のChristopher T. Haunと、最終著者で責任著者のMichael D. Robertsです。イズラテル氏の肩書きはRenaissance Periodization社(Charlotte, NC)で、論文中の利益相反の開示によれば「研究デザインとデータ解釈に重要な関与をした」とされています。ここでは「イズラテル氏が関与した研究室外部の研究」として読みます。

設計──プロテインを段階的に増やす群、一定量の群、糖質だけの群

WP群GWP群MALTO群
人数(完了時)10人11人10人
サプリメントホエイプロテイン25g/日で一定ホエイプロテイン週ごとに25g刻みで増量(週1=25g→週2=50g→週3=75g→週4=100g→週5=125g→週6=150g/日)マルトデキストリン(糖質)30g/日で一定(プロテインは追加しない)
参加条件トレーニング歴1年以上、かつバックスクワット推定1RMが体重の1.5倍以上(3RMテストで判定)の訓練経験者男性
トレーニング頻度週3回、上半身2種目+下半身2種目、各セット10回
ボリュームの増やし方週10セット/種目(週1)から週32セット/種目(週6)まで漸増。研究チームいわく「6週間という期間で調べられた中で最大のボリューム」
期間6週間(研究チームは「これ以上続けるとケガのリスクがあると事前に判断した」としている)
測定DXA(除脂肪量・脂肪量)/外側広筋(VL)と上腕二頭筋の超音波筋厚/生体電気インピーダンス法(体水分:ICW・ECW)/VL筋生検(筋線維横断面積)/自己申告の食事記録

スクリーニングの結果、34人が3群に割り付けられました。1人が1週目に個人的な理由で離脱、2人が最初の4週間で3回を超えて欠席したため除外され、最終的に31人が試験を完了しました。参加者は禁欲薬やプレワークアウトサプリ・アミノ酸サプリの新規使用を控えるよう指示されましたが、試験開始前から常用しているクレアチン一水和物やコーヒー由来のカフェインは制限されませんでした。

結果① 除脂肪量と脂肪量──段階増量群は増えたが、糖質だけの群も増えた

指標GWP群(PRE→POST)MALTO群(PRE→POST)群間の統計
除脂肪量(DXA・LBM)+2.93kg(p<0.05)+2.35kg(p<0.05)群×時間の交互作用 p=0.007。ただし事後検定ではどの時点でも群間の有意差なし
脂肪量(DXA・FM)-1.00kg(p<0.05)有意な変化として報告されていない群×時間の交互作用 p=0.012。GWP対MALTOの差は中間測定時点でp=0.088、最終測定時点でp=0.064(有意水準には届かず
タイプII筋線維横断面積約+300μm²増加約+300μm²増加(GWPとほぼ同じ増加幅群・交互作用ともに有意差なし

数字だけを見ると、プロテインを段階的に増やしたGWP群の除脂肪量の増え方(+2.93kg)は目を引きます。しかしプロテインを一切追加せず糖質だけを摂ったMALTO群も、統計的に有意な+2.35kgの除脂肪量増加を記録しました。さらに、筋肉そのものの太さに直結するタイプII筋線維の横断面積は、GWP群とMALTO群でほぼ同じだけ増えていました。論文は結論として「MALTO群で観察された同程度の肥大効果があるため、GWP群がMALTO群よりも骨格筋の肥大を促すうえで明確に優れているとは示唆できない」と述べています。

結果② なぜ差がつかなかったのか──全員がすでに「摂りすぎ」だった可能性

項目内容
自己申告のタンパク質摂取量全群で1日あたり体重1kgあたり2.0g超(食事記録を提出した19人の解析)
先行研究が示す「頭打ちの目安」論文が引用するMortonらのメタ分析(49研究・1,863人)では、体重1kgあたり約1.6g/日を超えると、プロテインを追加しても筋肥大の上乗せ効果が乏しくなるとされている
群・時間・交互作用の有意差自己申告のエネルギー・タンパク質・炭水化物摂取量にはいずれも有意差なし(脂質摂取量のみ時間経過で有意に減少、群間でもWP群が高め)
GWP群の実際の遵守週1と週6は、研究チームが推奨した量よりも少ないタンパク質しか摂れていなかった(p<0.05)

論文はこの結果を次のように解釈しています。「MALTO群でもタンパク質摂取量が体重1kgあたり2.0g/日を超えていたため、高用量のホエイプロテイン補給が、十分なタンパク質摂取(1.6g/kg/日超)に加えて明確に優れているとは言えない」。つまり、糖質だけを摂っていたはずのMALTO群も、普段の食事から十分すぎる量のタンパク質をすでに摂っていたため、プロテインを追加で「上乗せ」する余地がそもそも小さかった可能性がある、という整理です。

脂肪量がGWP群で最も減ったこと(-1.00kg)についても、論文は複数の解釈がありうるとしています。ホエイプロテインには食欲を抑えるホルモンを介した満腹感の向上が知られていますが、GWP群は自己申告のカロリー摂取量が(有意差はないものの)他の2群より数値上低かったため、単純に摂取カロリーが少なかったことが脂肪減少の理由である可能性も否定できません。

結果③ 超高ボリュームトレーニングと「見かけの筋肉増加」──むくみの疑い

指標週1→週3(前半)週3→週6(後半・週20セット/種目超)
DXA除脂肪量の変化(補正なし)+1.34kg(p<0.001)+0.85kg(p<0.001)
細胞外水分(ECW)で補正した除脂肪量の変化+1.18kg(p<0.001)+0.25kg(p=0.131・有意差なし)

全参加者を対象に、トレーニング量と除脂肪量の変化の関係を調べたところ、興味深い現象が見つかりました。DXAで測った除脂肪量そのものは週を追うごとに増え続けましたが、むくみ(浮腫)による水分貯留の影響を取り除くため細胞外水分(ECW)の変化分を差し引くと、週20セット/種目を超えたあたりから増加が有意でなくなりました。研究チームはこれを「筋損傷や炎症に伴う局所的な浮腫が、この時期のDXA除脂肪量の増加の一部を占めていた可能性がある」と解釈しています。つまり、数字の上では筋肉が増え続けているように見えても、その一部は実際の筋肉量の増加ではなく、体液貯留による見かけ上の増加だったかもしれない、ということです。

論文はこの解釈について「ECW変化による補正が実際の機能的な筋肉量の変化をより正確に反映する妥当な方法かどうかは、今後の研究で確かめる必要がある」と慎重に留保しています。

資金の出どころ

この論文には、次の記載があります。

この研究が言えないこと

  1. 解析対象は31人(3群に分けて各10〜11人)です。研究チーム自身が「小さく有意な効果を検出する検出力に欠ける」と限界に挙げています。
  2. 対象は米国の大学生年代で、訓練歴1年以上・バックスクワット1RMが体重の1.5倍以上という条件を満たした、すでに鍛えられた男性のみです。日本人集団のデータではありませんし、未経験者や女性、中高年にそのまま当てはまるかは分かりません。
  3. 試験期間はわずか6週間です。研究チームは「これ以上ボリュームを増やすとケガのリスクがあると事前に判断した」ためこの期間を選んだと述べており、より長期でどうなるかは検証されていません。
  4. 自己申告の食事記録は、31人中19人分しか解析対象になっていません。約6割の遵守率にとどまり、GWP群は研究チームが推奨した量よりも少ないタンパク質しか摂れていなかった週がありました。
  5. 全群がすでに体重1kgあたり2.0g超のタンパク質を摂取していたため、「タンパク質摂取量が少ない人にプロテインを追加するとどうなるか」を検証した試験ではありません。普段のタンパク質摂取量が少ない人に同じ結果が当てはまるとは言えません。
  6. ECW(細胞外水分)を使った補正法は、機能的な筋肉量の変化を正確に反映する方法として確立されたものではありません。論文自身が「今後の検証が必要」と明記しています。
  7. 週32セット/種目という超高ボリュームは一般的な筋トレとはかけ離れた特殊な設定です。通常の頻度・量でトレーニングする場合に、同じプロテイン量の効果(またはその欠如)が当てはまるとは限りません。
  8. 資金源はRenaissance Periodization社からの寄付とImpedimed社との契約で、著者の一人(イズラテル氏)は前者の主任科学顧問として研究デザインに関与したと開示されています。ただし結果自体は「プロテインを増やした群が明確に優れている」という仮説を支持しない方向に出ており、資金提供者に有利な結論を導いた試験ではありません。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

この研究を読んで実務的に整理できると感じたのは、「すでに十分な量のタンパク質を摂れているなら、トレーニング量を増やしたからといって、それに比例してプロテインを追加する必要はなさそうだ」という点です。ここでいう「十分な量」とは、この研究の参加者たちがすでに達していた体重1kgあたり2.0g/日超という水準で、一般的な目安(体重1kgあたり1.6〜2.0g/日程度)を満たしている状態を指します。すでにこの水準に達している人が、トレーニング量を増やすたびにプロテインパウダーを追加していく必要性は、この研究を見る限り薄いようです。

一方で、普段の食事だけでは体重1kgあたり1.6g/日にすら届いていない人にとっては、話が別だという点も重要です。この研究は「すでに十分な量を摂っている人にさらに追加してもあまり変わらない」ことを示した研究であって、「タンパク質は多く摂っても意味がない」ことを示した研究ではありません。論文自身も、先行研究では高用量のホエイプロテイン(1日80〜120g)補給が有意にLBMを増やしたという報告を複数紹介したうえで、今回の結果と整理しています。

もう一つ実務的な示唆は、短期間で極端にトレーニング量を増やすと、DXAで測った「筋肉が増えた」という数字の一部が、実際にはむくみ(体液貯留)による見かけの増加かもしれないという点です。ボリュームを急激に増やした直後に体重計や体組成計の数値が良く見えても、それを鵜呑みにせず、数週間かけて数値が落ち着くかどうかを見る、という慎重な読み方が実践的には役立ちそうです。

まとめ

出典(一次資料)

  1. Haun CT, et al. Effects of Graded Whey Supplementation During Extreme-Volume Resistance Training. Front Nutr. 2018;5:84.(PMC全文・オープンアクセス)
  2. Europe PMC(EXT_ID: 30255024)
  3. DOI: 10.3389/fnut.2018.00084

よくある質問

プロテインを増やせば増やすほど筋肉は増えるのですか?

この研究では、プロテインを段階的に増やした群は除脂肪量が+2.93kg増えましたが、プロテインを追加せず糖質だけを摂った群でも+2.35kg増加しており、統計的に明確な優位性は確認できませんでした。理由として、全群がすでに体重1kgあたり2.0g超という「効果が頭打ちになる目安」を超えるタンパク質を摂取していたことが挙げられています。

プロテインを摂らず糖質だけでも筋肉は増えるのですか?

この研究のマルトデキストリン(糖質)群は、プロテインを追加していないにもかかわらず除脂肪量が有意に増加し、筋線維の横断面積の増加量もプロテイン増量群とほぼ同じでした。ただしこれは、参加者が普段の食事からすでに十分なタンパク質を摂っていたためと考えられ、「タンパク質は不要」という意味ではありません。

なぜプロテインを増やしても差がつかなかったのですか?

自己申告の食事記録によると、全群がすでに体重1kgあたり2.0g超のタンパク質を摂取していました。論文が引用する先行のメタ分析では、体重1kgあたり約1.6g/日を超えるとプロテイン追加の上乗せ効果が乏しくなるとされており、参加者がすでにこの水準を超えていたことが理由として考えられます。

超高ボリュームのトレーニングで筋肉が増えたように見えたのは本当に筋肉ですか?

研究チームは、体液(細胞外水分)の変化を差し引いて補正すると、週20セット/種目を超えたあたりから除脂肪量の増加が統計的に有意でなくなったと報告しています。トレーニング量を急激に増やした際の「筋肉が増えた」という数字の一部は、筋損傷に伴うむくみ(体液貯留)による見かけの増加である可能性があります。

この研究の対象者はどんな人たちですか?

訓練歴1年以上、かつバックスクワットの推定1RMが体重の1.5倍以上という条件を満たした、米国の大学生年代の訓練経験者男性31人です。日本人集団のデータではなく、未経験者・女性・中高年に同じ結果が当てはまるかは分かりません。

この研究の資金源や利益相反は何ですか?

資金はRenaissance Periodization社からの寄付とImpedimed社との契約でまかなわれました。共著者のマイケル・イズラテル氏はRenaissance PeriodizationのHead Science Consultantとして研究デザインとデータ解釈に関与したと開示されています。ただし結果自体は、資金提供者に有利な「プロテインを増やした群が明確に優れている」という結論を支持していません。

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