研究ノート · 負荷か回数か

筋トレの重さを増やさず回数だけ増やしても筋肉は増えるか|43人

公開日: 2026-09-13 · 約9分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

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この記事の要点

  • 筋トレを続けて成果を出すには「少しずつ負荷を高めていく」こと(漸進性過負荷=プログレッシブオーバーロードとも呼ばれます)が必要だとされています。ただし負荷を高める方法は、重量を増やすことだけではありません。重量はそのままで反復回数を増やすという方法もあります。
  • 米国ニューヨーク市立大学リーマン校の研究チームが、重量を増やす群(LOAD)と、重量を固定して反復回数を増やす群(REPS)を8週間にわたって比較した無作為化比較試験です。対象は下半身のトレーニング経験が1年以上ある43人でした。
  • 大腿の筋肉の厚さはほとんどの部位で両群同等でした。大腿四頭筋の一部(大腿直筋)だけ反復回数を増やした群のほうがやや大きく増えていましたが、他の筋肉では差がありませんでした。
  • 最大筋力(1RM)はわずかに重量を増やした群が有利でしたが、差は小さく、統計的な幅(信頼区間)はゼロをまたいでいました。
  • この研究はデロード(計画的な休養)の記事で読んだ同じ研究室によるもので、資金は大学の公的助成のみです。

筋トレを続けていると、多くの人が一度は「同じ重さ・同じ回数のままで続けていて意味があるのか」という疑問にぶつかります。少しずつ負荷を高めていかないと体は適応しなくなる、という考え方は漸進性過負荷(プログレッシブオーバーロード)と呼ばれ、筋力トレーニングの基本原則としてよく語られます。

ただしここで多くの人が無意識に「負荷を高める=重量を増やす」と考えてしまいがちです。実際には、重量を変えずに反復回数を増やすことも、負荷を高める方法の一つのはずです。では、重量を増やす方法と、反復回数を増やす方法とで、筋肉の育ち方や筋力の伸び方に違いはあるのでしょうか。これを正面から比較した研究を一次資料で読みます。

読む一次資料

項目内容
本体Plotkin D, Coleman M, Van Every D, Maldonado J, Oberlin D, Israetel M, Feather J, Alto A, Vigotsky AD, Schoenfeld BJ.
“Progressive overload without progressing load? The effects of load or repetition progression on muscular adaptations.”
PeerJ 2022;10:e14142
実施機関ニューヨーク市立大学リーマン校(City University of New York, Herbert H. Lehman College)米国ニューヨーク州ブロンクス。以前読んだデロードの研究と同じ研究室です
研究の種類無作為化比較試験(並行群間・事前登録あり)
入手性オープンアクセス(CC BY)=全文無料。数値はすべて本文の表から確認しました
事前登録あり(Open Science Frameworkに登録。生データも公開)
一次資料PMC9528903(PubMed Central・全文)

先に著者の並びについて一点だけ触れておきます。この研究も「マイケル・イズラテル(Michael Israetel)の研究」ではありません。著者10人のうち6番目の共著者で、彼が所属する企業Renaissance Periodizationの同僚Jared Featherも共著に入っています。研究の設計と実施を主導したのは筆頭著者のDaniel Plotkinと、最終著者で責任著者のBrad J Schoenfeldです。ここでは「イズラテル氏が所属する研究室が出した論文」として読みます。

設計──重量を増やす群と、回数を増やす群

LOAD群REPS群
人数(解析時)21人(完遂時の男女内訳は論文に個別記載なし)17人(同左)
登録時人数22人(男性13・女性9)21人(男性14・女性7)
参加者全体の背景身長169.5±10.5cm・体重77.2±16.7kg・体脂肪率23.6±9.5%・年齢23.1±5.3歳・トレーニング歴3.8±4.0年(27人が男性・16人が女性)
目標の設定反復回数の範囲(8〜12回)を保ったまま、重量を漸増重量を初期値のまま固定し、反復回数を漸増
種目フリーウェイトのバックスクワット/レッグエクステンション/立位のカーフレイズ/座位のカーフレイズ 各4セット
頻度・期間週2回・非連続日・8週間
追い込み方全セットをもう1回挙げられなくなるところまで行うよう口頭で指示。セット間の休憩2分
上半身両群とも従来型の同じ上半身プログラムを別の日に各自で実施。研究チームの監督なし
測定超音波による筋厚(大腿4部位×3か所・下腿3部位)/スミスマシンでのスクワット1RM/レッグエクステンションでの筋持久力(体重60%の負荷で限界まで反復)/垂直跳び/体脂肪率・下肢除脂肪量(体成分計)

参加条件は18〜35歳、心肺・筋骨格系の疾患がない、過去1年間アナボリックステロイドなどの筋肉増強薬を使っていない、週3回以上・下半身は週1回以上のトレーニングを1年以上続けていることでした。試験期間中は筋肉増強をうたうサプリメントの使用も控えるよう指示されています。超音波測定を担当した技師は群の割付を知らされておらず、統計解析も担当者が結果を見る前に手法を確定させる盲検化がなされていました。

登録した43人のうち38人が最終測定まで完了しました(LOAD 21人・REPS 17人)。脱落は5人で、内訳は個人的な理由2人・トレーニングへの不遵守2人・トレーニングに関連するけが1人でした。完遂した参加者は全セッションの85%以上に出席しており、出席率はLOAD群94.9%・REPS群95.2%とほぼ同水準でした。

この論文がとくに強調しているのは、統計の扱い方です。研究チームは従来型の有意差検定(p値で「効果があるかないか」を二分する方法)を使わず、効果の大きさとその不確かさの幅を推定するアプローチを採用しています。表に出てくる区間は90%信頼区間で、5,000回の反復計算によるブートストラップ法という統計手法で求められています。以前読んだデロードの研究のような「事後確率」を示すベイズ統計とは別の考え方ですが、狙いは共通しています。「差がある・ない」を白黒つけるのではなく、差の大きさがどのくらいの範囲にありそうかを見るという読み方です。

結果① 筋肉の厚さ──大腿直筋だけがわずかに違った

単位はmm、値は平均±標準偏差、変化量はLOAD/REPSの順です。

測定部位LOAD 前→後(変化量)REPS 前→後(変化量)群間差 [90%信頼区間]
大腿直筋・合計3か所118.1±22.7 → 128.2±21.0(+10.1)125.0±23.6 → 137.3±24.6(+12.3)+2.8 [-0.5〜5.8]
外側広筋・合計3か所111.0±21.2 → 121.9±21.2(+10.9)123.4±30.1 → 133.7±30.0(+10.2)-0.3 [-3.6〜3.6]
内側腓腹筋18.1±2.6 → 19.2±2.5(+1.1)18.5±3.0 → 20.1±3.9(+1.5)+0.5 [-0.4〜2.2]
外側腓腹筋15.5±3.3 → 16.9±3.2(+1.4)17.3±2.8 → 18.3±2.8(+1.0)-0.2 [-0.8〜0.3]
ヒラメ筋15.5±2.8 → 16.5±3.3(+1.1)17.1±4.2 → 18.2±4.3(+1.1)0 [-0.6〜0.7]
下肢除脂肪量(kg)16.5±3.3 → 16.8±3.3(+0.3)17.0±4.0 → 17.3±3.9(+0.3)+0.1 [-0.1〜0.3]

プラスの値はREPS群に有利という意味です。両群とも、測定部位全体で見ると6.7〜12.9%の筋肉の厚さの増加が見られました。大腿直筋以外はどの部位を見ても変化量がほぼ重なっており、群間差の信頼区間はいずれもゼロを大きくまたいでいます。

唯一目立つ差がついたのが大腿直筋(大腿四頭筋のうち股関節もまたぐ筋肉)で、REPS群のほうが+2.8mmほど大きく増えていました。ただし信頼区間は-0.5〜5.8mmで、ゼロを含んでいます。論文はこの理由について、「反復回数を増やす高回数のスクワットでは疲労した他の広筋群を補うために大腿直筋への動員が増えた可能性がある」というあくまで推測を述べています。他の筋肉では同じ傾向が見られなかったため、論文自身も「これは探索的な所見であり、再現性の確認が必要」と慎重な立場を取っています。

結果② 筋力──重量を増やした群がわずかに有利

指標LOAD 前→後(変化量)REPS 前→後(変化量)群間差 [90%信頼区間]
スクワット1RM(kg)76.9±29.9 → 98.7±30.8(+21.8)86.8±27.1 → 106.2±29.6(+19.3)-2.0 [-7.8〜2.4]
垂直跳び(cm)41.0±10.0 → 40.9±9.1(-0.1)42.9±10.4 → 42.7±10.2(-0.1)+0.1 [-1.5〜1.7]
筋持久力(反復回数)15.0±4.4 → 21.6±4.4(+6.6)17.4±4.7 → 24.1±7.3(+6.8)REPSが1.02倍多い [0.93〜1.14倍]

マイナスの値はLOAD群に有利という意味です。スクワット1RMは両群とも約20kg伸びており(LOAD +21.8kg、REPS +19.3kg)、群間差の点推定値は2.0kg・LOAD群に有利でした。ただし信頼区間は-2.4kg(REPS有利)から+7.8kg(LOAD有利)までの幅があり、論文は「実用上の意味を疑問視すべき差」と述べています。

筋持久力(体重60%の負荷でのレッグエクステンション反復回数)は、両群とも約7回増加しており、群間の差はごくわずかでした。垂直跳びの高さにも変化はなく、両群とも横ばいでした。

論文はこの筋力の結果について、興味深い可能性を挙げています。1RMの測定はスミスマシンで行われましたが、実際のトレーニングはフリーウェイトのバックスクワットでした。動作の特異性を踏まえると、どちらの群もスミスマシンでの1RM測定に必要な神経的な技能を十分に磨けていなかった可能性があり、それが両群とも重量の伸びを抑えた一因かもしれない、という考察です。これも推測にとどまります。

結果③ 体脂肪と食事──両群でほぼ変化なし

指標LOAD 前→後REPS 前→後
体脂肪率25.0±8.2% → 24.5±7.9%24.1±10.5% → 23.3±10.9%
1日あたり摂取カロリー1,840±509kcal → 1,805±470kcal1,736±409kcal → 1,835±522kcal
1日あたりタンパク質99±34g → 92±35g83±25g → 91±34g

体脂肪率はどちらの群もわずかに減少しており、群間差は実用上意味のない水準でした。食事は5日間の食事記録(試験開始前と終了直前の週)をもとに評価され、カロリー・脂質・炭水化物・タンパク質のいずれも群間で大きな変化は見られませんでした。論文は「体脂肪率が両群とも同じように安定していたことから、総エネルギー摂取量はおおむね釣り合っていたと考えられる」としています。

資金の出どころ

この論文には、次の記載があります。

以前読んだデロードの研究とは違い、この研究にはRenaissance Periodization社からの資金提供はありません。大学の公的助成のみで実施されている点は先に述べておきます。

この研究が言えないこと

  1. 対象は米国の大学に集まった18〜35歳の男女43人(登録時)です。日本人集団のデータではありません。論文自身も「青年期・高齢者・未経験者には一般化できない」と限界に挙げています。
  2. 8週間という短期の話です。数か月から数年単位のトレーニングでも同じ結論になるかは分かりません。論文も「多くの人はメソサイクル単位(数週間〜数か月)でプログラムを組むため実践的だが、より長期の影響は不明」としています。
  3. 測定したのは大腿と下腿のみで、上半身の筋肉は測っていません。両群とも上半身は各自の判断で従来型プログラムを実施しており、種目もスクワット中心の下半身種目に限られます。
  4. 大腿直筋だけREPS群に有利だったという所見は、他の筋肉では再現されておらず、探索的な発見にとどまります。論文自身が「再現が必要な予備的な所見」と位置づけています。
  5. 1RM測定はスミスマシン、トレーニングはフリーウェイトのスクワットという不一致があります。動作の特異性のずれが筋力の結果に影響した可能性を論文自身が指摘しています。
  6. 食事の記録は自己申告の5日間分です。申告と実際の摂取量には食い違いが生じうることが知られており、完全には排除できません。
  7. 参加条件は「1年以上のトレーニング経験」でしたが、経験の幅は一様ではありません。スクワットの経験自体は参加の必須条件ではなく、論文は「一般的なジム利用者の集団であり、上級者やボディビルダーに一般化できるわけではない」と述べています。
  8. 脱落した5人(個人的理由2人・不遵守2人・けが1人)がどちらの群に属していたかは論文に記載がありません。脱落による偏りの有無は確認できません。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

この研究を読んで実務的に整理できると感じたのは、「重量が増やせない期間があっても、それだけで筋肉の成長が止まるわけではなさそうだ」という点です。仕事の都合でジムに置いてある重量の刻みが粗い、あるいは自宅トレーニングで使えるダンベルの重量に上限があるといった場面は、実践者であれば誰しも経験があると思います。この研究は、そうした場面で「同じ重量のまま、限界まで反復回数を増やしていく」という選択肢が、少なくとも8週間という期間では筋肥大の面で無理のない代替になりうることを示しています。

ただし筋力については話が別です。最大挙上重量そのものを伸ばしたいなら、実際に高重量を扱う練習を積むほうが理にかなっているというのが、この研究とこれまでの文献が示す一般的な傾向です。今回の差はわずかで信頼区間もゼロをまたいでいますが、点推定値としては重量を増やした群のほうに分があります。「特異的適応の原則」、つまり体はやったことに応じて適応するという考え方に沿った結果と言えます。

もう一つ実務的な示唆は、反復回数を上限まで追い込むREPS群のほうが、真の限界(それ以上は1回も挙げられない状態)まで到達するのが難しかったと論文が報告している点です。高回数セットでは代謝による不快感(乳酸の蓄積などによる焼けるような感覚)が強く、心理的にそこで止めてしまいやすいためだと考えられています。回数を増やす方法を使う場合は、この「本当の限界まで追い込みにくい」という性質を踏まえておく必要がありそうです。

なお、この研究とは逆に、負荷を漸増する群のほうが大幅に有利だったとする先行研究(Nóbrega らによる遡及的解析)も論文中で紹介されています。ただしその研究は無作為化されていない後ろ向きの比較で、今回のような計画的な無作為化比較試験とは設計の質が異なります。研究デザインの違いが結論の違いを生んでいる可能性があるという点も、一次資料に当たって初めて分かることでした。

まとめ

出典(一次資料)

  1. Plotkin D, et al. Progressive overload without progressing load? The effects of load or repetition progression on muscular adaptations. PeerJ. 2022;10:e14142.(PMC全文・オープンアクセス)
  2. Europe PMC(EXT_ID: 36199287)
  3. DOI: 10.7717/peerj.14142

よくある質問

重量を増やさず、反復回数だけ増やしても筋肉は育ちますか?

この研究では、多くの部位でほぼ同等に筋肉の厚さが増加しました。大腿直筋という筋肉だけ回数を増やした群のほうがやや大きく増えていましたが、他の部位(外側広筋・腓腹筋・ヒラメ筋)では差がありませんでした。ただし8週間・下半身のみの結果で、大腿直筋の差は探索的な所見にとどまります。

筋力を伸ばしたいなら、重量を増やしたほうがいいですか?

この研究では重量を増やした群のほうがわずかに1RM(最大挙上重量)が伸びていましたが、差は2.0kgと小さく、信頼区間はゼロをまたいでいました。統計的にはっきりした差とは言えませんが、点推定値としては重量を増やす方法に分があります。

なぜ大腿直筋だけ回数を増やした群で伸びが良かったのですか?

論文は「高回数のスクワットで疲労した他の筋肉を補うために大腿直筋への動員が増えた可能性がある」という推測を述べていますが、確かめられた仕組みではありません。他の筋肉では同じ傾向が見られなかったため、論文自身も再現性の確認が必要な予備的所見だとしています。

この研究の対象者はどんな人たちですか?

18〜35歳で、下半身のトレーニングを週1回以上・1年以上続けている米国の43人(登録時、27人が男性・16人が女性)です。上級者やボディビルダーではなく、一般的なジム利用者に近い集団だと論文は述べています。日本人集団のデータではありません。

この研究の資金源や利益相反は何ですか?

資金はニューヨーク州のPSC CUNY助成(大学の公的研究助成)のみで、企業からの資金提供はありません。最終著者はフィットネスメーカーTonal社の科学諮問委員、共著者2人はRenaissance Periodization社の社員であることが利益相反として開示されています。

表にある「90%信頼区間」とはどういう意味ですか?

効果の大きさがどのくらいの範囲にありそうかを示す統計的な幅です。この論文は「差があるかないか」を白黒つける従来のp値ではなく、効果の大きさとその不確かさの幅を推定するアプローチを採用しています。区間がゼロをまたいでいる場合、群間差がないという可能性も、ある程度の差があるという可能性も両方含まれていることを意味します。

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