研究ノート · デロードと休養

「1週間のデロード」で伸びは上乗せされるのか──9週間の無作為化比較試験を一次資料で読む

公開日: 2026-08-27 · 約9分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

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この記事の要点

  • 9週間のプログラムのちょうど真ん中で1週間だけ完全に休む群と、休まず続ける群を比べた米国の無作為化比較試験です。対象は1年以上の経験がある若年男女39人でした。
  • 筋の厚さは、どこを測っても差がありませんでした。ジャンプ力も筋持久力も同様でした。
  • 一方で筋力は休まず続けた群のほうが伸びていました。1RMは+13.0kg対+16.4kg、等尺性の膝伸展トルクは+3.0N·m対+20.2N·mでした。
  • 研究チームの当初の仮説は「休んだほうが伸びる」でした。結果はその仮説を支持しませんでした。
  • ⚠️この研究の資金はRenaissance Periodization社から出ており、論文自身が「同社が研究デザインと原稿作成に関与した」と明記しています。著者の一人が同社の共同創業者です。ここは先に開示します。

「そろそろデロードを入れたほうがいいのだろうか」。トレーニングを何年か続けていると、この問いは必ず一度は頭をよぎるものだと思います。1週間だけ休む。あるいは重量と量を落とす。そうすれば疲労が抜けて、次のサイクルでもっと伸びるのではないか──。

この記事から、田園生活の研究ノートは海外の研究も扱っていきます。ただし読み方は変えません。一次資料に当たり、数字を並べ、その研究が言えないことを最後に必ず書く。日本人集団のデータではない場合は、そのことを明示します。

最初の一本にこの論文を選んだのには理由があります。この研究は、前回の記事で読んだ日本の研究の「続き」として書かれているからです。

読む一次資料

項目内容
本体Coleman M, Burke R, Augustin F, Piñero A, Maldonado J, Fisher JP, Israetel M, Androulakis Korakakis P, Swinton P, Oberlin D, Schoenfeld BJ.
“Gaining more from doing less? The effects of a one-week deload period during supervised resistance training on muscular adaptations.”
PeerJ 2024;12:e16777
実施機関ニューヨーク市立大学リーマン校 Applied Muscle Development Laboratory(米国ニューヨーク州ブロンクス)
共著者にソレント大学(英国)、ロバート・ゴードン大学(英国)
研究の種類無作為化比較試験(PeerJの分類)
入手性オープンアクセス(CC BY)=全文無料。数値はすべて本文の表から確認しました
事前登録あり(募集前にOSFへ登録。データと補足資料も公開)

著者の並びについて先に一点だけ。この研究は「マイケル・イズラテル(Michael Israetel)の研究」ではありません。著者11人のうち7番目の共著者です。筆頭はMax Coleman、最終著者は同研究室のBrad J Schoenfeldです。日本語圏では動画の発信者として知られている人ですが、ここで読むのは「その人が所属する研究室が出した論文」だと整理しておきます。

なぜこの研究が行われたか──日本の研究の「続き」として

この論文の序論には、次のような趣旨のことが書かれています。「ディトレーニングに関する既存の研究は、実際にリフターがやっていることを反映していない」

そして名指しで引かれているのが、前回の記事で読んだ小笠原理紀先生らの2011年・2013年の研究です。論文の指摘は3点あります。

論文が指摘した点内容
休止期間が長すぎる先行研究は3週間。現場で使われるのは5〜7日が一般的だと別の調査(Bell et al. 2022)を引いている
対象が未経験者先行研究は未経験者。デロードを実際に使うのは経験者である
トレーニング量が少ない先行研究は週9セット・ベンチプレスのみ。実際の高ボリュームなプログラムとは違う

つまりこれは日本の研究への反論ではなく、「同じ問いを、現場の条件に寄せて測り直す」という位置づけです。研究が国境をまたいで積み上がっていく様子が、そのまま読み取れる論文になっています。

設計──真ん中で1週間、完全に止める

DELOAD群TRAD群
人数(解析時)18人(男性12・女性6)21人(男性17・女性4)
年齢22.2 ± 6.1歳21.4 ± 3.9歳
トレーニング歴3.7 ± 4.5年3.2 ± 2.6年
スケジュール4週間 → 5週目は完全休止 → 残り4週間9週間連続
下半身メニュースミスマシンスクワット/レッグエクステンション/トープレス/シーテッドカーフレイズ
各5セット×8〜12RM・セット間2分・原則として反復不能まで
頻度週4回(下半身2回は研究スタッフが直接監督/上半身2回は各自)
週の総セット数全身合計90セット=かなりの高ボリューム
測定超音波による筋厚(大腿4か所+下腿3か所)/スクワット1RM/等尺性膝伸展トルク/垂直跳び/レッグエクステンションの反復回数

参加条件は18〜40歳、週3回以上・下半身は週1回以上を1年以上継続していること、そしてアナボリックステロイド等の使用がないこと。期間中はクレアチンの使用も禁止されていました。超音波の技師と統計解析の担当者は群の割付を知らされていません(盲検化)。

ここで重要なのは、DELOAD群の「休み」が量や強度を落とすのではなく、完全な中止だったことです。5週目は筋力トレーニングを一切しない。有酸素運動や競技練習は許可されていました。現場でよく行われる「重量と量を落として続ける」タイプのデロードとは違います。この点は論文自身が限界として挙げています。

結果① 筋の厚さ──差がなかった

単位はmm、値は平均±標準偏差です。

測定部位DELOAD 前→後TRAD 前→後変化量
大腿前面 30%50.8 ± 8.3 → 54.3 ± 8.853.6 ± 8.2 → 57.1 ± 8.0+3.5 / +3.5
大腿前面 50%41.4 ± 8.1 → 45.5 ± 9.044.7 ± 8.1 → 49.3 ± 7.5+4.1 / +4.6
大腿前面 70%29.8 ± 7.0 → 33.9 ± 8.032.1 ± 6.4 → 36.0 ± 6.5+4.1 / +3.9
大腿外側 30%34.2 ± 5.9 → 36.5 ± 6.034.2 ± 7.9 → 36.6 ± 7.8+2.3 / +2.4
大腿外側 50%36.0 ± 5.4 → 38.8 ± 5.736.6 ± 6.5 → 39.6 ± 6.8+2.8 / +3.0
大腿外側 70%31.5 ± 4.8 → 34.4 ± 5.332.7 ± 4.9 → 34.9 ± 5.6+2.9 / +2.2
腓腹筋内側19.3 ± 4.2 → 20.5 ± 3.719.2 ± 2.7 → 20.6 ± 2.8+1.2 / +1.4
腓腹筋外側16.5 ± 2.5 → 17.3 ± 2.416.5 ± 3.5 → 17.6 ± 3.5+0.8 / +1.1
ヒラメ筋15.2 ± 3.2 → 16.2 ± 3.815.7 ± 3.3 → 16.3 ± 3.4+1.0 / +0.6

7部位9測定点のどこを見ても、変化量はほぼ重なっています。群間差の推定値はすべてゼロに近く、95%信用区間はいずれもゼロを大きくまたいでいました。体脂肪率と下肢の除脂肪量も同様でした。

ここで統計の読み方について一点だけ補足します。この論文はベイズ統計を使っており、表に並ぶ「p = 0.347」といった数字は、いわゆるp値ではありません。「デロードを入れたほうが良い方向だった確率」を表す事後確率です。0.5に近ければ「どちらとも言えない」という意味になります。筋厚の各部位は0.273〜0.835の範囲に散らばっており、方向すら一定していませんでした。

結果② 筋力──休まなかった群のほうが伸びた

指標DELOAD 前→後TRAD 前→後変化量
スクワット1RM(kg)92.8 ± 38.5 → 105.8 ± 32.195.9 ± 21.7 → 112.3 ± 21.3+13.0 / +16.4
等尺性膝伸展トルク(N·m)258.8 ± 60.6 → 261.8 ± 70.5268.4 ± 55.0 → 288.6 ± 55.0+3.0 / +20.2

とくに等尺性の膝伸展トルクは、DELOAD群がほぼ横ばい(+3.0N·m)だったのに対し、TRAD群は+20.2N·m伸びています。ベイズ解析でも、群間差が連続群に有利である事後確率は1RMで0.851、等尺性筋力で0.924と報告されています。

指標群間差の推定値 [95%信用区間]連続群に有利である事後確率
等尺性筋力(N·m)−11.5 [−33.5 〜 8.2] / −14.4 [−34.3 〜 5.8]0.924
1RM(kg)−4.5 [−10.4 〜 2.8] / −3.6 [−10.4 〜 3.2]0.851

マイナスの値は連続群に有利という意味です。ただしどちらの信用区間もゼロをまたいでいます。論文自身も「差があるとすれば連続群に有利で、小〜大の幅がありうる」という慎重な表現にとどめており、断定はしていません。

結果③ 持久力・ジャンプ・気分

指標DELOAD 前→後TRAD 前→後
垂直跳び(cm)39.9 ± 9.4 → 41.4 ± 9.145.2 ± 8.4 → 46.0 ± 9.7
レッグエクステンション反復回数16.3 ± 6.0 → 20.4 ± 3.815.5 ± 5.8 → 20.6 ± 6.9

どちらも群間差は1回・1cmに満たない水準で、実用上の意味はないと論文は述べています。

興味深いのは主観の指標です。デロード群は5週目に睡眠の質が良くなった一方で、最終週の筋肉痛はむしろ強く報告されていました。訓練意欲も第4週から第9週にかけて低下しています。論文には、休み明けの参加者が「リフレッシュした」ではなく「勘が鈍った・だるい」と語ったという記述があります(あくまで自由な発言の記録で、測定された値ではありません)。

さらに印象的な一節があります。全身で週90セット・原則として反復不能まで追い込むという高ボリュームなプログラムだったにもかかわらず、研究終了時に「デロードが必要だと感じるか」と尋ねたところ、ほぼ全員が「必要ない、数日で通常の練習に戻る」と答えたと書かれています。

資金の出どころ──先に開示します

この論文には、次の記載があります。

これは不正ではありません。適切に開示されている、という以上でも以下でもありません。ただ読む側としては知っておくべき情報だと考えるので、結果より先に置きました。

そのうえで公平に付け加えると、この研究の結果は研究チーム自身の仮説を支持しませんでした。論文には「デロード群のほうが優れた筋成長を示すと当初は仮説を立てた」と書かれています。トレーニングプログラムを販売する会社が資金を出した研究で、「あらかじめ計画したデロードは、少なくとも筋力にとっては得ではなさそうだ」という結論が出ている。この点は評価されてよいところだと思います。

この研究が言えないこと

  1. 対象は米国の大学に通う若年男女39人です。日本人集団のデータではありません。論文自身が「40歳を超える人・青年期・未経験者には一般化できない」と限界に挙げています。
  2. 「デロード=完全休止」でしか調べていません。現場で広く行われている「重量や量を落として続ける」形式は検証されていません。論文はこれを最大の限界の一つとして挙げ、「完全中止ではない軽い休みなら結果は違うかもしれない」と述べています。
  3. 下半身しか測っていません。上半身は各自の判断で行っており、記録の質も一定しなかったと論文が認めています。
  4. 9週間という短い期間の話です。週90セットという量も、それより多い量や長い期間で同じ結論になるかは分かりません。
  5. 同化シグナルは測っていません。「休むと筋が刺激に再び感受性を持つ」という仮説そのものを直接検証したわけではありません。
  6. スミスマシンスクワットの経験は参加条件になっていません。1RMの伸びには、種目に慣れることによる神経的な適応が含まれている可能性があると論文が述べています。
  7. 時間を揃えた対照群がありません。連続群が実質的な対照の役割を果たしていますが、測定誤差を切り分ける設計にはなっていません。
  8. 前提となるプログラムは筋肥大狙いです。8〜12回の中程度の重量で組まれており、高重量中心の筋力トレーニングで同じ結果になるとは限らないと論文が明記しています。

読み取りに注意が必要な箇所

本文の考察には「レッグエクステンションの持久力はわずかにデロード群に有利だった」とありますが、表の推定値は−0.55=連続群に有利の側で、実測の変化量(+4.1回 対 +5.1回)とも向きが合いません。差が1回未満で実用上の意味がないという結論は変わりませんが、方向の記述は表の数値と照らして読むのが安全だと思います。同様に、筋力の表は列見出しが両方とも「Univariate」となっており、前の表と揃えるなら片方は多変量解析の結果だと考えられます。断定はできないので、事実として指摘するにとどめます。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

前回読んだ日本の研究と、今回の米国の研究を並べると、こう見えます。

日本(2011・2013年)米国(2024年)
対象若年男性15人・14人(未経験者)若年男女39人(経験1年以上)
休みの長さ3週間1週間
種目・量ベンチプレス・週9セット下半身4種目・全身週90セット
筋のサイズ最終的に同等同等
筋力休止で有意には落ちなかった連続群のほうが伸びた

サイズについては、条件がこれだけ違う2つの研究が同じ方向を向いています。数週間の休みで筋のサイズが振り出しに戻る、という筋書きは、どちらの研究からも出てきていません。ここは実践者にとって安心材料になりうる部分だと思います。

一方で筋力の扱いは分かれました。米国の研究チームはこの食い違いについて、日本の研究が期間中に1RM測定を何度も行っていたことが関係している可能性を指摘しています。測定そのものが刺激になっていたかもしれない、という読み方です。これは推測であって、確かめられたことではありません。

そのうえで、読んでいて実務的な示唆があると感じたのは次の点です。参加者はほぼ全員、あれだけ追い込んでも「休みは要らない」と答えていました。そして論文の考察は、「必要と感じていないのにカレンダー通りにデロードを入れるのは、少なくとも筋力にとっては得ではないかもしれない」という方向にまとめられています。あらかじめ日程を決める方式よりも、体調を見て柔軟に入れる方式のほうを現場の指導者が好むという調査結果も引かれていました。

ただし、この研究で調べられたのは完全に止めるタイプの休みだけです。重量と量を落として続ける形なら結果は違うかもしれない、というのは論文自身の言葉です。反応には個人差があります。1RMの標準偏差はデロード群で開始時38.5kg・終了時32.1kgと、個人差の幅そのものが群平均の変化を上回る大きさでした。平均の差をそのまま自分に当てはめられる、という性質の数字ではないとされています。

また、9週間という期間はケガや慢性的な関節の不調を扱うには短すぎます。筋の数値が落ちないことと、体のどこも痛まないことは別の話です。休養の判断は数値だけで決めるものではないと思います。

まとめ

次回以降も、海外の研究者の仕事を同じやり方で読んでいきます。動画や書籍での主張と、その人が実際に出した論文は別物です。区別して扱うことをこのシリーズの約束にします。

よくある質問

デロード(1週間の休み)を入れると筋肉は落ちますか?

この研究では落ちませんでした。9週間のプログラムの真ん中で1週間完全に休んでも、大腿・下腿7部位9測定点すべてで筋厚の増加量は連続群と同等でした。ジャンプ力と筋持久力も同様です。ただし対象は米国の若年男女39人で、期間は9週間です。

では筋力はどうでしたか?

筋力は休まず続けた群のほうが伸びていました。スクワット1RMは+13.0kg対+16.4kg、等尺性の膝伸展トルクは+3.0N·m対+20.2N·mです。ベイズ解析で連続群に有利である事後確率は1RMが0.851、等尺性筋力が0.924と報告されています。ただし信用区間はゼロをまたいでおり、論文も断定はしていません。

重量を落として続ける形のデロードはどうですか?

この研究では検証されていません。調べられたのは筋力トレーニングを一切しない完全休止だけです。論文自身が最大の限界の一つとして挙げ、「完全中止ではなく量や強度を下げる形なら、だるさを招かずに疲労だけ抜ける可能性がある」と述べています。今後の研究課題とされています。

日本の研究では3週間休んでも大丈夫だったのに、なぜ結論が違うのですか?

米国の研究チームは、日本の研究が期間中に1RM測定を繰り返していたことが関係している可能性を指摘しています。測定そのものが刺激として働いていたかもしれないという読み方です。ただしこれは考察での推測であり、確かめられたわけではありません。対象(未経験者か経験者か)やトレーニング量も大きく違います。

この研究の資金はどこから出ていますか?

Renaissance Periodization社から助成を受けており、論文は「同社が研究デザインと原稿作成に関与した」と明記しています。共著者の一人が同社の共同創業者であることも利益相反として申告されています。適切に開示された情報です。なお結果は研究チームの当初の仮説を支持しませんでした。

表にある「p = 0.851」はp値ですか?

いいえ。この論文はベイズ統計を用いており、表の数字は「その方向に差がある事後確率」です。0.5に近ければどちらとも言えない、1に近ければその方向である可能性が高い、という読み方になります。一般的な有意差検定のp値とは意味が逆に近いので注意が必要です。

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