この記事の要点
- 週の総量をぴったり同じにしたうえで、週1回に6セットまとめるのと週3回に2セットずつ分けるのを11週間比べた日本の研究です。全文が無料で公開されています。
- 筋力(等尺性最大筋力)の伸びは週1回+43.5%、週3回+65.2%で、週3回が有意に上でした(p<0.05)。
- 一方で筋の太さには群間差がありませんでした。大腿周径も筋厚も、両群とも増え、差はつきませんでした。
- そして主観的なきつさ(RPE)は週1回のほうが全期間を通じて有意に高い。「きつい割に、筋力は伸びなかった」という構図です。
- ただし対照群がなく、67%1RMで限界まで追い込んでもいないと論文自身が書いています。対象は未経験の若年男性20人のみです。
「週1回まとめてやる」か「小分けにして週3回やる」か。仕事や家庭の都合で、まとめざるを得ない人は多いと思います。
この問いを扱った研究の多くは、週あたりの総量が揃っていません。週3回のほうが総量も多ければ、そちらが伸びるのは当たり前です。今回読む研究は、週の総セット数を完全に揃えたうえで分け方だけを変えています。
読む一次資料
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文 | Ochi E, Maruo M, Tsuchiya Y, Ishii N, Miura K, Sasaki K. “Higher Training Frequency Is Important for Gaining Muscular Strength Under Volume-Matched Training.” Front Physiol 2018;9:744 |
| 所属 | 法政大学、岡山大学、帝京平成大学、東京大学、環太平洋大学、日本女子大学 |
| 倫理審査 | 順天堂大学(承認番号24-39) |
| 対象 | レジスタンストレーニング未経験の男子大学生20人 (22.3 ± 0.9歳、173.1 ± 4.8cm、66.8 ± 8.4kg) |
| 入手性 | オープンアクセス(全文無料) |
全文が公開されているため、抄録に載っていない表の数値や、著者自身が挙げた限界まで確認できます。
設計──総量を揃えて分け方だけを変える
| T1群(週1回) | T3群(週3回) | |
|---|---|---|
| 人数 | 10人 | 10人 |
| 1回あたり | 6セット × 12回 | 2セット × 12回 |
| 頻度 | 週1回 | 週3回 |
| 週の総セット数 | どちらも6セット(完全に一致) | |
| 種目・強度 | 膝伸展・67%1RM | |
| 期間 | 11週間 + その後6週間のデトレーニング(無トレーニング) | |
測定したのは、推定1RM、等尺性最大筋力(MVC)、大腿周径、超音波による筋厚、超音波エラストグラフィによる筋硬度、そして主観的運動強度(RPE)です。
結果① 筋力は週3回が有意に上
| T1(週1回) | T3(週3回) | 統計 | |
|---|---|---|---|
| 最大筋力の増加率(11週) | +43.5 ± 15.5% | +65.2 ± 23.2% | p<0.05(有意差あり) |
| 最大筋力の実測値(開始時) | 153.0 ± 29.7 Nm | 169.4 ± 47.3 Nm | 差なし |
| 最大筋力の実測値(11週) | 221.3 ± 56.7 Nm | 270.7 ± 47.7 Nm | 有意差あり |
両群とも大きく伸びていますが、週3回のほうが1.5倍のペースで伸びました。週の総量は同じです。分け方だけが違います。
一方、推定1RM(4RMから換算)では両群とも11週で50%前後増加しましたが、群間に有意差はありませんでした。同じ「筋力」でも、測り方によって差の出方が違ったことになります。
結果② 筋の太さには差がつかなかった
| 指標 | 結果 |
|---|---|
| 大腿周径(30%・50%部位) | 両群とも有意に増加(T1: 2.6-6.7%、T3: 2.8-3.8%)。群間差なし |
| 大腿周径(70%部位) | どちらも有意な増加なし |
| 大腿四頭筋の筋厚(4部位) | 両群とも有意に増加。群間差なし |
| 筋硬度(せん断弾性率) | 両群とも有意な変化なし |
ここが読みどころです。筋力には差がついたのに、筋の太さには差がつかなかった。同じだけ太くなったのに、発揮できる力は週3回のほうが伸びた、という結果です。
論文は、頻度が高いほうが神経系の適応や動作の習熟が進みやすい可能性に触れています。ただし後述するとおり、この点は著者自身が「限界」としても挙げています。
結果③ きつさは週1回のほうが上
主観的運動強度(RPE、0〜10段階)は、全ての測定時点で週1回群のほうが有意に高い結果でした(p<0.01)。効果量は週2で2.62、週11では4.27に達しています。統計的な分類では「ほぼ完全(nearly perfect)」に相当する大きさです。
同じ週6セットでも、1日にまとめれば体感の負担は跳ね上がる。しかも筋力の伸びは劣った。「きつい割に伸びない」という、実践者にとって身も蓋もない組み合わせです。
なお筋硬度(筋損傷の指標として測定)はどちらの群でも有意に変化しませんでした。「まとめてやると筋がひどく傷む」といった話ではなく、あくまで主観的なきつさの差です。
結果④ 6週間休んだらどうなったか
| 指標 | 6週間のデトレーニング後 |
|---|---|
| 大腿周径・筋厚 | 両群とも11週時点より有意に低下 |
| 最大筋力 | 有意な低下は見られなかった(開始時より高い状態を維持) |
| 推定1RM | 両群とも開始時より有意に高いまま |
太さは落ちたが、力は落ちなかった。ただし著者は「デトレーニング期間が先行研究より短く、筋力の有意な低下を捉えられなかった」と、これを限界として自ら記しています。「筋力は落ちにくい」と読み切るのは行き過ぎです。
この研究が言えないこと
この論文は限界を5つ、自分で列挙しています。そのまま紹介します。
1. 対照群がない・栄養状態を測っていない
論文の一文目です。「対照群を設けず、栄養状態も測定しなかった。したがってトレーニングプログラムの真の有効性は適切に評価できない」。特に筋力の変化については、繰り返し測定による運動学習効果が一部寄与している可能性があると明記しています。
2. 若年の未経験男性に限定される
「経験者、女性、高齢者といった他の集団には適用できない」と書かれています。
3. 限界まで追い込んでいない
強度は67%1RMで、著者は「被験者は限界(failure)まで追い込んでいなかったと考える」と述べ、限界まで行った場合には異なる適応が生じた可能性を指摘しています。この一文は重要です。今回の結果は「追い込まない条件での頻度比較」です。
4. 1RMは推定値
1RMは4RMからの換算です。「実際の1RMを把握することが難しく、MVCなど他の指標との変化の比較が困難」と書かれています。1RMで群間差が出なかったことを重く見すぎないほうがよいでしょう。
5. デトレーニング期間が短い
6週間は先行研究に比べて短く、筋力の有意な低下を観察できなかった、としています。
(加えて)人数が各群10人
サンプルサイズはG*Powerで事前設計されていますが、各群10人です。差が出なかった項目については「差がない」ではなく「この規模では検出できなかった」と読む必要があります。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 分けられるなら分けたほうがよさそう。同じ量なら、週3回に分けたほうが筋力の伸びは大きく、しかも体感は楽でした。この2つが同時に成り立つのは珍しいことです。
- まとめても筋肉の太さは同じだけ増えた。週1回しか時間が取れない人にとって、これは悪い知らせではありません。差がついたのは筋力の指標のひとつだけです。
- 「限界まで追い込まない」条件下の話。67%1RMで12回、著者自身が限界には達していないとしています。追い込む前提のトレーニングにそのまま当てはめられません。
- 対照群がない。伸び幅そのものは、測定を繰り返したことによる慣れを含んでいる可能性があります。群間の比較のほうが、絶対値より信頼できる情報だとされています。
- 反応には個人差があります。標準偏差は筋力の増加率で±15.5%と±23.2%あり、同じ群の中でも伸び方は大きく違いました。平均値がそのまま個人に当てはまるわけではありません。
まとめ
週の総量を揃えたうえで、週1回6セットと週3回2セットを11週間比べた日本の研究です。筋力の伸びは+43.5%対+65.2%で週3回が有意に上回り、筋の太さには差がつかず、主観的なきつさは週1回のほうが一貫して高いという結果でした。
論文の結論は「未経験者には週3回×2セットが推奨される。週1回×6セットよりきつくなく、筋の大きさと筋力の獲得において同等かそれ以上である」です。
ただし対照群なし、限界まで追い込まない条件、未経験の若年男性20人という前提を外すと、この結論は成り立ちません。それでも「同じ量を分けるだけで、楽になって、しかも伸びた」という一点は、時間の使い方を考えるうえで持ち帰る価値があると思います。