この記事の要点
- 「6週間やって3週間休む」を繰り返した群と、24週間ひたすら続けた群を比べた日本の研究です。最終的な筋の断面積と筋力の伸びは同等でした。
- 先行する15週間の研究でも、3週間の休止で筋断面積も1RMも有意には落ちませんでした。再開後の伸びは、最初の6週間と同じくらいでした。
- 連続して続けた群は、後半になるほど伸びが鈍りました。同じ研究グループの24週間の時間経過データでも、伸びは対数曲線によく当てはまっています。
- ラットでは、反復で鈍った同化シグナルの応答が12日間の休止で回復していました。あくまで動物・電気刺激の話です。
- ただし2本とも非オープンアクセスで、増加率の実数は公開されていません。対象は若年男性15人・14人(2011年は未経験者)、種目はベンチプレスのみです。
出張、繁忙期、家庭の事情、体調不良。3週間ジムに行けなかった、という経験は誰にでもあると思います。そのとき頭をよぎるのは「積み上げたものが振り出しに戻るのではないか」という不安です。
レジスタンストレーニングによる筋の適応は開始直後ほど大きく、続けるにつれて緩やかになることが報告されています。だとすれば、途中で休みを挟むことは単なる損失なのか、それとも別の意味を持つのか。
この問いを、休止をあらかじめ設計に組み込む形で扱った日本の研究があります。「6週間やって3週間休む」を最初から繰り返させて、休まず続けた群と比べるという設計です。
読む一次資料
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本体① | Ogasawara R, Yasuda T, Sakamaki M, Ozaki H, Abe T. “Effects of periodic and continued resistance training on muscle CSA and strength in previously untrained men.” Clin Physiol Funct Imaging 2011;31(5):399-404 |
| 本体② | Ogasawara R, Yasuda T, Ishii N, Abe T. “Comparison of muscle hypertrophy following 6-month of continuous and periodic strength training.” Eur J Appl Physiol 2013;113(4):975-985 |
| 筆頭著者 | 小笠原理紀先生(論文当時=東京大学大学院新領域創成科学研究科) |
| 本体②の最終著者 | 東京大学名誉教授・石井直方先生 |
| 入手性 | どちらも非オープンアクセス(抄録のみ) |
数値が薄い部分は、同じ研究グループの全文無料の論文(後述)で補います。ここは最初に断っておきます。本体2本は抄録しか読めず、「何%増えた」という実数が一切公開されていません。
設計──休みを「組み込む」
本体①(2011年・15週間)
| CTr群(連続) | RTr群(再開) | |
|---|---|---|
| 人数 | 未経験の若年男性 合計15人を2群に分割 | |
| 種目 | 高強度のベンチプレス | |
| スケジュール | 15週間連続 | 6週間 → 3週間休止 → 10週目から再開 |
| 測定 | 1RM、MRIで測った上腕三頭筋・大胸筋の筋横断面積(CSA) | |
本体②(2013年・24週間)
| CTR群(連続) | PTR群(周期) | |
|---|---|---|
| 人数 | 若年男性 合計14人を無作為に2群へ割付 | |
| 内容 | ベンチプレス 75%1RM・3セット×10回・週3日 | |
| スケジュール | 24週間連続 | 6週間のトレーニング × 3サイクル サイクルの間に3週間の休止 |
| 測定 | 上腕三頭筋・大胸筋のCSA、肘伸展の最大等尺性随意筋力、1RM | |
PTR群の内訳は「6週 + 3週休 + 6週 + 3週休 + 6週」です。合計は24週間で揃いますが、実際にトレーニングしたのは18週間という計算になります。この差をどう読むかは後述します。
結果① 3週間休んでも落ちなかった
2011年の研究では、RTr群の3週間の休止期間中、筋横断面積にも1RMにも有意な低下は見られませんでした。そして再開後の筋断面積の増加は、最初のトレーニング期間で見られた増加と同程度でした。
15週間を終えた時点で、1RMと筋断面積の改善は両群で同等。論文の結論は「15週間の連続トレーニングと比べて、3週間のディトレーニングは筋の適応を妨げない」です。
結果② 24週間でも同じだった
2013年の研究は、これを24週間・3サイクルに拡張したものです。結果は段階ごとに整理すると読みやすくなります。
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 最初の6週間 | 筋断面積・最大等尺性筋力・1RMの増加は両群で同等 |
| CTR群(連続)の推移 | 最初の6週間は徐々に増加。その後、増加のペースが徐々に落ちた |
| 1サイクル目の休止→再開 | PTR群の増加は、同じ期間のCTR群と同程度 |
| 2サイクル目の休止→再開 | PTR群の増加のほうが有意に大きかった |
| 24週間の総合 | 両群で同等 |
読みどころは、2サイクル目で差がついたのに総合では同等だったという点です。連続群は序盤に稼いで後半に失速し、周期群は後半にも伸びしろを残していた。ゴールに着いた時点で並んだ、という構図になります。
論文の結論はこうです。「3週間のディトレーニング/6週間の再トレーニングのサイクルは、24週間後に連続的なレジスタンストレーニングと同様の筋肥大をもたらす」。
補助資料 「伸びが鈍る」を数値で見る
連続群の伸びが後半に落ちる、という部分は本体の抄録では定性的にしか書かれていません。ここは同じ東京大学大学院新領域創成科学研究科の全文無料の論文で補えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文 | Ogasawara R, Thiebaud RS, Loenneke JP, Loftin M, Abe T. “Time course for arm and chest muscle thickness changes following bench press training.” Interv Med Appl Sci 2012;4(4):217-220 |
| 対象 | 未経験の若年男性7人(25 ± 3歳) |
| 内容 | フリーウエイトのベンチプレス、月・水・金の週3日、24週間。75%1RM、3セット×10回(セット間2〜3分) |
| 測定 | Bモード超音波で大胸筋・上腕三頭筋・上腕二頭筋の筋厚を毎週月曜に測定 |
| 入手性 | 全文無料(利益相反なしと申告) |
※この論文には石井直方先生は著者として入っていません。共通しているのは筆頭著者の小笠原理紀先生と、最終著者の2名です。
いつから増え始めたか
| 部位・指標 | ベースラインから有意に増えた時点 |
|---|---|
| 大胸筋の筋厚 | 1週後(p = 0.002) |
| 1RM(最大挙上重量) | 3週後(p = 0.001) |
| 上腕三頭筋の筋厚 | 5週後(p = 0.001) |
| 上腕二頭筋の筋厚 | 24週間を通して有意な変化なし |
24週間の実測値
| 指標 | 開始時 | 24週後 |
|---|---|---|
| 大胸筋の筋厚 | 21.1(3.2)mm | 30.2(4.4)mm |
| 上腕三頭筋の筋厚 | 34.2(3.4)mm | 40.1(3.1)mm |
| 上腕二頭筋の筋厚 | 25.1(3.9)mm | 26.0(2.6)mm |
| ベンチプレス1RM | 51.0(9.8)kg | 77.4(16.9)kg |
括弧内は標準偏差です。そして期間を3つに分けて検定すると、上腕三頭筋の筋厚が有意に増えたのは前半(およそ15週まで)だけでした。大胸筋と1RMは3つの期間すべてで増えています。
さらに、変化のペースを対数回帰で当てはめた決定係数は、大胸筋 r² = 0.960、上腕三頭筋 r² = 0.976、1RM r² = 0.993。対数曲線にきれいに乗るということは、伸びは序盤に集中し、後半にかけて平坦になっていく形だということです。周期群が後半に差をつけられた背景には、この「連続群の失速」があります。
補助資料 なぜ鈍るのか(ラットの話)
機序側の手がかりは、最終著者に石井直方先生が入っているラットの研究にあります。ヒトの実験ではないので、そのまま人間に当てはめないでください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文 | Ogasawara R, Kobayashi K, Tsutaki A, Lee K, Abe T, Fujita S, Nakazato K, Ishii N. “mTOR signaling response to resistance exercise is altered by chronic resistance training and detraining in skeletal muscle.” J Appl Physiol 2013;114(7):934-940 |
| 対象 | 雄のラット |
| 方法 | 経皮的な電気刺激で腓腹筋に最大等尺性収縮を起こす(1日おき) |
| 群分け | 1回(1B)/12回(12B)/18回(18B)/ディトレーニング(DT)=12回のあと12日間休んでから1回 |
| 群 | 運動後のp70S6K・rpS6・p90RSKのリン酸化 |
|---|---|
| 1回だけ(1B) | 対照より上昇 |
| 12回・18回の反復後(12B・18B) | 抑制された |
| 12日間休んだ後(DT) | 回復した |
なお4E-BP1のリン酸化は、慢性トレーニングでもディトレーニングでも変化しませんでした。論文の結論は「慢性的なレジスタンストレーニングによって同化シグナルは運動刺激に対して鈍感になるが、短期間のディトレーニングの後に回復する」です。
ヒトで「休みを挟むと後半にまた伸びた」という現象と、方向としては噛み合っています。ただしこれはラットの腓腹筋を電気刺激した実験であり、休止も12日間です。ヒトの3週間とは別物として読む必要があります。
補助資料 休止後に何が残り、何が残らないか
もう1本、同じグループの研究があります。6週間のベンチプレストレーニングを終えた若年男性を、3週間のディトレーニングにかけたものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文 | Yasuda T, Loenneke JP, Ogasawara R, Abe T. “Effects of short-term detraining following blood flow restricted low-intensity training on muscle size and strength.” Clin Physiol Funct Imaging 2015;35(1):71-75 |
| 群 | HI群(n = 7・75%1RM)/LI-BFR群(n = 10・20%1RM・血流制限) |
| 流れ | 週3日 × 6週間 → 3週間の休止。pre/post/detraining の3時点で測定 |
| 指標 | HI群(高強度) | LI-BFR群(低強度+血流制限) |
|---|---|---|
| ベンチプレス1RM | post・detraining とも pre より高い(P<0.01) | post・detraining とも pre より高い(P<0.01) |
| 上腕三頭筋・大胸筋のCSA | post・detraining とも pre より高い(P<0.01) | post のみ有意に高い(P<0.01) |
| 相対的動的筋力(1RM ÷ 上腕三頭筋CSA) | post・detraining とも高い(P<0.01) | detraining でのみ増加(P<0.01) |
論文の結論は「LI-BFRでも高強度でも、6週間のトレーニングで増えた筋力は3週間のディトレーニングでよく保たれた」です。筋力はどちらも残りました。
ただし断面積の欄を見てください。高強度群では休止後も断面積が開始時より高いままでしたが、低強度+血流制限群では休止後には有意差が消えています。「筋力は残ったが、太さの残り方は同じではなかった」という読み方になります。各群7人・10人という規模なので、断定はできません。
この研究が言えないこと
1. 本体2本は非オープンアクセス=数値が読めない
これが最大の制約です。2011年・2013年のどちらも、抄録に増加率の実数が一切書かれていません。「同等だった」「有意に大きかった」という記述は読めますが、何mm・何%なのかは公開されていません。この記事で数値が出てくるのは、すべて全文無料の別論文からです。
2. 各群の人数配分が分からない
15人・14人という合計は書かれていますが、抄録には群ごとの内訳がありません。いずれにせよ1群あたり10人に満たない規模です。
3. 若年男性に限られる(2011年は未経験者)
2011年の論文は明確に「previously untrained men(それまで鍛えていなかった男性)」を対象としています。女性、高齢者、トレーニング経験者には当てはめられません。とくに未経験者は序盤の伸びが大きいため、「休んでも追いつく」という現象が起きやすい可能性があります。
4. 種目がベンチプレスだけ
3本ともベンチプレス単一種目です。全身のプログラムや下半身では違う結果になる可能性があります。実際、24週間の時間経過を追った研究では上腕二頭筋が最後まで有意に増えませんでした。同じ種目でも部位によって挙動が違うということです。
5. 「休んだほうがよい」とは書かれていない
ここは強調しておきます。2013年の結論は「同等」です。2サイクル目でPTR群が有意に上回ったのはそのサイクルの伸び幅であって、24週間の総合成績ではありません。
また「PTR群は18週間しか鍛えていないのに同じ結果だった=効率がよい」という読み方は、設計から計算できはしますが、論文がそう主張しているわけではありません。トレーニング効率を比較する設計にはなっていません。
6. 機序の説明はラット・電気刺激
mTORシグナルの話は、ラットの腓腹筋を経皮的に電気刺激した実験です。ヒトが自分の意思で挙上するトレーニングとは条件が違い、休止期間も12日です。方向性の参考にはなりますが、ヒトの3週間の説明として確定させることはできません。
7. 3週間より長い休止は分からない
ここで検討されているのは3週間です。2か月、半年といった長い中断について、これらの研究は何も言っていません。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 3週間空いても、この研究の範囲では振り出しには戻っていませんでした。筋断面積も1RMも有意には落ちず、再開後の伸びは最初と同程度でした。予定が崩れたときに焦る材料は、少なくともここで読んだ範囲には見当たりません。
- ただし「休んだほうが伸びる」ではありません。24週間の総合成績は同等です。休みを積極的に取る理由としてこの研究を使うのは、読み込みすぎです。
- 伸びは序盤に集中します。対数回帰の当てはまりの良さ(r² = 0.960〜0.993)が示すのは、後半になるほど1週あたりの伸びが小さくなるということです。「最初の3か月ほど伸びない」のは異常ではなく、この形どおりです。
- 種目を変えなければ増えない部位があります。24週間ベンチプレスを続けても、上腕二頭筋の筋厚は有意に増えませんでした。押す種目だけでは引く筋肉は育たない、という当たり前の話が数値で出ています。
- 反応には個人差があります。24週間の実測値では、ベンチプレス1RMの標準偏差が開始時9.8kg・24週後16.9kgと広がっており、同じプログラムでも伸び方は人によって大きく違ったと読めます。
- 規模が小さい研究です。合計15人・14人・7人・17人。平均値がそのまま個人に当てはまるわけではありませんし、「差がなかった」項目は「差がない」ではなく「この規模では検出できなかった」と読むのが妥当です。
まとめ
「6週間やって3週間休む」を3サイクル繰り返した群と、24週間続けた群を比べた日本の研究では、最終的な筋横断面積と筋力の伸びは同等でした。先行する15週間の研究でも、3週間の休止で筋断面積・1RMは有意に低下せず、再開後は最初と同じペースで伸びています。
背景には、連続群の伸びが後半に鈍るという現象があります。同じ研究グループの全文公開データでは、24週間の変化が対数曲線にきれいに乗り(r² = 0.960〜0.993)、上腕三頭筋にいたっては後半に有意な増加が見られませんでした。ラットでは、反復で鈍った同化シグナルの応答が12日間の休止で回復しています。
ただし本体2本は非オープンアクセスで数値が読めず、対象は若年男性15人・14人(2011年は未経験者と明記)、種目はベンチプレスのみです。この前提を外すと結論は成り立ちません。それでも「3週間空いた」ことを取り返しのつかない失敗として扱う必要はなさそうだ、という一点は、続けるうえで持ち帰る価値があると思います。