研究ノート・たんぱく質と腎臓

プロテインで腎臓は悪くなる?海外の研究3本

公開日: 2026-10-01 · 約9分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

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この記事の要点

  • 「プロテインを飲みすぎると腎臓を傷める」という話を、海外の一次資料3本(28試験の統合分析・筋トレ経験者の1年間の試験・ノルウェーの10年追跡)で確かめました。
  • 腎臓に病気のない人を対象にした28試験・1,358人の統合分析では、たんぱく質を多くとった群と普通・少なめの群とで、腎臓のろ過能力の「変化」に差はありませんでした。
  • 筋トレ歴約9年の男性14人が体重1kgあたり1日2.5〜3.3gのたんぱく質を1年間とった試験でも、血液検査の腎臓の値に差は出ていません。ノルウェーの中高年1,324人を約10年追った調査でも、たんぱく質を多くとる人ほど腎臓の働きが早く落ちる、という関連は見られませんでした。
  • ただし、すでに腎臓に病気がある人は別です。また、統合分析の根拠の確かさは「低い〜非常に低い」と評価されており、日本人のデータでもありません。

「プロテインを毎日飲んでいると腎臓が悪くなる」。筋トレを始めた人が、家族や知人から一度は言われる心配です。たんぱく質が体内で分解されると、腎臓で処理される老廃物が増えるため、「腎臓に負担がかかる」という理屈はたしかに分かりやすく聞こえます。

では、腎臓に病気のない人がたんぱく質を多くとると、実際に腎臓の働きは落ちるのか。今回は、腎臓のろ過能力を示す値「GFR(糸球体ろ過量=腎臓が1分間に血液をこしてきれいにする量)」の変化に注目し、海外の一次資料3本を読みます。

読む一次資料

年論文(掲載誌)種類入手性
①2018Devries MC, et al. "Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis." J Nutr 148(11):1760-177528試験・1,358人の統合分析全文無料(PMC6236074)
②2016Antonio J, et al. "A High Protein Diet Has No Harmful Effects: A One-Year Crossover Study in Resistance-Trained Males." J Nutr Metab 2016:9104792筋トレ経験者14人・1年間の試験全文無料(PMC5078648)
③2026Rinde LB, et al. "Higher habitual protein intake is not linked to decline of iohexol-measured GFR in adults ≥40 years." Clin Kidney J 19(8):sfag235ノルウェーの中高年1,324人・約10年の追跡全文無料(PMC13430269)

①はカナダのウォータールー大学を中心とするグループ、②は米国のノバ・サウスイースタン大学、③はノルウェーのトロムソ市で続く住民調査(トロムソ研究)の一部で、ノルウェー北極大学(UiT)と北ノルウェー大学病院のグループによるものです。

利益相反について:①は共著者の1人が米国乳製品協議会・カナダ酪農家団体・米国の牛肉生産者団体から研究資金や謝礼を受けたと開示しています。②は使ったプロテイン粉末をメーカー(Dymatize社)から無償提供されており、筆頭著者は国際スポーツ栄養学会の代表で、同社がその学会のスポンサーだと開示しています。③は「利益相反なし」で、資金は北ノルウェー地域保健局などです。

設計──「試験」と「長期の追跡」を組み合わせて読む

3本は種類が違います。

  1. ①は、たんぱく質の量をくじ引きで変えた試験28本をまとめたものです。原因と結果を確かめやすい半面、期間は4日〜104週間と短めの試験が中心です。
  2. ②は、筋トレをしている人だけを対象にした1年間の試験です。ただし14人と少人数です。
  3. ③は、ふだんの食事を調べたうえで、腎臓の働きを10年間くり返し測った追跡調査です。期間は長い一方、試験ではないので因果関係までは言えません。

③の特徴は、腎臓の働きを血液のクレアチニン(筋肉から出る老廃物)から推定するのではなく、検査薬(イオヘキソール)を注射してその排出速度から実測している点です。クレアチニンは筋肉量やたんぱく質の摂取量そのものでも上下するため、筋トレをする人の腎臓の評価ではずれが出やすいと③の著者らは指摘しています。

結果① 28試験の統合分析で、腎臓のろ過能力の「変化」に差はなかった(2018年)

①は、腎臓の病気がない成人を対象に、たんぱく質を多くとる群(体重1kgあたり1日1.5g以上、または摂取エネルギーの20%以上、または1日100g以上)と、普通・少なめの群を比べた試験を集めています。平均の摂取量は、多い群が体重1kgあたり1日1.81g、少ない群が0.93gでした。参加者の平均年齢は49歳、平均BMIは31で、太り気味の人が多い集団です。

分析のしかた結果(標準化平均差と95%信頼区間)読み方
試験の終了時の値だけを比べる(28試験)0.19(0.07〜0.31)たんぱく質の多い群がわずかに高い(有意)
試験の開始時からの変化を比べる(18試験)0.11(−0.05〜0.27)差なし
2型糖尿病の人だけ(変化)−0.11(−0.35〜0.14)差なし

※標準化平均差は、単位の違う測定値をそろえて比べるための値です。0.2未満は「ごく小さい」とされます。

著者らは、開始時点ですでに群のあいだに5%以上の差があった試験が19本中6本あったことから、「終了時の値だけを比べると、たんぱく質の影響を大きく見積もってしまう」と考え、開始時からの変化で比べるほうが適切だとしています。そのうえで「健康な成人では、たんぱく質を多くとっても腎臓の働きに悪い影響は見られない」と結論づけています。

なお、たんぱく質を多くとるとGFRが一時的に上がること自体は、腎臓が多く働いている反応として以前から知られています。①でも、体重が変わらない条件の試験では、最初の8週間に限ってGFRの変化が多い群でわずかに大きく、8週間を超える試験では差が見られなかったと報告されています。

結果② 筋トレ経験者が1年間、体重1kgあたり3g超をとっても血液検査に差はなかった(2016年)

②の参加者は、筋トレ歴が平均8.9年の男性14人(平均26.3歳)です。ふだんの食事の期間と、たんぱく質を増やす期間を、それぞれ2か月と4か月ずつ(計6か月ずつ)入れ替えて過ごしました。増やした分は主にホエイプロテインです。

項目開始時ふだんの食事の期間たんぱく質を増やした期間
たんぱく質(体重1kgあたり1日)2.31g2.51g3.32g
血中尿素窒素(mg/dL)222222
クレアチニン(mg/dL)1.11.11.1
推定GFR9510198
体脂肪量(kg)11.4212.3912.30

※論文の表2・表4・表1の平均値。どの項目も、2つの期間のあいだに有意差はありませんでした。

たんぱく質を増やした期間は摂取エネルギーも1日約400kcal多くなっていましたが、体脂肪量は増えていませんでした。ただし、「ふだんの食事」の時点ですでに体重1kgあたり2.5gと、一般的な目安を大きく上回る量をとっていた点には注意が必要です。この試験は「普通の量と多い量」ではなく、「多い量と、さらに多い量」の比較です。

結果③ 中高年1,324人の10年追跡で、たんぱく質の多さと腎臓の働きの低下は無関連(2026年)

③の対象は、開始時に平均64歳の男女1,324人です。食事の内容を261品目の質問票で調べ、腎臓の働きを実測で約10年のあいだに2〜3回測りました。たんぱく質の摂取量は平均で体重1kgあたり1日1.2gで、最も多い4分の1のグループは1.4g以上(平均1.8g)でした。

調べたこと結果(体重1kgあたり1日0.1g多いごと)
腎臓の働き(実測GFR)の1年あたりの低下−0.01(95%信頼区間−0.04〜0.02)=関連なし
低下が特に速い人(下位10%)になるオッズ比0.97(0.86〜1.10)=関連なし
GFRが60未満(慢性腎臓病の目安)になるハザード比1.09(0.96〜1.21)=関連なし

※年齢・性別・体格・血圧・糖尿病・喫煙・運動習慣などをそろえた後の値(論文の表2〜4)。

性別、肥満、高血圧、糖尿病の手前の人などに分けても、結果は変わらなかったと報告されています。

この研究が言えないこと

  1. すでに腎臓に病気がある人には当てはまりません。①は腎臓病の人を除いており、③の著者も「慢性腎臓病の人では、たんぱく質を控えることが引き続き必要な場合がある」と明記しています。
  2. ①の根拠の確かさは「低い〜非常に低い」と評価されています。くじ引きの方法を書いていた試験は28本中4本しかなく、試験ごとの結果のばらつきも残っていると著者ら自身が認めています。
  3. ①の参加者は、平均49歳・平均BMI31の太り気味の人が中心です。若い筋トレ愛好者の長期的な影響を直接確かめたものではありません。
  4. ②は14人の小さな試験で、腎臓の値は血液のクレアチニンから推定した値です。クレアチニンは筋肉量の影響を受けるため、筋トレをする人の腎臓の評価にはずれが出うると③の著者らは指摘しています。また②は比較の基準がすでに「多い量」でした。
  5. ③は試験ではなく追跡調査なので、因果関係は言えません。食事は質問票による自己申告で、プロテイン粉末の使用は調べておらず、著者ら自身が「筋トレをする人に見られるような非常に多い摂取量で腎臓病のリスクが上がるかどうかは分からない」と書いています。
  6. 体重1kgあたり3gを超える量を何年も続けた場合の安全性は、どの研究も確かめていません。②の1年間(多い期間は計6か月)が最長です。
  7. 日本人集団のデータではありません。対象は各国で行われた試験の参加者と、米国の筋トレ愛好者、ノルウェーの住民です。
  8. ②と①には、乳製品・食肉業界やプロテインメーカーとの関係が開示されています。これだけで結果が誤りとは言えませんが、読むときに知っておくべき情報です。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

3本を並べると、「腎臓に病気のない人が、たんぱく質を多めにとると腎臓が悪くなる」ことを示す一次資料は、今回の範囲では見当たりませんでした。試験でも、10年の追跡でも、腎臓の働きの変化に差は出ていません。

一方で、ここから言えるのは「腎臓に問題のない人が、体重1kgあたり1.5〜2g程度をとる範囲では、悪い変化は確認されていない」ところまでです。3gを超える量を何年も続ける、腎臓の数値に指摘を受けたことがある、糖尿病や高血圧で治療中、といった場合は話が別で、健康診断のクレアチニンや尿たんぱくの結果を見ながら、医師に相談するのが筋だと思います。

筋トレをしている人は、健康診断でクレアチニンがやや高めに出ることがあります。筋肉量が多いと値が上がりやすいためで、③の著者らもこのずれを問題にしています。数値に指摘があったときは、筋トレやプロテインの習慣を医師に伝えると話が早いでしょう。効果や影響には個人差があるとされています。

まとめ

出典(一次資料)

  1. Devries MC, Sithamparapillai A, Brimble KS, Banfield L, Morton RW, Phillips SM. Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Nutr. 2018;148(11):1760-1775. doi:10.1093/jn/nxy197 全文(PMC6236074)
  2. Antonio J, Ellerbroek A, Silver T, Vargas L, Tamayo A, Buehn R, Peacock CA. A High Protein Diet Has No Harmful Effects: A One-Year Crossover Study in Resistance-Trained Males. J Nutr Metab. 2016;2016:9104792. doi:10.1155/2016/9104792 全文(PMC5078648)
  3. Rinde LB, et al. Higher habitual protein intake is not linked to decline of iohexol-measured GFR in adults ≥40 years. Clin Kidney J. 2026;19(8):sfag235. doi:10.1093/ckj/sfag235 全文(PMC13430269)

よくある質問

プロテインを毎日飲むと腎臓が悪くなりますか?

腎臓に病気のない人を対象にした28試験の統合分析では、たんぱく質を多くとった群と普通・少なめの群とで、腎臓のろ過能力の変化に差はなかったと報告されています。ただし根拠の確かさは「低い〜非常に低い」と評価されており、腎臓に病気がある人には当てはまりません。

たんぱく質は1日どれくらいまでなら大丈夫ですか?

今回読んだ研究で確かめられているのは、統合分析で平均体重1kgあたり1.8g程度、筋トレ経験者の試験で最大3.3g程度(多い期間は計6か月)までです。それ以上を何年も続けた場合の安全性を確かめた研究はありませんでした。

健康診断でクレアチニンが高いと言われました。筋トレのせいですか?

クレアチニンは筋肉から出る老廃物で、筋肉量が多い人やたんぱく質を多くとる人では高めに出ることがあると、ノルウェーの研究の著者らも指摘しています。ただし原因は自己判断できないため、筋トレやプロテインの習慣を伝えたうえで医師に相談してください。

腎臓病の人もたんぱく質を多くとってよいのですか?

いいえ、今回の研究は腎臓に病気のない人が対象です。ノルウェーの研究の著者らも、慢性腎臓病の人ではたんぱく質を控えることが引き続き必要な場合があると書いています。主治医の指示に従ってください。

筋トレをしている若い人のデータはありますか?

米国で筋トレ歴約9年の男性14人が1年間(たんぱく質を増やした期間は計6か月)試した研究があり、血液検査の腎臓の値に差は出ませんでした。ただし人数が少なく、腎臓の値も血液から推定したもので、長期の影響は分かっていません。

日本人にも同じことが言えますか?

今回の3本はいずれも日本人集団のデータではありません。体格や食習慣が違うため、そのまま当てはまるとは限りません。

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