この記事の要点
- 運動後のマッサージと筋肉痛を調べた11の比較試験をまとめた分析(①)では、マッサージを受けた人は、運動の24〜72時間後の筋肉痛が軽かったと報告されています。とくに48時間後・72時間後で差が大きく、運動の直後には差がありませんでした。
- 29研究をまとめた別の分析(②)でも、筋肉痛はマッサージで軽くなる方向でしたが、筋力・跳ぶ力・走る速さ・持久力・疲れた感じには、はっきりした差が見られませんでした。
- 筋膜ローラー(フォームローラー)を運動後に使った7研究の分析(④)では、筋肉の痛みの感じ方は小さく和らぐ方向でしたが、著者ら自身が「効果は小さく、一部は無視できる程度」とまとめています。
- 筋膜ローラーとマッサージガンを3日間使った比較試験(⑤)では、どちらも何もしない場合と比べて、痛みの軽さに差がありませんでした。
- マッサージで筋肉の中の乳酸の量は変わらなかったという実験があります(⑥)。「マッサージで乳酸を流す」という説明は、今回読んだ資料からは支持されませんでした。
- 元になった試験はどれも少人数で、マッサージは「受けたかどうか」を本人に隠せないため、期待による思い込みの影響を取り除けていません。
マッサージガンを使う前に
運動の後にマッサージガンを当てられた人が、筋肉が壊れて血液中に成分が流れ出す「横紋筋融解症」で入院したという症例報告があります(⑦)。強いマッサージのあとに、紅茶やコーラのような色の尿が出る、太ももなどが強く腫れる、あざが多数できる、力が入らないといった場合は、使用をやめて医療機関に相談してください。あざができやすい人や持病のある人は、使う前に医師に相談するのが安心です。
筋トレの翌日、太ももがパンパンに張っている。マッサージを受けたり、筋膜ローラーで転がしたり、マッサージガンを当てたりすれば、早く楽になるのでしょうか。
このブログでも以前、マッサージガンや筋膜ローラーの記事を書きました。筋膜ローラーの記事では「運動後に5分使うと張りや凝り感が軽くなり可動域の改善も確認されたと報告されています」と書きましたが、元になった研究は示していませんでした。
この記事では、「運動後のマッサージで筋肉痛は軽くなるのか」「筋膜ローラーやマッサージガンでも同じことが言えるのか」を、海外の研究7本で確かめます。
前提として、運動の翌日から数日後に出る筋肉痛は「遅発性筋肉痛」と呼ばれ、重りをゆっくり下ろす動きのように、筋肉が引き伸ばされながら力を出す動きの後に起こりやすいとされています。以下の研究の多くは、この動きで筋肉痛をわざと起こしてから調べています。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Guo J, et al. "Massage Alleviates Delayed Onset Muscle Soreness after Strenuous Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis." Front Physiol 2017;8:747 | 運動後のマッサージと筋肉痛を調べた11の比較試験の統合分析 | 全文無料(PMC5623674) |
| ② | Davis HL, Alabed S, Chico TJA. "Effect of sports massage on performance and recovery: a systematic review and meta-analysis." BMJ Open Sport Exerc Med 2020;6(1):e000614 | 専門家の手によるマッサージが、運動能力と回復に与える影響を調べた29研究の統合分析 | 全文無料(PMC7228568) |
| ③ | Dupuy O, et al. "An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis." Front Physiol 2018;9:403 | 運動後の回復法(マッサージ、軽い運動、ストレッチなど)を比べた99研究の統合分析 | 全文無料(PMC5932411) |
| ④ | Wiewelhove T, et al. "A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery." Front Physiol 2019;10:376 | 筋膜ローラーを運動の前または後に使った21研究の統合分析 | 全文無料(PMC6465761) |
| ⑤ | Szajkowski S, Pasek J, Cieślar G. "Foam Rolling or Percussive Massage for Muscle Recovery: Insights into Delayed-Onset Muscle Soreness (DOMS)." J Funct Morphol Kinesiol 2025;10(3):249 | 30〜40歳の60人。ふくらはぎに筋肉痛を起こしたあと、筋膜ローラー・マッサージガン・何もしないの3群で比べた | 全文無料(PMC12286022) |
| ⑥ | Crane JD, et al. "Massage therapy attenuates inflammatory signaling after exercise-induced muscle damage." Sci Transl Med 2012;4(119):119ra13 | 若い男性11人。運動後に片脚だけマッサージし、左右の太ももの筋肉を少量採取して中身を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑦ | Chen J, et al. "Rhabdomyolysis After the Use of Percussion Massage Gun: A Case Report." Phys Ther 2021;101(1):pzaa199 | 運動後にマッサージガンを当てられた25歳女性が入院した症例報告 | 全文無料(PMC7846179) |
①〜⑤と⑦は全文を確認し、数値は本文と表から取りました。⑥は全文が有料のため、要旨に書かれた内容だけを使っています。
設計──「わざと筋肉痛を起こして、ほぐした側と比べる」
①〜⑤の元になった試験の多くは、次のような手順をとっています。
- まず筋肉痛を起こす:重りに引っ張られながら肘を伸ばす、かかとをゆっくり下ろす、スクワットを限界まで繰り返す、といった運動を行います。
- マッサージや道具でほぐす:専門家による手技のマッサージ(①②③)、筋膜ローラー(④⑤)、マッサージガン(⑤)。
- 何もしない場合と比べる:別の人のグループ、または同じ人の反対側の脚や腕と比べます。
- 筋肉痛の程度を本人に答えてもらう:0〜10の数字や線の上の位置で痛みを答える方法がよく使われます。あわせて筋力や、血液中の筋肉由来の酵素(クレアチンキナーゼ)なども測ります。
統合分析の数値は「標準化平均差」という値で示されています。研究ごとに違う物差しで測った結果をそろえて比べるための値で、0なら差なし、絶対値が大きいほど差が大きいことを示します(研究によってプラス・マイナスの向きの決め方が違うので、以下では向きを言葉で添えます)。
ここで確かめているのは「ほぐすと、数日以内の筋肉痛や筋力の戻りがどう変わるか」です。数か月後に筋肉がどれだけ増えたかは、どの研究も測っていません。
結果①──マッサージで筋肉痛は軽くなる方向。ただし直後は差がなかった(①②③)
①は中国の上海と温州の大学などの研究者らによる統合分析で、くじ引きで群を分けた比較試験11本をまとめています。試験はアメリカ5本、中国3本、カナダ・インド・イランが各1本です。対象には、筋トレ歴2年以上の男性ボディビルダー30人が、スクワットかレッグプレスを限界まで5セット行ったあとに30分のマッサージを受けた試験も含まれています。
| 測ったもの(①) | 時点 | マッサージありとなしの差 |
|---|---|---|
| 筋肉痛 | 運動の直後 | −0.03(p=0.90)差なし |
| 24時間後 | −0.61(−1.17〜−0.05)軽い | |
| 48時間後 | −1.51(−2.24〜−0.77)軽い | |
| 72時間後 | −1.46(−2.59〜−0.33)軽い | |
| 全体 | −1.16(−1.60〜−0.72)軽い。研究ごとのばらつきは大きい(I²=79%) | |
| 関節を動かさずに出せる最大の筋力 | 全体 | 0.56(0.21〜0.90)高い |
| 時点別 | 差が有意だったのは72時間後だけ(24時間後・48時間後は差なし) | |
| 動かしながら出せる最大の力 | 全体 | 0.38(0.04〜0.71)高い。ただし試験を1本除くと結果が逆転し、著者らは「慎重に解釈すべき」としている |
| 血液中のクレアチンキナーゼ | 全体 | −0.64(−1.04〜−0.25)低い(24時間後は差なし) |
著者らは「マッサージは筋肉痛を和らげ、筋力の回復を高めうる」と結論しています。一方で、11本すべての試験で、どちらの群に入るかを事前に伏せる手続きが報告されておらず、参加者もマッサージを受けたかどうかを当然知っていました。結果を測る人に群を伏せていたのも2本だけです。著者らは「含めた試験の質はすべて低い」と書いています。
読み取りに注意:①の要旨には「504人」とありますが、表1に書かれた11試験の人数を足すと239人です。①は同じ試験の結果を時点ごとに別々のデータ(計23個)として数えているため、504人は延べの人数だと読めます。
②はシェフィールド大学(イギリス)の研究者らによる統合分析で、専門家が手で行うマッサージに絞り、筋膜ローラーや機械によるマッサージは除いています。同じ人を何度も数えないよう、各研究からはマッサージに最も近い時点の値だけを使っています。
| 測ったもの(②) | 研究数・人数 | マッサージありとなしの差 |
|---|---|---|
| 筋肉痛 | 10研究・311人 | 1.13(0.44〜1.82)軽い。著者らは「約13%の軽減」としている。ばらつきは大きい(I²=86%) |
| 体の柔らかさ | 7研究・246人 | 1.07(0.21〜1.93)高い(約7%)。ばらつきは非常に大きい(I²=90%) |
| 筋力 | 12研究・346人 | 0.17(−0.08〜0.42)差なし |
| 跳ぶ力 | 5研究・132人 | 0.16(−0.20〜0.51)差なし |
| 走る速さ | 7研究・257人 | −0.35(−0.98〜0.28)差なし |
| 持久力 | 3研究・96人 | 0.21(−3.45〜3.87)差なし |
| 疲れた感じ | 5研究・171人 | 0.47(−0.28〜1.22)差なし |
②の著者らは「マッサージが運動能力を直接高めるという根拠は見つからなかったが、柔らかさと筋肉痛はいくらか良くなる可能性がある」とまとめています。①が「筋力の回復も高まる」としたのに対し、②では筋力に差が出ませんでした。②は直後に近い時点を使い、①は24〜72時間後をまとめているという違いがあり、①でも筋力の差が有意だったのは72時間後だけでした。
読み取りに注意:②の冒頭の要約欄の1か所では、体の柔らかさが「有意な改善なし」の項目に並んでいますが、本文の結果と別の要約欄では「小さいが有意な改善」とされています。この記事では本文の結果に従いました。
③はポワティエ大学(フランス)の研究者らによる99研究の統合分析で、回復法どうしを比べています。表1では、マッサージは158人(14群)で筋肉痛への影響が−2.26(−3.05〜−1.47)と、比べた回復法の中で最も大きく、軽い運動は−0.94(−1.61〜−0.28)、ストレッチは0.15(0.00〜0.29)で差なしでした。ただし−2.26は統合分析としては非常に大きな値で、①②の値(約1.1)とも開きがあります。分析の方法や含めた研究が違うため、「どれだけ軽くなるか」の大きさは、研究によってかなり違うと受け取るのが無難です。
結果②──筋膜ローラーとマッサージガンは、痛みの差がはっきりしない(④⑤)
④はルール大学ボーフム(ドイツ)などの研究者らによる統合分析で、筋膜ローラーや、手で持って転がすローラー棒を使った21研究(454人)をまとめています。運動の後に使った研究は7本(148人)です。
| 運動の後に使った場合(④) | 変化 | 著者らの評価 |
|---|---|---|
| 筋肉の痛みの感じ方 | +6.0%(効果の大きさ0.47) | 「小さい」効果。④の中では最も大きい |
| 走る速さの落ち込み | +3.1%(0.34) | 統計的な差なし(p=0.12) |
| 筋力の落ち込み | +3.9%(0.21) | 統計的な差なし(p=0.28) |
| 跳ぶ力 | −0.2%(0.06) | ほぼゼロ |
運動の前に使った場合は、体の柔らかさが+4.0%、走る速さが+0.7%と小さく良くなる方向でした。著者らは「筋膜ローラーの効果は小さく、一部は無視できる程度」とし、「回復の道具というより、ウォーミングアップとして使う根拠のほうがある」と結論しています。なお、痛みの値については本文に信頼区間の数値が書かれておらず、今回は図の値を読み取っていません。
⑤はポーランドの医療系の大学の研究者らによる比較試験です。日頃スポーツをしていない30〜40歳の男女60人が、片脚でつま先立ちになり、かかとをゆっくり下ろす動きを限界まで4セット行いました。その後、くじ引きで分けた3群(各20人)が、翌日から3日間、ふくらはぎに次のことを行いました。
- 筋膜ローラー群:5分間、ふくらはぎ全体を転がす(経験者が付き添って正しいやり方を確認)
- マッサージガン群:市販のマッサージガン(柔らかいヘッド)で5分間、自分でふくらはぎ全体に当てる
- 何もしない群:安静にする
どちらの道具も、圧の強さは10段階で6程度の痛みに収まるよう本人が調整しました。
| 痛み(0〜10・中央値)(⑤表) | 1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 |
|---|---|---|---|---|
| 筋膜ローラー群 | 4.25 | 5 | 3.5 | 0.5 |
| マッサージガン群 | 5 | 6 | 3 | 1 |
| 何もしない群 | 5 | 5.5 | 4 | 2 |
| 3群の差(p値) | 0.569 | 0.680 | 0.696 | 0.790 |
痛みは3群とも2日目にいちばん強くなり、その後は和らぎました。どの日も3群の間に統計的な差はなく、著者らは「どちらの方法も、何もしない場合より痛みを和らげることはなかった」と書いています。4日目の中央値は何もしない群が2、筋膜ローラー群が0.5でしたが、これも差は有意ではありませんでした。
専用の機器で筋肉の張り(緊張度)と硬さも測っています。何もしない群では2日目に張りと硬さが高くなり、筋膜ローラー群とマッサージガン群では1日目から下がり始めたと報告されています。ただし表1で3群の間に統計的な差が出たのは、硬さの2日目(p=0.042)だけで、張りはどの日も差がありませんでした。
読み取りに注意:⑤の要旨や結論では「筋膜ローラーとマッサージガンは、何もしない場合より筋肉の張り・硬さ・弾力の回復を早める」とされています。しかし要旨や結果の章で「有意」とされているのは、主にそれぞれの群の中で日を追って値が変わったかどうか(筋膜ローラー群と何もしない群は有意、マッサージガン群は有意でない)で、3群を直接比べた差は上のとおりほとんど出ていません。この記事では、群どうしを比べた表の値を重く見ました。
結果③──乳酸は変わらず、変わったのは炎症の信号(⑥)。まれに重い症例も(⑦)
⑥はマクマスター大学(カナダ)の研究者らによる実験です。若い男性11人が運動で太ももの筋肉を傷めたあと、片脚だけに10分間のマッサージを受けました。運動前、マッサージ直後、その2.5時間後に、太ももの筋肉を少量採取して中身を調べています。
- 筋肉の中のグリコーゲン(筋肉にためた糖)と乳酸の量は、マッサージで変わりませんでした。
- 一方で、炎症に関わる物質(TNF-α・IL-6)の産生は抑えられ、筋肉の細胞の中でエネルギーを作る「ミトコンドリア」を増やす方向の信号が強まっていました。
- 要旨には、筋肉痛そのものの測定結果は書かれていません。
マッサージは「血流を良くして乳酸などを流す」と説明されることがあります。⑥では筋肉の中の乳酸の量は変わらず、②の著者らも、血液中の乳酸を下げる点では、マッサージより軽い運動のほうが勝っていた研究が複数あるとしています。そもそも筋肉痛の原因を乳酸とする説自体が、現在は支持されていません(このブログの関連記事を参照)。マッサージで筋肉痛が和らぐとしても、それは「乳酸を流したから」ではないと考えられます。
⑦は中国・汕頭の病院からの症例報告です。軽い鉄欠乏性貧血を治療していなかった25歳の女性が、2日続けてジムで自転車を約30分こぎ、自転車の直後にコーチから市販のマッサージガンを両太ももに約10分当てられました。コーチは病歴を確認せず、医療者の監督もありませんでした。その夜から太ももが痛み、来院時には太ももの痛みが3日、茶色い尿が1日続いていて、太ももには多数のあざがありました。
- 血液中のクレアチンキナーゼは30,000 U/L超(基準値は24〜195)で、重い横紋筋融解症と診断されて入院しました。
- 点滴などの治療で、2週間で301 U/Lまで下がり、その後は回復しています。
- 著者らは、マッサージガンで横紋筋融解症が起きた初めての報告としています。本人には、以前から軽いけがでもあざができやすい傾向がありました。
1人の症例なので、どのくらいの頻度で起こるのか、マッサージガンだけが原因なのかは分かりません。ただ、強く長く当てることに危険がまったくないわけではない、という注意にはなります。
この研究が言えないこと
- 日本人集団のデータではない。①の元の試験はアメリカ・中国・カナダ・インド・イラン、②はイギリス、③はフランス、④はドイツ、⑤はポーランド、⑥はカナダ、⑦は中国の研究者によるものです。②③④の元になった研究の国は、今回すべては確認していません。
- 思い込みの影響を取り除けていない。マッサージを受けたかどうかは本人に分かってしまうため、①④の著者らも、参加者に伏せることはできなかったと書いています。筋肉痛は本人が答える指標なので、「ほぐしてもらったから楽なはず」という期待が結果に混ざっている可能性があります。
- どれだけ軽くなるかは、はっきりしない。筋肉痛への影響は、①で−1.16、②で1.13、③で−2.26と研究によって開きがあり、①②の中でも研究ごとのばらつきが大きいと報告されています。「痛みが10段階で何点下がるか」に直す計算は、どの資料にもありません。
- 専門家のマッサージと、自分でほぐす道具は別物。①②は人の手によるマッサージで、②は専門家によるものに限っています。筋膜ローラーやマッサージガンを自分で使った場合に同じ結果になるとは言えず、④⑤では痛みへの影響は小さいか、差がありませんでした。
- マッサージガンのデータは特に少ない。今回読んだ中で、マッサージガンを何もしない場合と比べた試験は⑤の1本だけで、ふくらはぎ1か所、筋トレ習慣のない30〜40歳が対象です。
- 筋肉の増え方や長期の効果は分からない。どの研究も数日以内の変化しか見ていません。運動後のマッサージを続けると、数か月後の筋肉の増え方や筋力の伸びが変わるのか(良い方にも悪い方にも)は、ここからは言えません。⑥で見られた炎症の信号の変化も、長期的に筋肉にとって良いのかどうかまでは調べられていません。
- どれも少人数。①の11試験は15〜30人、⑤は60人、⑥は11人です。①の試験の多くは肘やふくらはぎなど1か所の筋肉の実験です。
- 危険の頻度は分からない。⑦は1人の症例報告で、自転車の運動とマッサージガンのどちらがどれだけ関わったのか、どのくらいの割合で起きるのかは分かりません。逆に、ほかの試験で重い副作用が報告されていないことも、安全の証明にはなりません。
- ⑥は要旨の情報しか使っていない。⑥は全文が有料で、運動の内容や研究費・利益相反は確認できていません。ほかの6本は、利益相反なしと申告しています(研究費は①が中国の公的助成など、④がドイツ連邦スポーツ科学研究所、⑦が李嘉誠基金会、②⑤は特定の研究費なし)。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- マッサージは「痛みを和らげる」目的なら試す価値はある:①②③とも、筋肉痛は軽くなる方向でした。ただし思い込みの影響を除けておらず、どれだけ軽くなるかも研究によって大きく違います。「受けると気持ちが楽になる」程度に考えておくのが無難だと考えられます。
- 「マッサージで筋力の戻りが早くなる」とは言い切れない:②では筋力・跳ぶ力・走る速さに差がなく、①でも筋力の差が有意だったのは72時間後だけでした。次の筋トレで扱える重さが戻るかどうかは、マッサージよりも日数で考えるほうが確実かもしれません。
- 筋膜ローラーは、回復よりウォーミングアップ寄り:④の著者らは、回復の道具というより運動前の準備として使う根拠のほうがあるとしています。以前このブログで書いた「運動後に5分使うと張りや凝り感が軽くなり」は、⑤で痛みに差がなく、機器で測った張りや硬さも3群の差が出たのは硬さの2日目だけでした。少なくとも今回読んだ資料からは、はっきりした裏付けは見つかりませんでした。
- マッサージガンは「弱めに・短めに」:⑤では痛みに差がなく、⑦のような重い症例も報告されています。冒頭の注意書きにある症状が出たら使用をやめて受診してください。他人に当ててもらうときも、強さは自分で調整できるようにしておくほうが安心です。
- 「乳酸を流す」ためにほぐす必要はない:⑥では筋肉の中の乳酸の量は変わりませんでした。何もしなくても、時間がたてば筋肉痛は和らいでいくことが、⑤の「何もしない群」の推移からも分かります。
- 時間とお金との兼ね合いで決める:効果の大きさがはっきりしない以上、マッサージは「好きで続けられるなら取り入れる」もの、と位置づけるのが現実的だと考えられます。
なお、筋肉痛の感じ方やマッサージの受け止め方には個人差があります。
まとめ
「筋トレ後のマッサージで筋肉痛は軽くなるのか」について、今回読んだ資料からは、次のように整理できます。
- 人の手によるマッサージは、運動後の筋肉痛を軽くする方向だと報告されています(①②③)。①では運動の24〜72時間後に差があり、運動の直後には差がありませんでした。
- 筋力・跳ぶ力・走る速さ・疲れた感じへの影響は、はっきりしませんでした(②)。
- 筋膜ローラーの効果は小さく(④)、筋膜ローラーとマッサージガンを3日間使った試験では、何もしない場合と痛みに差がありませんでした(⑤)。
- マッサージで筋肉の中の乳酸の量は変わらなかったと報告されています(⑥)。マッサージガンのあとに重い横紋筋融解症が起きた症例もあります(⑦)。
- どれも少人数の海外の研究で、思い込みの影響を取り除けていません。
「マッサージは意味がない」とも「マッサージで回復が早まる」とも、資料からは言い切れません。現時点では、筋肉痛を少し和らげる可能性はあるが、効果の大きさははっきりせず、筋力の戻りを早める根拠は弱い。自分でほぐす道具では、さらに差が小さい、というのが資料から言える範囲だと考えられます。
出典(一次資料)
- Guo J, Li L, Gong Y, Zhu R, Xu J, Zou J, Chen X. Massage Alleviates Delayed Onset Muscle Soreness after Strenuous Exercise: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Physiol. 2017;8:747. doi:10.3389/fphys.2017.00747 全文(PMC5623674)
- Davis HL, Alabed S, Chico TJA. Effect of sports massage on performance and recovery: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000614. doi:10.1136/bmjsem-2019-000614 全文(PMC7228568)
- Dupuy O, Douzi W, Theurot D, Bosquet L, Dugué B. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. Front Physiol. 2018;9:403. doi:10.3389/fphys.2018.00403 全文(PMC5932411)
- Wiewelhove T, Döweling A, Schneider C, Hottenrott L, Meyer T, Kellmann M, Pfeiffer M, Ferrauti A. A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery. Front Physiol. 2019;10:376. doi:10.3389/fphys.2019.00376 全文(PMC6465761)
- Szajkowski S, Pasek J, Cieślar G. Foam Rolling or Percussive Massage for Muscle Recovery: Insights into Delayed-Onset Muscle Soreness (DOMS). J Funct Morphol Kinesiol. 2025;10(3):249. doi:10.3390/jfmk10030249 全文(PMC12286022)
- Crane JD, Ogborn DI, Cupido C, Melov S, Hubbard A, Bourgeois JM, Tarnopolsky MA. Massage therapy attenuates inflammatory signaling after exercise-induced muscle damage. Sci Transl Med. 2012;4(119):119ra13. doi:10.1126/scitranslmed.3002882 要旨(Europe PMC)
- Chen J, Zhang F, Chen H, Pan H. Rhabdomyolysis After the Use of Percussion Massage Gun: A Case Report. Phys Ther. 2021;101(1):pzaa199. doi:10.1093/ptj/pzaa199 全文(PMC7846179)