この記事の要点
- 肘を曲げる筋肉をわざと傷めたあと、筋肉痛が出ている2日後・4日後に同じ運動をもう一度行った実験(①)では、筋肉の傷みの悪化も回復の遅れも見られず、6日間続けて同じ運動を行った実験(②)でも、傷みや炎症が増えた様子は見られませんでした。
- ただし、これらの実験では最初の運動のあと数日間、筋力が落ちていました(①〜③)。①では、2回目・3回目の運動の直後も、筋力は1回目の直後と同じ水準まで下がっていました。
- 筋肉痛の時期に軽く動かすと、その直後は痛みがおよそ4割和らいだものの、7日間の回復の早さは動かさなかった腕と変わらなかったという実験があります(④)。別の実験(③)でも、著者らは軽い運動の効果を「最小限」と結論しています。
- 太ももの筋肉を傷めた実験(⑤)では、膝の角度を感じ取る感覚が運動後48時間まで鈍っていたと報告されています。ケガが増えるかどうかまでは調べられていません。
- いずれも少人数の海外の実験室での研究で、ほとんどが肘を曲げる筋肉だけの運動です。「筋肉痛でもいつもどおり鍛えて大丈夫」と言い切れる段階ではありません。
筋肉痛と思っていても、別の問題のことがあります
関節の痛み、動かさなくてもずきずきする痛み、急に「ブチッ」とした感覚のあとの痛み、強い腫れ、尿の色が極端に濃いといった場合は、通常の筋肉痛とは別の問題の可能性もあるとされています。運動を休み、医療機関に相談してください。この記事は、通常の筋肉痛の範囲の話です。
前日の筋トレで脚がパンパン。今日も予定どおりジムに行くか、それとも休むか。筋トレを続けている人なら、一度は迷ったことがあるはずです。
このブログでも以前、初心者向けの記事のFAQで「強い筋肉痛や関節の痛みがある日は、休むほうが安全です。軽い張り程度であれば、軽い負荷で動かすのは問題ありません」と書き、脚のトレーニングの記事では「筋肉痛の最中に同部位を高強度で鍛えるのは避け、ウォーキングや軽い自転車などの低強度運動で血流を促すと回復がスムーズです」と書きました。ただ、どちらも根拠となる研究は示していませんでした。
この記事では、「筋肉痛のときに筋トレをすると、筋肉の傷みは悪化するのか」「軽く動かすと回復は早まるのか」を、海外の研究6本で確かめます。
前提として、運動の翌日から数日後に出る筋肉痛は「遅発性筋肉痛」と呼ばれ、とくに筋肉が引き伸ばされながら力を出す動き(重りをゆっくり下ろす、坂を下るなど)の後に起こりやすいとされています。以下の実験の多くは、この動きで筋肉をわざと傷めてから調べています。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Nosaka K, Newton M. "Repeated eccentric exercise bouts do not exacerbate muscle damage and repair." J Strength Cond Res 2002;16(1):117-122 | 肘を曲げる筋肉を傷めたあと、2日後と4日後に同じ運動を繰り返した腕と、1回だけの腕を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ② | Chen TC, Hsieh SS. "Effects of a 7-day eccentric training period on muscle damage and inflammation." Med Sci Sports Exerc 2001;33(10):1732-1738 | 男子大学生22人。肘を曲げる筋肉を傷めたあと、同じ全力の運動を6日間続けた群と、続けなかった群を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ③ | Saxton JM, Donnelly AE. "Light concentric exercise during recovery from exercise-induced muscle damage." Int J Sports Med 1995;16(6):347-351 | 男性8人。腕の筋肉を傷めたあと4日間、軽めの運動を行った条件と、行わなかった条件を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ④ | Zainuddin Z, Sacco P, Newton M, Nosaka K. "Light concentric exercise has a temporarily analgesic effect on delayed-onset muscle soreness, but no effect on recovery from eccentric exercise." Appl Physiol Nutr Metab 2006;31(2):126-134 | 14人。左右の腕の筋肉を時期をずらして傷め、片腕だけ1〜4日後にごく軽い曲げ伸ばしを行い、左右の回復を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑤ | Torres R, Vasques J, Duarte JA, Cabri JM. "Knee proprioception after exercise-induced muscle damage." Int J Sports Med 2010;31(6):410-415 | 若い男性14人。太ももの前の筋肉を傷めたあと、膝の角度や力の入れ具合を感じ取る感覚を4日間測った | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑥ | Dupuy O, et al. "An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis." Front Physiol 2018;9:403 | 運動後の回復法(軽い運動、ストレッチ、マッサージなど)を比べた99研究の統合分析 | 全文無料(PMC5932411) |
①〜⑤は全文が有料のため、要旨に書かれた数値だけを使っています。⑥のみ全文を確認し、数値は本文の表1から取りました。
設計──「わざと傷めてから、もう一度鍛える」実験
①〜④はいずれも、次のような手順をとっています。
- まず筋肉をわざと傷める:重りに引っ張られながら肘をゆっくり伸ばす動きを全力に近い力で繰り返し、筋肉痛と筋力の落ち込みを起こします。
- 筋肉痛の時期に何かをする:同じ運動を繰り返す(①②)か、軽い運動をする(③④)。
- 何もしなかった場合と比べる:②は別の人のグループと、①③④は同じ人の反対側の腕と比べています。
- 筋肉の傷みと回復の指標を追う:関節を動かさずに出せる最大の筋力、肘の曲がり具合、腕の太さ(腫れ)、筋肉痛、血液中の筋肉由来の酵素(クレアチンキナーゼ)など。
つまり、ここで確かめているのは「筋肉痛のときに鍛えると、傷みが悪化したり回復が遅れたりするか」です。数か月後に筋肉がどれだけ増えたかは、どの実験も測っていません。
結果①──筋肉痛の時期に同じ運動をしても、傷みは悪化しなかった(①②)
①は横浜市立大学(当時)に所属していた研究者を筆頭とする研究です。片方の腕は、肘を曲げる筋肉の運動(関節を動かさずに出せる最大の力の50%のダンベルで、引き伸ばされながら耐える動きを10回×3セット)を1回だけ行いました。2週間後、反対の腕で同じ運動を行い、さらに2日後と4日後にも同じ運動を繰り返しました。
②は台北体育学院(現・台北市立大学)の研究で、男子大学生22人をくじ引きで2群(12人・10人)に分けました。両群とも、利き腕ではない側の肘を曲げる筋肉で、専用の機械を使った全力の運動を30回行い、その後12人の群だけが同じ運動を6日間続けて行いました。
| 研究 | 筋肉痛の時期にしたこと | 結果(要旨より) |
|---|---|---|
| ① | 2日後・4日後に同じ運動 | 運動直後の変化を除くと、筋力・肘の曲がり具合・筋肉痛・血液中の酵素の変化は、1回だけの腕と有意差なし。著者は「傷みを悪化させず、回復の過程にも影響しなかった」と結論 |
| ① | (同上) | 2回目・3回目の運動の直後も、筋力は1回目の直後と同じ水準まで低下した |
| ② | 同じ全力の運動を6日間連続 | 2日目〜7日目の運動で、傷みが増えたことを示す指標は見られなかった。炎症の指標も悪化しなかった |
②の著者は、最初の運動から24時間後には、筋肉に「慣れ」の反応が起きている可能性があるとしています。同じ運動を繰り返すと筋肉が傷みにくくなる現象は以前から知られており、このブログでも別の記事で扱いました。
一方で、①〜③の要旨では、最初の運動のあと数日にわたって筋力が落ちていたことが報告されています。筋肉痛の時期は、出せる力そのものが落ちていると考えられます。傷みが悪化しないことと、いつもどおりの重さが扱えることは別の話です。
結果②──軽く動かすと痛みは一時的に和らぐが、回復は早まらなかった(③④⑥)
③はオックスフォード・ブルックス大学(イギリス)の研究で、男性8人が腕の筋肉を傷めたあと、4日間、軽めの運動(筋肉を縮めながら力を出す動きを10回×5セット)を行いました。④はエディスコーワン大学(オーストラリア)の研究で、①の筆頭の研究者が共著者に入っています。14人が2〜4週間あけて左右の腕の筋肉を1本ずつ傷め、片方の腕だけが1〜4日後にほとんど力を入れない曲げ伸ばしを600回行いました。
| 研究 | 結果(要旨より) |
|---|---|
| ③ | 軽い運動をした条件では、血液中の酵素の上がり方が小さく、肘を深く曲げた角度での筋力の戻りが早かった。筋肉痛は2日後に一時的に和らいだ。そのほかの指標には影響なし。著者は「実用上、効果は最小限」と結論 |
| ④ | 軽い運動の直後に、筋肉痛と押したときの痛みがそれぞれ約40%低下。同時に筋力は約15%下がり、肘の動く範囲は約5度広がった(いずれも小さいが有意) |
| ④ | 運動後7日間の変化(筋力・動く範囲・腕の太さ・痛み・血液中の酵素)は、軽い運動をした腕としなかった腕で有意差なし。著者は「一時的な痛みの緩和にはなるが、回復には影響しない」と結論 |
⑥はポワティエ大学(フランス)の研究者らによる99研究の統合分析で、運動の後に行う回復法ごとに、筋肉痛への影響を比べています。数値は「標準化平均差」(研究ごとに違う物差しをそろえて比べた値。マイナスが大きいほど筋肉痛が軽い)です。
| 回復法(表1) | 人数(実験群の数) | 筋肉痛への影響 | 疲れた感じへの影響 |
|---|---|---|---|
| 軽い運動 | 90人(8群) | −0.94(−1.61〜−0.28)有意 | 0.64(−0.43〜1.70)有意差なし |
| ストレッチ | 67人(5群) | 0.15(0.00〜0.29)有意差なし | −0.21(−1.04〜0.62)有意差なし |
| マッサージ | 158人(14群) | −2.26(−3.05〜−1.47)有意 | −2.55(−3.49〜−1.62)有意 |
軽い運動は、全体としては筋肉痛を軽くする方向でした。ただし著者らは考察で、軽い運動の効果は運動後の短い時間に限られるとして④を引用しています。また、⑥が集めたのは運動の直後などに1回だけ行う回復法で、何日にもわたって繰り返す方法は対象から外されています。「筋肉痛の日に軽く鍛える」こととは、同じではありません。著者らは利益相反なしと申告しています。
結果③──筋肉痛の時期は、関節の位置の感覚が鈍っていた(⑤)
⑤はリスボン工科大学(現・リスボン大学)の研究で、若い男性14人が、太ももの前の筋肉を、最大の力の60%を目安に引き伸ばされながら耐える動きを、続けられなくなるまで繰り返しました。その後、膝の感覚を4日間測っています。
| 感覚 | 結果(要旨より) |
|---|---|
| 膝の角度を再現する感覚(膝を30度・70度に曲げた位置) | 運動後48時間まで有意に低下 |
| 力の入れ具合を再現する感覚 | 運動後48時間まで有意に低下 |
| 膝が動かされたことに気づく感覚 | 運動後1時間(30度)と24時間(70度)だけ有意に低下 |
著者らは、筋肉の中で長さや張力を感じ取る器官の働きが乱れている可能性を挙げています。この研究はケガの発生そのものは調べていません。ただ、高重量で正確なフォームが求められる種目では、感覚が鈍っている可能性を頭に置いておく材料にはなると考えられます。
この研究が言えないこと
- 日本人集団のデータではない。②は台湾、③はイギリス、④はオーストラリア、⑤はポルトガルの研究チームです。⑥はフランスの研究者らによる統合分析で、元になった99研究の国は今回確認していません。①は横浜市立大学(当時)の研究者が筆頭ですが、要旨には参加者の国籍の記載がありません。
- ほとんどが「肘を曲げる筋肉」だけの実験室の運動。①〜④は腕の筋肉1か所、⑤は太ももの前の筋肉1か所です。スクワットやベンチプレスのように複数の関節と筋肉を使う種目や、全身のトレーニングで同じ結果になるかは分かりません。
- 筋肉の増え方は測っていない。どの実験も、傷みと回復の指標を数日〜1週間追っただけです。筋肉痛の日に鍛えたほうが、休んだ場合より数か月後の筋肉が増えるか・減るかは、ここからは言えません。
- ケガが増えるかどうかは分からない。⑤で鈍っていたのは感覚の測定値で、ケガの発生は調べていません。逆に、①②で傷みが悪化しなかったことも、「ケガをしない」ことの証明にはなりません。
- どれも少人数。②は22人、③は8人、④⑤は14人です。①は要旨に人数の記載がありません。
- 筋トレに慣れた人のデータではない。多くは、慣れない動きで筋肉をわざと傷める設計です。長年鍛えている人が、普段のメニューで出る程度の筋肉痛の場合に当てはまるかは分かりません。
- 要旨の情報しか使っていない。①〜⑤は全文が有料で、③の「軽めの運動」の具体的な重さや、①の参加者の内訳などは確認できていません。研究費や利益相反の記載も、要旨と書誌情報からは確認できませんでした(⑥は利益相反なしと申告)。
- ⑥の「軽い運動」は、筋肉痛の日の筋トレとは別物。⑥は運動直後などに1回だけ行う回復法の分析で、運動の種類もさまざまです。
- 通常の筋肉痛以外の痛みは区別していない。関節の痛みや肉離れなど、ほかの原因による痛みには当てはまりません。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 「筋肉痛の日に鍛えると傷みが悪化する」とは言い切れない:少なくとも①②の実験室の条件では、筋肉痛の時期に同じ運動を繰り返しても、傷みの悪化は見られませんでした(①では回復の遅れもなし)。筋肉痛があるだけで、必ずしもトレーニングを全部取りやめる必要はないのかもしれません。
- ただし、力は落ちている前提で組む:①〜③のとおり、筋肉痛の時期は出せる力が落ちています。いつもの重さや回数にこだわると、フォームが崩れやすくなることも考えられます。痛む部位は重さを下げる、痛まない部位を鍛える日に回す、といった調整が現実的だと考えられます。
- 軽く動かすのは「痛みを和らげる」程度に考える:④では軽い運動の直後に痛みが和らぎましたが、回復そのものは早まりませんでした。以前このブログで書いた「低強度運動で血流を促すと回復がスムーズ」は、④では回復の早さに差がなく、③でも著者らが効果を「最小限」と結論しており、今回読んだ資料からははっきりした裏付けが見つかりませんでした。痛みが一時的に楽になる、という範囲で受け取るのがよさそうです。
- 高重量の種目や複雑な種目は慎重に:⑤のとおり、筋肉痛の時期は関節の位置の感覚が鈍っている可能性が報告されています。ケガが増えるかは分かっていませんが、高重量の種目では、いつも以上に重さとフォームに注意を払う理由にはなります。
- 痛みの種類を見分ける:筋肉を押したり伸ばしたりしたときの鈍い痛みと、関節の痛みや鋭い痛みは別物です。冒頭の注意書きにあるような症状があるときは、休んで医療機関に相談してください。
なお、筋肉痛の感じ方や回復の早さには個人差があります。
まとめ
「筋肉痛のときに筋トレしてもいいか」について、今回読んだ資料からは、次のように整理できます。
- 筋肉痛の時期に同じ運動を繰り返しても、筋肉の傷みが悪化する様子は見られなかったと報告されています(①②)。①では回復の遅れも見られませんでした。
- ただし筋肉痛の時期は筋力が落ちており(①〜③)、関節の位置の感覚も鈍っていたという報告があります(⑤)。
- 軽く動かすと痛みは一時的に和らぐものの、回復は早まらなかったとされています(③④)。統合分析では、運動後の軽い運動は全体として筋肉痛を軽くする方向でした(⑥)。
- いずれも少人数の海外の研究で、ほとんどが腕の筋肉1か所の実験です。長期の筋肉の増え方やケガのリスクは調べられていません。
「筋肉痛があるから必ず休む」も「筋肉痛でもいつもどおり鍛える」も、資料からは言い切れません。現時点では、傷みが悪化する心配は思われているほど大きくないかもしれないが、力と感覚は落ちているので重さを調整する、というのが資料から言える範囲だと考えられます。
出典(一次資料)
- Nosaka K, Newton M. Repeated eccentric exercise bouts do not exacerbate muscle damage and repair. J Strength Cond Res. 2002;16(1):117-122. doi:10.1519/1533-4287(2002)016<0117:reebdn>2.0.co;2 要旨(Europe PMC)
- Chen TC, Hsieh SS. Effects of a 7-day eccentric training period on muscle damage and inflammation. Med Sci Sports Exerc. 2001;33(10):1732-1738. doi:10.1097/00005768-200110000-00018 要旨(Europe PMC)
- Saxton JM, Donnelly AE. Light concentric exercise during recovery from exercise-induced muscle damage. Int J Sports Med. 1995;16(6):347-351. doi:10.1055/s-2007-973018 要旨(Europe PMC)
- Zainuddin Z, Sacco P, Newton M, Nosaka K. Light concentric exercise has a temporarily analgesic effect on delayed-onset muscle soreness, but no effect on recovery from eccentric exercise. Appl Physiol Nutr Metab. 2006;31(2):126-134. doi:10.1139/h05-010 要旨(Europe PMC)
- Torres R, Vasques J, Duarte JA, Cabri JM. Knee proprioception after exercise-induced muscle damage. Int J Sports Med. 2010;31(6):410-415. doi:10.1055/s-0030-1248285 要旨(Europe PMC)
- Dupuy O, Douzi W, Theurot D, Bosquet L, Dugué B. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. Front Physiol. 2018;9:403. doi:10.3389/fphys.2018.00403 全文(PMC5932411)