研究ノート・筋肉痛の慣れ

同じ筋トレを2回すると筋肉痛は軽くなる?大学生と部活選手

公開日: 2026-09-26 · 約7分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

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この記事の要点

  • 筋トレ経験のない大学生10人と、関東大学バスケットボール連盟に所属する大学バスケットボール選手11人に、フライホイール(円盤状のおもりの慣性を利用し、伸ばされながら力を出す局面で強い負荷がかかる器具)を使ったスクワット運動(10回×10セット)を2週間隔で2回行ってもらいました。
  • 1回目の運動後、筋トレ未経験の大学生は太もも前面に筋肉痛が出てジャンプ力も落ちましたが、バスケットボール選手はどちらもほとんど変化しませんでした。
  • 2週間後の2回目では、大学生の筋肉痛は1回目より軽くなりました(平均2.7→1.4、10cm中の自己申告値)。これは「同じ負荷の運動を繰り返すと2回目以降はダメージが軽くなる」という現象(反復ボウト効果)にあたります。
  • 一方でバスケットボール選手は、1回目からもともと筋肉痛が少なく、2回目との差もありませんでした。フライホイール自体は選手も未経験でしたが、日頃のジャンプ動作の蓄積が影響した可能性があります。

「筋トレを始めた直後は筋肉痛がひどいのに、しばらく続けると同じ強度でも痛くなりにくくなる」──筋トレをしたことがある人なら一度は体感したことがあるはずです。この現象は運動生理学で「反復ボウト効果」と呼ばれ、一度目のダメージを受けた筋肉が、二度目の同じ運動に対して抵抗力を持つようになることを指します。今回読むのは、帝京平成大学・法政大学・明治学院大学の研究チームが、この現象を運動経験のない大学生と、大学バスケットボール選手という対照的な2つのグループで比べた2024年の論文です。無料で全文が読めます。

読む一次資料

項目内容
論文Shimizu T, Tsuchiya Y, Ueda H, Izumi S, Ochi E.
"Effects of single and repeated bouts of flywheel exercise on jump performance and muscle damage in athletes and non athletes."
BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2024;16:8. doi:10.1186/s13102-023-00785-2
実施機関帝京平成大学・法政大学・明治学院大学(いずれも日本の大学)
研究の種類介入研究(同一プロトコルを2回実施する反復測定デザイン)。倫理審査は帝京平成大学倫理委員会承認
入手性オープンアクセスで全文閲覧可能(PMC10763137)

設計──未経験の大学生10人とバスケ部員11人が、同じ運動を2週間隔で2回

参加したのは、1年以上筋力トレーニングをしていない大学生10人(19.5±1.1歳・身長171.0±6.6cm・体重67.9±9.7kg)と、関東大学バスケットボール連盟に所属する現役選手11人(20.3±0.9歳・身長183.1±6.9cm・体重76.7±8.5kg・競技歴6年以上、シーズン中は週1回の筋力トレーニングを実施)です。選手側もフライホイール運動自体は全員が未経験でした。

運動は、フライホイール装置(kBOX4)を使ったスクワット10回×10セット(計100回)。これを1回目(FW1)として実施し、2週間後にまったく同じプロトコルを2回目(FW2)として再度実施しました。運動前(Pre)・直後(Post)・1日後(Day1)・3日後(Day3)に、太もも前面3か所の圧痛(筋肉痛を0〜10cmの自己申告で評価)、等尺性最大随意収縮トルク(MVCトルク=膝を伸ばす最大筋力)、複数種類のジャンプの高さを測定しました。事前のサンプルサイズ計算では、群間比較に最低20人が必要とされており、21人の参加はその条件をぎりぎり満たしています。

ベースラインの体力は両群で明確に違いました。MVCトルクは大学生81.7±12.4Nmに対し選手126.3±16.2Nm(p<0.01)、スクワットジャンプは大学生33.4±4.8cmに対し選手38.4±3.9cm(p=0.02)と、選手のほうが一貫して高い値でした。

結果① 筋肉痛は大学生だけ「2回目に軽くなった」。選手はもともと少ない

群1回目(FW1)の筋肉痛2回目(FW2)の筋肉痛差
大学生(未経験)2.7±1.71.4±6.1有意に減少(p<0.05, d=0.84)
バスケ部員0.9±0.70.8±1.6有意差なし

論文本文・太もも前面3筋の平均値(0〜10cmの自己申告スケール)より。1回目時点で大学生と選手の間には有意差があった(p<0.05, d=1.37)。

数値の読み取りには注意が必要な点があります。大学生のFW2の標準偏差(6.1)が平均値(1.4)より大きく、0〜10cmのスケールとしては不自然な大きさです。論文本文の記載をそのまま載せていますが、個人差が非常に大きかった(一部の人はほとんど痛みがなかった)可能性があり、平均値だけで「軽くなった」と単純に捉えないほうが良さそうです。

結果② ジャンプ力の低下も大学生だけ。選手は1回目から変化なし

スクワットジャンプの高さは、大学生はFW1の運動直後・1日後・3日後のすべてで、運動前より有意に低下しました(運動前33.4±4.8cm→直後27.2±6.6cm・1日後24.1±8.1cm・3日後29.3±6.6cm)。一方選手はFW1でもFW2でも、ジャンプの高さに有意な低下は見られませんでした。カウンタームーブメントジャンプ・ドロップジャンプ・リバウンドジャンプでも同様の傾向でした。

FW2(2回目)では、大学生でも運動直後の有意な低下が確認されませんでした。1回目で受けたダメージへの適応が、2回目の運動でジャンプ能力を守る方向に働いたと考えられます。

結果③ 最大筋力(MVCトルク)は両群とも落ちるが、大学生のほうが大きく落ちる

等尺性のMVCトルクは、大学生・選手ともにFW1の運動後に有意に低下しましたが、低下の幅は大学生のほうが大きく、選手より低い値になりました。運動中の主観的なきつさ(自覚的運動強度)は両群でほぼ同じ(FW1のピークは大学生19.2±1.5、選手19.6±0.9)で、選手も大学生も限界に近い強度で運動をこなしていたことがうかがえます。にもかかわらず筋肉痛やジャンプ低下に差が出た点が、この研究の核心です。

この研究が言えないこと

  1. 参加者は男性のみ、合計21人(大学生10人・選手11人)です。事前のサンプルサイズ計算の下限(20人)はぎりぎり満たしていますが、決して大きな試験ではありません。
  2. フライホイールという特殊な器具を使った運動で、一般的なバーベル・ダンベルのスクワットとは負荷のかかり方が異なります。円盤の慣性を利用するため、伸ばされながら力を出す局面(エキセントリック局面)に通常より強い負荷がかかる設計です。ジムでの通常の筋トレにそのまま当てはめることはできません。
  3. 「選手だから筋肉痛が少ない」のか「バスケットボール自体で日頃から似た動作(ジャンプの着地など)を繰り返しているから」なのかは、この研究だけでは区別できません。選手もフライホイール自体は未経験でした。
  4. 筋肉痛は自己申告(圧痛への0〜10cmの評価)のみで、血液検査(筋損傷の指標となる酵素など)は測定していません。客観的な筋損傷の程度までは確認できていません。
  5. 間隔は2週間固定です。もっと短い間隔(数日)や長い間隔(1か月以上)でも同じ効果が続くかは、この研究からは分かりません。
  6. 対象は大学生年代の男性に限られます。中高年や女性、運動経験がまったく異なる集団に同じ結果が当てはまるかは分かりません。
  7. 「筋肉がついたか」は調べていません。この研究が見ているのはあくまで一時的なダメージからの回復であり、筋肥大や筋力の長期的な向上を示したものではありません。
  8. 資金源・利益相反は論文の本文からは確認できませんでした。謝辞・COI開示に関する記載は本文中に見当たりません。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

「筋トレを始めた最初の数回は筋肉痛がひどいが、続けているうちに同じメニューでも痛みにくくなる」という体感は、多くの実践者が共有しているものだと思います。今回の研究は、それを大学生とバスケットボール選手という対照的な集団で、数値として裏づけた形です。実践的な示唆としては、新しい種目や久しぶりの運動を始めるときは、最初の1〜2回は強い筋肉痛やパフォーマンス低下が起きうると見込んでおき、無理に追い込みすぎないことが挙げられます。逆に言えば、同じ種目を継続していれば、身体はダメージへの耐性を獲得していくとも言えそうです。ただしこの適応は種目やフォームが変わればまたゼロからになる可能性もある点には注意してください。

まとめ

出典(一次資料)

  1. Shimizu T, Tsuchiya Y, Ueda H, Izumi S, Ochi E. Effects of single and repeated bouts of flywheel exercise on jump performance and muscle damage in athletes and non athletes. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2024;16:8. doi:10.1186/s13102-023-00785-2 全文(PMC10763137)

よくある質問

「反復ボウト効果」とは何ですか?

一度筋肉にダメージを与える運動をすると、同じ運動を再び行ったときに筋肉痛や筋力低下などのダメージが軽くなる現象です。今回の研究では、筋トレ未経験の大学生でこの効果がはっきり確認されました。

バスケットボール選手のほうが筋肉痛になりにくいのはなぜですか?

この研究だけでは断定できません。選手はフライホイール運動自体は未経験でしたが、日頃のバスケットボールの練習(ジャンプの着地や切り返しなど)で、似た種類の筋肉のダメージに慣れていた可能性があります。

この研究は一般的なバーベルスクワットにも当てはまりますか?

そのまま当てはまるとは言えません。フライホイールは円盤の慣性を利用し、伸ばされながら力を出す局面に通常より強い負荷がかかる特殊な器具です。一般的なバーベル・ダンベルを使ったスクワットとは負荷のかかり方が異なります。

反復ボウト効果はどのくらいの間隔で起きますか?

この研究では2週間の間隔で確認されましたが、もっと短い間隔や長い間隔でも同じように効果が続くかどうかは、この研究からは分かりません。

筋肉痛が軽くなることと、筋肉が増えることは同じですか?

違います。この研究が調べたのは一時的な運動ダメージからの回復であり、筋肉量や筋力の長期的な向上(筋肥大)を示したものではありません。

女性や中高年にも同じ結果が当てはまりますか?

分かりません。この研究の参加者は大学生年代の男性21人のみで、女性や中高年を対象にはしていません。

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