この記事の要点
- 男子学生110人が肘を曲げる筋肉に負荷をかけた実験(①)では、運動の回数を12回・24回・60回と変えると、筋力の落ち込みや血液中の筋肉由来の酵素は24回・60回のほうが12回より大きく変わったのに、押したときや曲げたときの筋肉痛の強さには差が出ませんでした。著者は「筋肉痛は筋肉の傷み具合をよく映さない」と結論しています。
- 8週間の脚のトレーニングで、最初に筋肉を傷めた群と、3週間かけて少しずつ慣らして傷みを避けた群を比べた実験(②)では、筋肉の太さの増え方も筋力の伸び(25%と26%)も同じでした。
- 若い男性10人が10週間筋トレをした研究(③④)では、筋肉の傷みが最も大きかった1週目には、筋肉を作る反応と最終的な筋肉の増え方に関係がなく、傷みが落ち着いた3週目・10週目になって初めて強い関係が見られました。また、始めて3週目の「筋肉が太くなった」ように見える変化には、むくみが混ざっていた可能性が報告されています。
- この研究チームの総説(⑤)は、筋肉の傷みは筋肉の増加を生み出す過程でも、後押しする過程でもないと結論しています。
- ただし、いずれも少人数の海外の研究で、筋肉痛の強さと数か月後の筋肉の増え方を直接比べた試験はほとんどありません。「筋肉痛は不要」と言い切れる段階ではありません。
「筋肉痛が来ないと効いていない」「筋肉痛がない日は追い込みが足りなかった証拠」。ジムでも、筋トレの解説でも、よく聞く言い方です。筆者自身も、若いころは翌日の筋肉痛を手応えのように感じていました。
このブログでは以前、「筋肉痛の原因は乳酸」説を扱った記事のFAQで、「筋肉痛の強さと筋力・筋量の増加は必ずしも比例しない」と書きました。ただ、そのときは個別の実験の数値までは示していませんでした。
この記事では、「筋肉痛がないと筋肉は増えないのか」を、海外の研究を中心に一次資料で読み、分かっていることと分かっていないことを整理します。
前提として、運動の翌日から数日後に出る筋肉痛は「遅発性筋肉痛」と呼ばれ、慣れない運動、とくに筋肉が引き伸ばされながら力を出す動き(重りをゆっくり下ろす、階段や坂を下るなど)の後に起こりやすいとされています(⑥)。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Nosaka K, et al. "Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage." Scand J Med Sci Sports 2002;12(6):337-346 | 男子学生110人が、肘を曲げる筋肉を引き伸ばされながら全力で耐える動作を12回・24回・60回のいずれか行い、筋肉痛とほかの指標を4日間比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ② | Flann KL, et al. "Muscle damage and muscle remodeling: no pain, no gain?" J Exp Biol 2011;214(Pt 4):674-679 | 最初に筋肉を傷めた群と、3週間かけて慣らして傷みを避けた群が、同じ仕事量の脚のトレーニングを8週間行い、筋肉の太さと筋力を比べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ③ | Damas F, et al. "Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophy only after attenuation of muscle damage." J Physiol 2016;594(18):5209-5222 | 若い男性10人が10週間筋トレをし、1週目・3週目・10週目に筋肉の一部を採取して、筋肉の傷みと筋肉を作る反応を測った | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ④ | Damas F, et al. "Early resistance training-induced increases in muscle cross-sectional area are concomitant with edema-induced muscle swelling." Eur J Appl Physiol 2016;116(1):49-56 | 筋トレ未経験の若い男性10人の10週間で、超音波で測った太ももの筋肉の太さに、むくみがどれだけ混ざっているかを調べた | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑤ | Damas F, Libardi CA, Ugrinowitsch C. "The development of skeletal muscle hypertrophy through resistance training: the role of muscle damage and muscle protein synthesis." Eur J Appl Physiol 2018;118(3):485-500 | ③④の研究チームによる総説。筋肉の傷みと筋肉の増加の関係を整理した | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑥ | Hody S, et al. "Eccentric Muscle Contractions: Risks and Benefits." Front Physiol 2019;10:536 | 筋肉を引き伸ばしながら力を出す運動の利点と注意点をまとめた総説 | 全文無料(PMC6510035) |
①〜⑤は全文が有料のため、要旨に書かれた数値だけを使っています。⑥のみ全文を確認しました。
設計──「筋肉痛」と「筋肉の傷み」と「筋肉の増加」は別々に測られている
この話題を読むときに大事なのは、次の3つが別のものとして測られている点です。
- 筋肉痛:本人が感じる痛み。①では、0(痛みなし)〜50mm(非常に痛い)の線に印をつける方法で、押したとき・曲げたとき・伸ばしたときの3通りを記録しています。
- 筋肉の傷み:筋力の一時的な落ち込み、腕の太さ(腫れ)、関節の曲がり具合、血液中の筋肉由来の酵素(クレアチンキナーゼ)など。③では、採取した筋肉を顕微鏡で見て、筋肉の細かい構造の乱れも調べています。
- 筋肉の増加:数週間〜数か月の筋トレの後に、筋肉の断面の大きさや体積がどれだけ増えたか。③では採取した筋線維、④では超音波で測っています(②の測定方法は要旨に記載がありません)。
「筋肉痛がないと増えない」という考えは、筋肉痛=筋肉の傷み=筋肉が増えるきっかけという2段の前提に立っています。以下では、①でこの1段目を、②〜⑤で2段目を確かめます。
結果①──筋肉痛の強さは、筋肉の傷み具合を映すのか(①)
①では、横浜市立大学(当時)に所属していた研究者を筆頭とするチームが、男子学生110人を3つのグループに分け、肘を曲げる筋肉を引き伸ばされながら全力で耐える動作を12回・24回・60回行ってもらいました。
| 指標 | 12回と24回・60回の比較 |
|---|---|
| 筋力、関節の曲がり具合、腕の太さ、血液中の酵素 | 24回・60回のほうがすべて有意に大きく変化し、回復も遅かった |
| 押したときの筋肉痛 | 12回と24回、12回と60回のあいだに有意差なし |
| 曲げたときの筋肉痛 | 12回と24回、12回と60回のあいだに有意差なし |
| 伸ばしたときの筋肉痛 | 12回のほうが有意に低かった |
さらに、押したときの筋肉痛は、ほかのどの指標とも有意な相関がなく、曲げたとき・伸ばしたときの筋肉痛も、相関は弱いもの(相関係数0.32未満)にとどまりました。著者は、筋肉痛は筋肉の傷みや炎症の大きさをよく映さず、傷みの指標が変化しても筋肉痛を伴うとは限らないと結論しています。⑥の総説も、この結果を引いて同じ趣旨を述べています。
つまり、「筋肉痛が強い=筋肉がよく傷んだ」という1段目の前提からして、あまり当てにならないということです。
結果②──筋肉を傷めずに慣らした群でも、筋肉は同じだけ増えたのか(②)
②は、米国の北アリゾナ大学などのチームによる実験です。トレーニングには、モーターで回るペダルに逆らって脚でブレーキをかけるようにこぐ、自転車型の機械が使われました(筋肉を引き伸ばしながら力を出す運動)。参加者は2つの群に分かれています。
- 慣らした群:3週間かけて負荷を少しずつ上げ、目立った筋肉の傷みが出ないようにした
- 慣らさない群:最初にいきなり筋肉を傷める強さの運動をした
そのうえで両群とも、1回20分・週3回・8週間、合計の仕事量をそろえて同じトレーニングを行いました。
| 指標 | 慣らした群 | 慣らさない群 |
|---|---|---|
| 血液中の筋肉由来の酵素 | 基準 | 5倍を超えて高い |
| 最初の筋肉痛・きつさの自己申告 | 少ない | 多い |
| 筋肉の断面の大きさ・体積 | 両群とも有意に増加し、増え方は同じ | |
| 筋力の伸び | 25% | 26% |
| 筋肉の成長に関わる因子の遺伝子の働き | 両群とも同じように増加 | |
著者は、筋肉の作り直し(筋肉が太くなることなど)は、目に見える筋肉の傷みがなくても始まりうると結論しています。要旨には参加者の人数が書かれていないため、この記事では人数を示していません。
結果③──筋肉が傷んでいる時期の「筋肉を作る反応」は、筋肉の増加につながるのか(③④)
③④は、ブラジルのサンパウロ大学を中心とする研究チームが、若い男性10人に10週間の筋トレをしてもらった研究です。③では、トレーニングの1週目・3週目・10週目に、運動の前と24時間後・48時間後に太ももの筋肉を少し採取し、筋肉の傷みと、筋肉のたんぱく質を作る反応(合成)を測りました。
| 時期 | 筋肉の傷み | 運動後の筋肉を作る反応 | その反応と、最終的な筋線維の太さの増加との関係 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 最も大きい | 最も大きい | 関係なし |
| 3週目 | 小さくなった | 1週目より小さい | 強い関係(相関係数 約0.9) |
| 10週目 | さらに小さく、ごくわずか | 3週目と同程度 | 強い関係(相関係数 約0.9) |
筋線維が有意に太くなったのは10週目だけでした。著者は、始めたばかりのころの筋肉を作る反応は、傷みの修復に回っていて筋肉の増加には向かっていないと解釈し、筋肉の増加は「傷みが落ち着いていく中で、運動のたびに起きる合成の積み重ね」によるものだと結論しています。
④は、同じ研究チームによる、同じく筋トレ未経験の若い男性10人・10週間の報告です(③と同じ参加者かどうかは要旨からは確認できません)。超音波で測った太ももの筋肉の断面は、始めて3週目に約2.7%、10週目に約10.4%増えていました。ところが、むくみの目安となる画像の明るさを、断面の増え方で割って比べると、高くなっていたのは3週目だけでした。3週目には血液中の筋肉の傷みの目安(ミオグロビンなど)も高くなっていました。
著者は、筋トレを始めて間もない時期の「筋肉が太くなった」ように見える変化には、筋肉の傷みによるむくみが大きく混ざっている可能性があるとしています。慣れない筋トレの後に「張っている」「太くなった気がする」と感じても、それがそのまま筋肉の増加とは限らないということです。
総説はどうまとめているか(⑤⑥)
⑤は③④の研究チーム自身による総説です。要旨では、次のように整理しています。
- 筋トレを始めて4回目までの筋肉の太さの増加は、主に傷みによる腫れによるもの
- 10回前後で、控えめな筋肉の増加が起こり始める
- 18回前後を過ぎてから、本当の意味での筋肉の増加が見られる
- 大きな傷みを起こさない筋トレでも、傷みを起こす筋トレと同じような筋肉の増加と筋力の伸びが得られる
そのうえで、筋肉の傷みは、筋トレによる筋肉の増加を生み出す過程でも、後押しする過程でもないと結論しています。ただし、③④を行った研究チーム自身による総説であることは、差し引いて読む必要があります。
⑥はベルギーの研究者による総説で、筋肉を引き伸ばしながら力を出す運動について、同じ運動を繰り返すと筋肉が傷みにくくなり、筋肉痛も軽くなる適応が起こることは広く認められていると述べています。また、筋肉痛や一時的な機能の低下は練習やリハビリの進みを妨げやすく、不快な感覚が運動を続ける意欲をそぐこともあるとして、最初は軽めの負荷から少しずつ上げることを勧めています。②の結果も、その根拠の一つとして引用されています。
この研究が言えないこと
- 筋肉痛の強さと、数か月後の筋肉の増え方を直接比べた試験ではない。①は4日間の筋肉痛と傷みの指標の関係、②は傷みの有無と筋肉の増加、③④は傷みと筋肉を作る反応を調べたもので、「筋肉痛が強かった人ほど筋肉が増えたか」をそのまま確かめたものではありません。
- どれも参加者が少ない。③④は10人、②は要旨に人数の記載がありません。①は110人ですが、3つのグループに分かれています。
- 日本人集団のデータではない。②はアメリカ、③④⑤はブラジルの研究チームの研究です。①は横浜市立大学(当時)の研究者が筆頭ですが、要旨には参加者の国籍の記載がありません。
- 若い人、主に男性の結果である。③④は若い男性、①は男子学生が対象でした。女性や中高年、高齢者に同じことが言えるかは分かりません。
- ②は、重りを挙げる筋トレではない。②のトレーニングは自転車型の機械を使った脚の運動で、バーベルやマシンを使った一般的な筋トレとは動きが異なります。
- トレーニング経験の長い人のデータではない。④は筋トレ未経験の人が対象でした。何年も鍛えている人で、筋肉痛の出方と筋肉の増加の関係が同じかどうかは、ここで読んだ資料からは分かりません。
- 「筋肉痛があると筋肉が増えにくい」とも言えない。②では、最初に筋肉を傷めた群も、慣らした群と同じだけ筋肉が増えていました。筋肉痛が出ること自体が悪いと示した研究ではありません。
- ①〜⑤は要旨しか読めていない。全文が有料のため、詳しい数値や、研究費以外の利益相反は確認できていません。④⑤は、ブラジルとカナダの公的な研究費を受けていることが書誌情報に記載されています。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
読んでみて感じたのは、「筋肉痛」は手応えの目安としては、思っていたより当てにならないということです。①では、運動の回数を5倍にして筋力の落ち込みが大きくなっても、押したときの筋肉痛の強さは変わりませんでした。②では、傷みを避けて慣らした群も、同じだけ筋肉が増えていました。
長く続けていると、同じメニューでは筋肉痛がほとんど出なくなります。そこで「効いていない」と不安になり、毎回違う種目に変えたり、限界を超えて回数を増やしたりしたくなることがあります。資料から考えられることを整理すると、次のようになります。
- 筋肉痛が出ないことを、失敗のサインと決めつけない:同じ運動を繰り返すと筋肉が傷みにくくなり、筋肉痛も軽くなるとされています(⑥)。このブログで以前読んだ日本の研究でも、同じ筋トレの2回目は筋肉痛が軽くなっていました。筋肉痛の有無よりも、扱える重さや回数が少しずつ伸びているかを記録して確かめるほうが、目安として分かりやすいと考えられます。
- 始めたばかりの「太くなった気がする」は割り引いて受け取る:④⑤のとおり、始めて数週間の変化にはむくみが混ざっている可能性があると報告されています。
- 新しい種目や久しぶりの運動は、軽めから少しずつ:⑥は、強い筋肉痛が運動を続ける意欲をそぐことがあるとして、段階的に負荷を上げる方法を勧めています。
- 強い痛みが長引くときは無理をしない:通常の筋肉痛は数日で落ち着くとされていますが、腫れが強い、尿の色が濃い、痛みが引かないといった場合は、筋肉痛とは別の問題の可能性もあります。医療機関に相談してください。
なお、筋肉痛を目指さなくてよいとしても、楽な運動で十分という意味ではありません。どの程度の重さや量が必要かは個人差があり、別の研究で検討されています。
まとめ
「筋肉痛がないと筋肉は増えない」という考えについて、今回読んだ資料からは、次のように整理できます。
- 筋肉痛の強さは、筋肉の傷み具合をよく映さないと報告されています(①)。
- 筋肉を傷めないように慣らしてから鍛えた群でも、筋肉の増え方と筋力の伸びは、傷めた群と同じでした(②)。
- 筋肉が大きく傷んでいる時期の「筋肉を作る反応」は筋肉の増加と関係がなく、傷みが落ち着いてからの反応が筋肉の増加と強く関係していました(③)。始めたばかりの変化にはむくみが混ざっているとされています(④⑤)。
- ただし、どれも少人数の海外の研究で、筋肉痛の強さと長期の筋肉の増え方を直接比べた試験ではありません。個人差もあると考えられます。
「筋肉痛は筋肉が増えるための必須条件ではなさそうだ」というのが、現時点で資料から言えることです。筋肉痛の有無よりも、記録を見ながら少しずつ負荷を上げていくことに目を向けたほうが、続けやすいのかもしれません。
出典(一次資料)
- Nosaka K, Newton M, Sacco P. Delayed-onset muscle soreness does not reflect the magnitude of eccentric exercise-induced muscle damage. Scand J Med Sci Sports. 2002;12(6):337-346. doi:10.1034/j.1600-0838.2002.10178.x 要旨(Europe PMC)
- Flann KL, LaStayo PC, McClain DA, Hazel M, Lindstedt SL. Muscle damage and muscle remodeling: no pain, no gain? J Exp Biol. 2011;214(Pt 4):674-679. doi:10.1242/jeb.050112 要旨(Europe PMC)
- Damas F, Phillips SM, Libardi CA, Vechin FC, Lixandrão ME, Jannig PR, Costa LA, Bacurau AV, Snijders T, Parise G, Tricoli V, Roschel H, Ugrinowitsch C. Resistance training-induced changes in integrated myofibrillar protein synthesis are related to hypertrophy only after attenuation of muscle damage. J Physiol. 2016;594(18):5209-5222. doi:10.1113/JP272472 要旨(Europe PMC)
- Damas F, Phillips SM, Lixandrão ME, Vechin FC, Libardi CA, Roschel H, Tricoli V, Ugrinowitsch C. Early resistance training-induced increases in muscle cross-sectional area are concomitant with edema-induced muscle swelling. Eur J Appl Physiol. 2016;116(1):49-56. doi:10.1007/s00421-015-3243-4 要旨(Europe PMC)
- Damas F, Libardi CA, Ugrinowitsch C. The development of skeletal muscle hypertrophy through resistance training: the role of muscle damage and muscle protein synthesis. Eur J Appl Physiol. 2018;118(3):485-500. doi:10.1007/s00421-017-3792-9 要旨(Europe PMC)
- Hody S, Croisier JL, Bury T, Rogister B, Leprince P. Eccentric Muscle Contractions: Risks and Benefits. Front Physiol. 2019;10:536. doi:10.3389/fphys.2019.00536 全文(PMC6510035)