この記事の要点
- 新潟県佐渡市の8,821人の健診データでは、味噌汁を飲む回数が多い人ほど、尿から推定した1日の食塩摂取量がやや多い傾向がありました(毎日は飲まない人9.0g、1日1杯9.3g、2杯以上9.5g)。
- 一方で、味噌汁を飲む回数や味噌の量と血圧の高さとのあいだに、はっきりした関係は見られなかったと、北九州の健診受診者527人の調査と、国民健康・栄養調査の2万5,738人の分析が報告しています。
- 血圧がやや高めの40〜69歳38人が味噌汁を1日2杯(食塩3.8g)8週間飲んだ比較試験では、日中に病院で測る血圧は、塩をほとんど含まない大豆の飲み物を飲んだ人と差がありませんでした。ただし試験に使ったのは、市販の味噌に味噌メーカーが新しくつくった味噌を混ぜた特別なもので、同社が製造・提供しています。
- 普通の醤油と味噌を減塩タイプに6週間取り替えた比較試験(64人)では、全体では血圧に差がなく、40歳以上に限ると下の血圧(拡張期血圧)が6.4mmHg大きく下がっていました。
- いずれも小規模な試験か、ある時点の調査で、味噌汁が脳卒中や心臓病のなりやすさにどう関わるかを確かめた研究ではありません。高血圧で治療中の人や腎臓病の人に当てはまるかも分かっていません。
「味噌汁は塩分が多いから、血圧が気になるなら控えたほうがいい」。健康診断や減塩の説明で、よく聞く話です。
このブログでも、納豆と死亡リスクを読んだ記事で「味噌汁などは塩分が多くなりがちです」と書きました。間違いではないものの、そのときは味噌汁と血圧の関係を調べた研究には当たっていませんでした。
この記事では、日本の研究機関が日本人を対象に調べた研究を中心に、「味噌汁を飲むと血圧は上がるのか」を一次資料で読み、分かっていることと分かっていないことを整理します。
前提として、味噌汁1杯に含まれる食塩は1〜2g程度とされています(④の論文の序論。③の論文は「一般に1杯あたり約1g」と書いています)。②の国民健康・栄養調査の分析では、1品あたりの味噌の量の中央値は男性で9.0gでした。論文に記載のナトリウム量(441mg)から計算すると、食塩にして約1.1gです(筆者計算)。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Wakasugi M, et al. "Associations between the intake of miso soup and Japanese pickles and the estimated 24-hour urinary sodium excretion: a population-based cross-sectional study." Intern Med 2015;54(8):903-910 | 新潟県佐渡市で2013年に健診を受けた19〜97歳の8,821人で、味噌汁・漬物を食べる回数と、尿から推定した1日の食塩摂取量の関係を調べた | 全文無料(J-STAGE) |
| ② | Okada E, et al. "Association between the Portion Sizes of Traditional Japanese Seasonings—Soy Sauce and Miso—and Blood Pressure: Cross-Sectional Study Using National Health and Nutrition Survey, 2012–2016 Data." Nutrients 2018;10(12):1865 | 2012〜2016年の国民健康・栄養調査に参加した20歳以上で、血圧の薬を飲んでいない25,738人について、1品あたりの醤油・味噌の量と血圧の関係を調べた | 全文無料(PMC6316062) |
| ③ | Ito K, et al. "The Effects of the Habitual Consumption of Miso Soup on the Blood Pressure and Heart Rate of Japanese Adults: A Cross-sectional Study of a Health Examination." Intern Med 2017;56(1):23-29 | 北九州市の病院で健診を受けた50〜81歳の527人で、味噌汁を飲む回数と血圧・心拍数の関係を調べた | 全文無料(PMC5313421) |
| ④ | Kondo H, et al. "Long-term intake of miso soup decreases nighttime blood pressure in subjects with high-normal blood pressure or stage I hypertension." Hypertens Res 2019;42(11):1757-1767 | 血圧がやや高めの40〜69歳40人を2群に分け、味噌汁(1日2杯・食塩3.8g)か、塩をほとんど含まない大豆の飲み物を8週間とってもらい、血圧を比べた | 全文無料(PMC8076009) |
| ⑤ | Nakamura M, et al. "Feasibility and effect on blood pressure of 6-week trial of low sodium soy sauce and miso (fermented soybean paste)." Circ J 2003;67(6):530-534 | 64人を2群に分け、家庭で使う醤油と味噌を「減塩タイプ」か「普通のタイプ」に6週間取り替え、血圧を比べた(どちらを使っているかは本人にも測定者にも伏せた) | 全文無料(J-STAGE) |
| ⑥ | Ito K. "Review of the health benefits of habitual consumption of miso soup: focus on the effects on sympathetic nerve activity, blood pressure, and heart rate." Environ Health Prev Med 2020;25:45 | 味噌と血圧・心拍数に関する動物実験と人の研究をまとめた総説 | 全文無料(PMC7461326) |
①は新潟大学大学院医歯学総合研究科、②は医薬基盤・健康・栄養研究所(当時)と厚生労働省の研究者、③⑥は地域医療機能推進機構 九州病院、⑤は浜松医科大学の研究チームによるものです。④は東京のクリニック、共立女子大学、味噌メーカーのマルコメ株式会社、試験の運営を担った会社などの研究者による共著です。
資金と利益相反について、①は佐渡市での地域健康研究プロジェクト(Project in Sado for Total Health)の助成、⑤は日本学術振興会の科学研究費を受けています。②は「外部からの資金なし」、①②③⑥はいずれも利益相反を「なし」としています。④は、試験に使った味噌をマルコメ社が製造・提供し、同社の社員3人が著者に入っています。論文には、この3人は味噌の供給を担当し、試験の実施・解析・執筆には関わっていないと書かれています。試験の設計は試験運営会社が行ったとされ、資金源そのものの記載は見当たりませんでした。
設計──「味噌汁」はどう測られたのか
①②③は、ある時点の食習慣と体の状態を一度に調べた調査(横断研究)です。どちらが先に起きたのかは分かりません。たとえば、血圧が高いと言われた人が味噌汁を控えている場合、「味噌汁を飲む人ほど血圧が高い」という関係は見えにくくなります。
味噌汁の測り方も研究ごとに違います。①と③は本人が答えた「飲む回数」で、1杯の量や味の濃さは尋ねていません。②は1日分の食事記録から、1品あたりに使われた味噌の量(g)を計算しています。回数ではなく、1品の「濃さ・量」に近い指標です。
④⑤は、参加者をくじ引きで2群に分けた比較試験です。ただし人数は④が40人、⑤が64人と少なく、期間も8週間と6週間です。
結果①──味噌汁をよく飲む人は、食塩を多くとっているのか(①)
①は、健診のときの尿の塩分(ナトリウム)から1日の食塩摂取量を推定し、味噌汁を飲む回数ごとに比べました。
| 味噌汁を飲む回数 | 人数 | 推定食塩摂取量(g/日) | 平均年齢 | 上の血圧(mmHg) | 高血圧の人の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 毎日は飲まない | 936人 | 9.0 | 61.7歳 | 126 | 47.9% |
| 1日1杯 | 3,486人 | 9.3 | 65.7歳 | 127 | 50.3% |
| 1日2杯以上 | 4,399人 | 9.5 | 69.7歳 | 127 | 52.0% |
※①の表2。年齢などをそろえる前の値。高血圧は、上の血圧140以上・下の血圧90以上・血圧の薬を飲んでいる、のいずれかに当てはまる人。
味噌汁をよく飲む人ほど、推定食塩摂取量はやや多くなっていました。年齢・性別・体格・高血圧・糖尿病などをそろえた分析でも、この関係は残りました(80歳以上を除く)。著者は、味噌汁や漬物を減らすことは、一般の人が食塩を減らす方法として有効かもしれないとまとめています。
ただし差の大きさは、毎日は飲まない人と2杯以上の人で1日0.5g程度でした。論文中で推奨値として紹介されている「1日6g未満」と比べると、どのグループも上回っています。
血圧と高血圧の割合は、味噌汁をよく飲む人ほどわずかに高めですが、よく飲む人ほど年齢も高くなっています。①は血圧を主な結果として分析した研究ではないため、ここから味噌汁と血圧の関係を読み取ることはできません。
読み取りに注意:①の表2では、「1日2杯以上」の人(4,399人)のうち男性を「2,153人(54.4%)」、血圧の薬を飲んでいる人を「1,745人(51.1%)」と記載しています。人数から計算すると、それぞれ約48.9%、約39.7%になり、表の割合と合いません。この記事では人数を示すにとどめます。
結果②──味噌汁と血圧の関係を調べた2つの調査(②③)
②は、国民健康・栄養調査の参加者のうち血圧の薬を飲んでいない25,738人について、1品あたりの味噌の量で4つのグループに分け、血圧を比べました。
| 1品あたりの味噌の量 | 上の血圧(男性) | 高血圧のオッズ比(男性) | 上の血圧(女性) | 高血圧のオッズ比(女性) |
|---|---|---|---|---|
| 0g(味噌を使った料理なし) | 130.4 | 基準 | 126.6 | 基準 |
| 少なめ(男性9.0g未満/女性8.67g未満) | 129.3 | 0.86(0.77〜0.97) | 125.7 | 0.97(0.87〜1.09) |
| 中くらい(男性13.3g未満/女性12.0g未満) | 130.2 | 0.93(0.83〜1.05) | 126.0 | 0.94(0.84〜1.05) |
| 多め(男性13.3g以上/女性12.0g以上) | 129.2 | 0.89(0.79〜1.00) | 126.7 | 1.03(0.93〜1.16) |
※②の表5・表6。年齢・体格・喫煙・飲酒・歩数・野菜と果物の摂取量をそろえたもの。血圧の単位はmmHg。かっこ内は95%信頼区間(本当の値がおそらく入る範囲)で、1をまたいでいるものは統計的にはっきりした差とは言えません。
味噌の量が多いグループでも、血圧はほとんど変わりませんでした。女性では、何もそろえない段階では味噌が多いほど高血圧の割合が高く出ていましたが(多めのグループでオッズ比1.37)、年齢をそろえるだけでこの差は消えました。味噌を多く使う人ほど年齢が高かったことが関係していると考えられます。
著者は、味噌や醤油を多く使う人は野菜・果物・魚などもよく食べ、カリウム(血圧を下げる方向に働くとされるミネラル)の摂取量も多かったことを挙げ、これが塩分の影響を打ち消している可能性を考察しています。
読み取りに注意:②の本文は「味噌の量と高血圧のあいだに統計的に意味のある関係はなかった」としていますが、表6では、男性の「少なめ」のグループだけオッズ比0.86(0.77〜0.97)と、高血圧が少ない側ではっきりした差が出ています。量が増えるほど一方向に変わる関係(傾向)は認められていません。
③の北九州の調査(50〜81歳の527人)でも、結果は同じ方向でした。
| 味噌汁を飲む回数(週あたり) | 人数 | 上の血圧(mmHg) | 心拍数(拍/分) |
|---|---|---|---|
| 1杯未満 | 105人 | 130.5 | 飲む回数が多いほど低い傾向(図で示されており、数値表はなし) |
| 4杯未満 | 188人 | 131.2 | |
| 7杯未満 | 177人 | 129.9 | |
| 7杯以上(毎日1杯以上) | 57人 | 126.7 |
※③の本文と表1。上の血圧のグループ間の差は統計的にはっきりしたものではありませんでした(p=0.395)。
年齢・性別・体格・喫煙・血糖・腎臓の働きをそろえた分析でも、味噌汁を飲む回数と高血圧のあいだに関係は見られませんでした(回数のグループが1段上がるごとのオッズ比1.07、0.87〜1.32)。一方、心拍数が平均より高い人は、味噌汁をよく飲む人ほど少ない傾向がありました(オッズ比0.80、0.65〜0.97)。
ただし③には、血圧の薬を飲んでいる人が26.2%含まれています。また著者自身が、食塩の摂取量を測っていないこと、味噌汁以外の食習慣を調べていないこと、人数が比較的少ないことを限界に挙げています。
結果③──味噌汁を毎日飲んでもらった試験と、減塩味噌の試験(④⑤)
④は、上の血圧が130〜159mmHgほど(下の血圧85〜99mmHgほど)で、治療を受けていない40〜69歳の40人を2群に分けました。1日2回、朝食と夕食に、片方は味噌汁(2杯で食塩3.8g)、もう片方は大豆と米の粉でつくった、塩をほとんど含まない飲み物(2杯で食塩0.2g)を8週間とりました。8週間の食塩の合計は、味噌汁の群で212g、大豆の飲み物の群で11gです。最後まで参加したのは各群19人でした。
| 測ったもの(8週間後) | 味噌汁の群 | 大豆の飲み物の群 |
|---|---|---|
| 日中に病院で測った血圧 | 2群で差なし(どちらも8週間で変化なし) | |
| 夜中(2時・4時)に家庭で測った上の血圧 | 味噌汁の群がやや低い傾向(2時p=0.085、4時p=0.062)。夜間を通した推移では2群に統計的な差あり | |
| 夜中(2時・4時)に家庭で測った下の血圧 | 味噌汁の群が統計的にはっきり低い | |
| 体重の変化 | −0.64kg | +0.07kg |
※④の本文・図2〜4・図8。血圧の具体的な数値は図でのみ示されています。
食塩を1日3.6g多くとった群でも、日中の血圧は上がっていませんでした。著者は「味噌汁は夜間の血圧を下げた」と結論しています。ただし、この結果を読むときには次の点に注意が必要です。
- 試験に使ったのは、市販の米味噌と、血圧を上げる酵素(アンジオテンシン変換酵素)の働きを抑える成分を多く含むように新しくつくった味噌を2対1で混ぜたものです。家庭で飲む普通の味噌汁と同じとは言えません。
- 1杯に味噌16g(食塩1.9g)を使っており、②の1品あたりの中央値(約9g)より多めです。
- 夜中の上の血圧は、時刻ごとに比べると統計的にはっきりした差になっていません。
- 最初の時点で、悪玉コレステロールや腎臓の働きの値などに2群で差がありました。
読み取りに注意:④の抄録は「味噌は脂質の代謝に影響しなかった」とし、本文では「味噌の摂取で悪玉コレステロールが統計的にはっきり上がった」と書いています。一方、表4では、味噌汁の群の悪玉コレステロールは142から138mg/dLで、最初の時点からすでに大豆の飲み物の群(119)より高い値でした。この記事では、悪玉コレステロールへの影響はどちらとも判断していません。
⑤は、浜松医科大学の研究チームが2001〜2002年に、ある町と2つの会社で参加者を募った試験です。家庭の醤油と味噌を、食塩が約25%少ない減塩醤油・約20%少ない減塩味噌か、普通のものに6週間取り替えました。どちらを使っているかは、本人にも測定者にも知らされていません。血圧の薬を飲んでいる人も含まれています。
| 6週間の血圧の変化(mmHg) | 減塩の群 | 普通の群 | p値 |
|---|---|---|---|
| 全員:上の血圧 | −0.5 | −0.5 | 0.99 |
| 全員:下の血圧 | −2.3 | +0.8 | 0.18 |
| 40歳以上:上の血圧 | −1.2 | −0.9 | 0.93 |
| 40歳以上:下の血圧 | −4.5 | +1.9 | 0.02 |
| 高血圧の人:上の血圧 | −7.3 | −1.5 | 0.24 |
※⑤の表3。減塩の群32人、普通の群32人(40歳以上は22人と24人、高血圧の人は10人と16人)。
全員で見ると血圧に差はありませんでしたが、40歳以上では下の血圧が差し引き6.4mmHg大きく下がっていました。高血圧の人では上の血圧が下がる方向でしたが、人数が少なく、統計的にはっきりした差にはなっていません。
興味深いのは味の評価です。減塩味噌を使った人の90.6%、普通の味噌を使った人の93.8%が「とてもおいしい」「おいしい」と答え、差はありませんでした。自分が減塩味噌を使っていると正しく答えられた人は53%にとどまっています。
なお、尿の食塩量は11人しか測れておらず、減塩の群で1日0.7g減り、普通の群で0.7g増えていました。人数が少ないため、参考程度の値です。
総説はどうまとめているか(⑥)
⑥は、味噌と血圧に関する研究をまとめた総説です。食塩に弱い体質の動物(ラットやマウス)の実験では、同じ量の食塩を食塩水でとるより、味噌でとったほうが血圧が上がりにくかったという報告が複数あるとしています。理由としては、交感神経(体を興奮させる神経)の働きを抑えることなどが考えられているものの、仕組みは十分には分かっていないとしています。
そのうえで⑥は、人については「味噌が血圧や心拍数にどう影響するかを結論づけるにはデータが足りない」と明記しています。さらに、味噌汁をよく飲む人は野菜・海藻・魚も多くとる伝統的な食事をしている可能性があり、観察された違いが味噌だけによるものとは言えないこと、高血圧の程度が重い人(Ⅱ度・Ⅲ度)や食塩に強く反応する体質の人での安全性は分かっていないことを挙げています。
この研究が言えないこと
- 「味噌汁は血圧を上げない」と言い切れるわけではない。①②③はある時点の調査で、どちらが先かは分かりません。血圧が高いと言われた人が味噌汁を控えていれば、関係は見えにくくなります(②は血圧の薬を飲んでいる人を除いていますが、すべての影響を取り除けるわけではありません)。
- 脳卒中や心臓病のなりやすさは誰も調べていない。今回読んだ資料はすべて、血圧や食塩摂取量を測ったものです。味噌汁を長く飲み続けた人の病気のなりやすさは分かりません。
- 試験は小さく、短い。④は各群19人で8週間、⑤は各群32人で6週間です。これだけで、何年も続く食習慣の影響を判断することはできません。
- ④は特別な味噌で、メーカーが関わっている。④の味噌の3分の1は、血圧を上げる酵素の働きを抑えるように新しくつくった味噌でした。普通の味噌汁にそのまま当てはめられるかは分かりません。また、味噌はメーカーが製造・提供し、同社の社員が著者に入っています。
- 「味噌汁ならいくら飲んでもよい」という意味ではない。①では、味噌汁をよく飲む人ほど食塩の摂取量が多めでした。血圧に差が見えないことと、食塩をとりすぎてよいことは別の話です。
- 味噌汁の量・濃さ・具が測られていない。①③は飲む回数の自己申告、②は1日分の記録から計算した1品あたりの味噌の量です。1杯の大きさや味の濃さ、具の野菜の量は研究ごとに違い、比べられません。
- 具や他の食事の影響と区別できない。②⑥が指摘するとおり、味噌汁をよく飲む人は野菜や魚などもよく食べている可能性があります。血圧に差が出ないのが味噌そのもののはたらきなのか、一緒に食べるもののおかげなのかは分かりません。
- 治療中の人や腎臓病の人には当てはめられない。④は治療を受けていない、血圧がやや高めの人だけが対象です。⑥も、重い高血圧の人や食塩に強く反応する体質の人での安全性は分かっていないとしています。
- 動物実験の結果は、そのまま人には当てはまらない。「味噌は食塩水より血圧を上げにくい」という話の多くは、ラットやマウスの実験から来ています。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
読んでみて感じたのは、「味噌汁は塩分が多い」と「味噌汁で血圧が上がる」は、分けて考えたほうがよい別々の話だということです。①のとおり、味噌汁をよく飲む人は食塩を多めにとっていました。一方で②③のように、味噌汁や味噌の量と血圧の高さには、はっきりした関係が見られないという調査もあります。ただ、どちらも「ある時点の調査」であり、味噌汁が血圧に悪くないと言い切れる根拠にはなっていません。
筋トレをしていると、汗で塩分が出るから多少しょっぱくても平気、と考えてしまうことがあります。しかし、①の推定食塩摂取量はどのグループも1日9g台で、推奨値の6g未満を上回っていました。資料から考えられることを整理すると、次のようになります。
- 味噌汁を減らすより先に、1日の食塩全体を見る:①の差は、毎日は飲まない人と2杯以上の人で1日0.5g程度でした。②の著者は、日本人の主な食塩の出どころとして、味噌・醤油のほかに即席の中華めん(油で揚げたもの)、カレールウ、漬物、梅干しなども挙げています。
- 減塩味噌に替えるのは、続けやすい選択肢の一つ:⑤では、減塩味噌・減塩醤油に替えても味の評価はほとんど変わらず、40歳以上では下の血圧が下がっていました。ただし64人・6週間の試験で、全体では差がなかったことも覚えておきたい点です。
- 具の多い味噌汁にする:②の著者は、野菜などに含まれるカリウムが塩分の影響を打ち消している可能性を考察しています。ただし、これは著者の解釈で、具の量を比べた試験ではありません。
- 1杯の濃さを意識する:④の試験では1杯に味噌16g(食塩1.9g)を使っていました。同じ1杯でも、味噌の量によって食塩は大きく変わります。
血圧の上がり方や食塩への反応には個人差があります。高血圧や腎臓病で治療中の方、医師から食塩の制限を指示されている方は、味噌汁の量を変える前に主治医に相談してください。
まとめ
- 味噌汁をよく飲む人ほど、1日の食塩摂取量はやや多い傾向がありました(佐渡市8,821人。差は1日0.5g程度)。
- 一方で、味噌汁を飲む回数や味噌の量と血圧の高さには、はっきりした関係が見られなかったという調査が、全国2万5,738人と北九州527人で報告されています。
- 味噌汁を1日2杯8週間飲んだ試験では日中の血圧は上がりませんでしたが、新しくつくった味噌を混ぜて使い、メーカーが関わった各群19人の試験です。
- 減塩味噌・減塩醤油への切り替えは、味の評価をほとんど変えずにでき、40歳以上では下の血圧が下がったと報告されています。
- 味噌汁と脳卒中・心臓病の関係を確かめた研究ではなく、「味噌汁は血圧を上げない」と言い切れる段階ではありません。
出典(一次資料)
- Wakasugi M, Kazama JJ, Narita I. Associations between the intake of miso soup and Japanese pickles and the estimated 24-hour urinary sodium excretion: a population-based cross-sectional study. Intern Med. 2015;54(8):903-910. doi:10.2169/internalmedicine.54.4336 全文(J-STAGE)
- Okada E, Saito A, Takimoto H. Association between the Portion Sizes of Traditional Japanese Seasonings—Soy Sauce and Miso—and Blood Pressure: Cross-Sectional Study Using National Health and Nutrition Survey, 2012–2016 Data. Nutrients. 2018;10(12):1865. doi:10.3390/nu10121865 全文(PMC6316062)
- Ito K, Miyata K, Mohri M, Origuchi H, Yamamoto H. The Effects of the Habitual Consumption of Miso Soup on the Blood Pressure and Heart Rate of Japanese Adults: A Cross-sectional Study of a Health Examination. Intern Med. 2017;56(1):23-29. doi:10.2169/internalmedicine.56.7538 全文(PMC5313421)
- Kondo H, Sakuyama Tomari H, Yamakawa S, Kitagawa M, Yamada M, Itou S, Yamamoto T, Uehara Y. Long-term intake of miso soup decreases nighttime blood pressure in subjects with high-normal blood pressure or stage I hypertension. Hypertens Res. 2019;42(11):1757-1767. doi:10.1038/s41440-019-0304-9 全文(PMC8076009)
- Nakamura M, Aoki N, Yamada T, Kubo N. Feasibility and effect on blood pressure of 6-week trial of low sodium soy sauce and miso (fermented soybean paste). Circ J. 2003;67(6):530-534. doi:10.1253/circj.67.530 全文(J-STAGE)
- Ito K. Review of the health benefits of habitual consumption of miso soup: focus on the effects on sympathetic nerve activity, blood pressure, and heart rate. Environ Health Prev Med. 2020;25:45. doi:10.1186/s12199-020-00883-4 全文(PMC7461326)