今日のトピックス · 裏どりノート

高額療養費の上限額が2026年8月から変わった──新設された「年間上限」と据え置かれた多数回該当

公開日: 2026-08-09 · 約9分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

運営者・執筆方針について →
シェア

この記事の要点

  • 高額療養費制度の自己負担限度額が、2026年(令和8年)8月診療分から見直されました
  • 70歳未満・年収約370万〜約770万円の区分では、ひと月の上限が 80,100円+1% から 85,800円+1% に変わりました
  • 同時に、月単位とは別に「年間上限」が新設されました。この区分では年間53万円です
  • 多数回該当の金額は据え置きです(44,400円/93,000円/140,100円/24,600円)。長期に治療を続けている方の負担を増やさないための措置とされています
  • 所得区分の細分化など第2段階は2027年(令和9年)8月からです

医療費が高額になったとき、ひと月あたりの自己負担に上限を設けてくれるのが高額療養費制度です。入院や手術、継続的な治療を受けるときに家計を支える仕組みで、日本の公的医療保険の中でも特に生活に直結する部分にあたります。

この制度の自己負担限度額が、2026年8月の診療分から見直されました。上限額が上がった区分がある一方で、新しく「年間上限」という仕組みが加わり、条件によっては負担が軽くなるケースもあります。単純な負担増とも負担減とも言い切れない、少し複雑な改正です。厚生労働省が公表している資料をもとに、何がどう変わったのかを整理します。

📄 裏どりの概要
厚生労働省保険局の資料「高額療養費制度の見直しについて(イメージ)」に掲載された、患者負担割合および高額療養費自己負担限度額の表(令和8年8月〜令和9年7月/令和9年8月〜)と、現行・R8.8〜・R9.8〜の新旧比較表を確認しました。あわせて厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」の記載を参照しています。今回の見直しは、令和7年12月16日の「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」の基本的な考え方を踏まえたものとされています。

見直しの3つの柱

厚生労働省の資料は、今回の見直しを「高額療養費のセーフティネット機能に鑑み、長期療養者や低所得者の経済的負担の在り方に配慮しつつ、制度を将来にわたって堅持していくための見直し」と位置づけています。中身を分解すると、大きく3つの柱があります。

1つめは、ひと月あたりの上限額(月額上限)の引き上げです。一人当たり医療費の伸びに応じて、各所得区分の限度額が引き上げられました。

2つめは、「年間上限」の新設です。これまでの高額療養費は月単位でしか上限がなく、毎月そこそこの医療費がかかるものの月の上限には届かない、という人には恩恵が届きにくい構造でした。年単位の上限を設けることで、そうした長期療養者にも歯止めがかかるようにする、というのが趣旨です。

3つめは、多数回該当の金額を据え置いたことです。多数回該当とは、過去12か月以内に3回以上上限額に達した場合、4回目から上限額が下がる仕組みです。今回、月額上限が引き上げられたにもかかわらず、この多数回該当の金額は現行のまま維持されました。資料には「長期に継続して治療を受けられている方の経済的負担を増加させない」と明記されています。

低所得者への配慮も別建てで行われています。住民税非課税区分は引き上げ率が緩和され、住民税非課税ラインを少し上回る「年収200万円未満」の層については多数回該当の金額を引き下げる措置が、後述する2027年8月の第2段階と合わせて実施されます。

70歳未満の新しい限度額(2026年8月〜2027年7月)

まず、多くの方に関係する70歳未満の区分です。かっこ内は健康保険の標準報酬月額です。

所得区分(年収換算)見直し前の月額上限2026年8月〜の月額上限多数回該当年間上限
約1,160万円〜(標報83万円以上)252,600円+1%270,300円+(医療費-901,000円)×1%140,100円1,680,000円
約770万〜約1,160万円(標報53〜79万円)167,400円+1%179,100円+(医療費-597,000円)×1%93,000円1,110,000円
約370万〜約770万円(標報28〜50万円)80,100円+1%85,800円+(医療費-286,000円)×1%44,400円530,000円
〜約370万円(標報26万円以下)57,600円61,500円44,400円530,000円
住民税非課税35,400円36,900円24,600円290,000円

「+1%」というのは、かかった医療費のうち定められた基準額を超えた部分の1%が上限額に上乗せされる、という意味です。たとえば年収約370万〜約770万円の区分で医療費が100万円かかった場合、85,800円+(1,000,000円-286,000円)×1%=約9.3万円が自己負担の上限になります。厚生労働省のページでも同様の例が示されています。

この区分の引き上げ幅は、80,100円から85,800円で5,700円です。一方、多数回該当は44,400円のまま変わっていません。つまり、年に1〜3回だけ上限に達するような使い方をする人は負担が増え、年に4回以上上限に達する長期療養の人は4回目以降の負担が変わらない、という設計になっています。

なお、住民税非課税より少し上の「年収換算〜約200万円(健保:標準報酬月額15万円以下、国保:旧ただし書き所得86万円以下)」に該当することが確認できた方については、年間上限が41万円に据えられ、令和9年8月以降に償還払いされるという注記が置かれています。

新設された「年間上限」の考え方

今回の見直しでいちばん新しいのが、この年間上限です。厚生労働省の資料はこう説明しています。

「月単位の『限度額』に到達しない方であっても、『年間上限』に達した場合には、当該年においてそれ以上の負担は不要となる」——つまり、毎月の医療費が上限には届かないけれど確実に積み上がっている、という状況をカバーするための仕組みです。

資料が挙げている例がわかりやすいので紹介します。毎月7万〜8万円程度の自己負担が12か月続くケースでは、見直し前は年間で76.7万円の自己負担でした。月ごとの上限には届かないため高額療養費が支給されず、多数回該当にも当たらなかったからです。年間上限53万円が適用されると、年間で約23.7万円の負担減になります。

また、ある月に1,488万円という極めて高額な医療を受けたケースでは、見直し前の年間自己負担57.3万円に対し、年間上限53万円が適用されて約4.3万円の負担減になる例も示されています。

ここで押さえておきたい点が2つあります。

ひとつは「年」の区切りです。高額療養費の年間上限でいう1年は、暦年でも年度でもなく、8月から翌年7月までです。高額介護合算療養費制度と同じ区切り方で、今回の見直しが8月診療分から始まるのもこれに合わせたものです。

もうひとつは、支給の受け方です。年間上限は1年分の自己負担を積み上げて初めて判定できる性質のものなので、月々の窓口で自動的に反映されるものではありません。厚生労働省のページでは「月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費については、保険者から還付を受けることができます」と説明されています。実際の手続きは加入している健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保などによって案内が異なると考えられるため、ご自身の保険者からの通知を確認しておくとよさそうです。

年間上限の水準は、多数回該当の金額を下回る水準になるよう設定されたと資料には記されています。たとえば年間53万円は月額平均に直すとおよそ44,200円で、同区分の多数回該当44,400円をわずかに下回ります。

70歳以上の外来特例はどうなったか

70歳以上には、外来の自己負担を個人単位で抑える「外来特例」があります。ここも見直しの対象になりました。

区分見直し前の外来(個人ごと)2026年8月〜
一般(年収約200万〜約370万円)18,000円(年間上限14.4万円)22,000円(年間上限21.6万円)
住民税非課税8,000円70〜74歳 11,000円/75歳以上 年間上限9.6万円
住民税非課税(所得が一定以下)8,000円8,000円(据え置き・年間上限18万円)

所得が一定以下の区分(年金収入80万円以下などが該当)については、外来の月額上限が8,000円で据え置かれました。住民税非課税区分には新たに外来の年間上限が導入され、資料には「これにより、毎月現在の上限額まで利用される方の負担は変わらない」と説明されています。毎月上限いっぱいまで使う方の年間の最大負担額を、現在より増やさない設計にしたということです。

70歳以上の月単位の上限額(世帯ごと)は、住民税非課税で24,600円から25,700円へ、所得が一定以下の区分で15,000円から15,700円へと改定されました。多数回該当の24,600円は据え置きです。

なお外来特例そのものについては、対象年齢の見直しが今後の検討事項として残されています。資料には、令和7年11月21日に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」で「医療費窓口負担に関する年齢によらない真に公平な応能負担の実現」について令和8年度中に具体的な制度設計を行うとされたことを踏まえ、高齢者の窓口負担の見直しと併せて具体案を検討し一定の結論を得る、と記されています。

2027年8月からの第2段階

今回の見直しは2段階に分かれており、2027年(令和9年)8月からが第2段階です。ここでの主な変更は所得区分の細分化です。

現在は70歳未満で5区分ですが、第2段階では次のように細かく分かれます。年収約1,650万円以上/約1,410万〜約1,650万円/約1,160万〜約1,410万円/約1,040万〜約1,160万円/約950万〜約1,040万円/約770万〜約950万円/約650万〜約770万円/約510万〜約650万円/約370万〜約510万円/約260万〜約370万円/約200万〜約260万円/〜約200万円、そして住民税非課税、という構成です。

この細分化によって、たとえば年収約370万〜約510万円の方の上限額は85,800円+1%のまま据え置かれる一方、約510万〜約650万円は98,100円+1%、約650万〜約770万円は110,400円+1%と、所得に応じて段階が付きます。これが資料でいう「応能負担」の考え方です。

あわせて、年収約200万円未満の区分では多数回該当が44,400円から34,500円へ引き下げられ、年間上限も41万円と、他の区分より低く設定されます。低所得層への配慮がここで実施される形です。

つまり、2026年8月の第1段階は「全体の底上げ+年間上限の新設」、2027年8月の第2段階は「所得に応じたきめ細かい配分」という役割分担になっています。

手続きで押さえておきたい点

制度の中身とは別に、実務で迷いやすい点を整理しておきます。

適用は「診療を受けた月」で判定されます。2026年7月31日以前に受けた診療については、従来の限度額が適用されます。8月をまたいで入院した場合、月ごとに計算されるため、7月分と8月分で適用される上限額が異なることになります。

窓口での支払いを上限額までに抑える仕組みがあります。入院や同一医療機関での外来については、あらかじめ「限度額適用認定証」を用意しておくか、マイナンバーカードを健康保険証として利用することで、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめられます。あとから払い戻しを受ける手間と、一時的に高額を立て替える負担を減らせます。

介護保険と合算する制度もあります。医療保険と介護保険の1年間(8月1日〜翌年7月31日)の自己負担の合算額が高額になった場合、高額介護合算療養費制度でさらに負担が軽減される場合があります。ご家族に介護サービスの利用者がいる場合は、こちらもあわせて確認しておくとよさそうです。

詳細な区分の判定はご自身の保険者に確認するのが確実です。年収換算はあくまで目安で、実際には健康保険なら標準報酬月額、国民健康保険なら旧ただし書き所得、後期高齢者医療なら課税所得で判定されます。世帯の構成や複数の医療機関にかかった場合の合算など、個別の事情で結果が変わります。

高額療養費は、使う場面が来てから慌てて調べることの多い制度です。上限額が上がったこと自体は歓迎しにくい変更ですが、年間上限という新しい歯止めが加わったことと、長期に治療を続けている方の多数回該当が据え置かれたことは、押さえておく価値があります。ご自身や家族が該当しそうな区分だけでも、今のうちに目を通しておくと、いざというときの見通しが立てやすくなります。

※本記事は厚生労働省の公表資料をもとに中立的に整理したものです。制度の運用や金額は更新される可能性があります。個別の適用区分や手続きについては、加入されている健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の窓口にご確認ください。

よくある質問

高額療養費の新しい上限額は、いつの診療分から適用されますか?

2026年(令和8年)8月の診療分からです。2026年7月31日以前に受けた診療には従来の限度額が適用されます。月をまたいで入院した場合は月ごとに計算されるため、7月分と8月分で適用される上限額が異なります。

新設された「年間上限」はどうすれば受けられますか?

年間上限は1年分(8月〜翌年7月)の自己負担を積み上げて判定するため、月々の窓口で自動的に反映されるものではありません。厚生労働省は、年間の上限額に達した後の医療費について保険者から還付を受けられると説明しています。手続きの案内は加入先の健康保険組合・協会けんぽ・市区町村国保によって異なると考えられますので、ご自身の保険者からの通知をご確認ください。

長期間治療を続けている場合、負担は増えますか?

過去12か月以内に3回以上上限額に達した場合に4回目から適用される「多数回該当」の金額は、今回の見直しで据え置かれました(44,400円/93,000円/140,100円/24,600円)。厚生労働省の資料には、長期に継続して治療を受けている方の経済的負担を増加させないためと記されています。さらに、月額上限に届かない方向けに年間上限が新設されました。

2027年8月には何が変わりますか?

第2段階として所得区分が細分化されます。70歳未満は現在の5区分から12区分程度に分かれ、所得に応じた段階的な上限額が設定されます。あわせて年収約200万円未満の区分では多数回該当が44,400円から34,500円へ引き下げられ、年間上限も41万円に設定されます。

関連記事

読んだら、次の一歩へ

この記事の内容を、あなたの体づくりに落とし込むための導線です。

この記事が参考になったら、下のバナーで応援いただけると励みになります

にほんブログ村 50代の健康 PVアクセスランキング にほんブログ村

▶ 健康の豆知識ランキングも見る

← 記事一覧へ戻る トップへ