この記事の要点
- 2026年(令和8年)4月1日に食品表示基準の改正内閣府令(令和8年内閣府令第34号)が公布され、同日から施行されました
- カシューナッツが「特定原材料」に追加され、表示が義務になりました。特定原材料は8品目から9品目になります
- ピスタチオは「特定原材料に準ずるもの」=推奨表示への追加です。義務ではありません。しかもこちらは内閣府令ではなく通知による改正です
- 経過措置は2本立てで、アレルギー表示は2028年3月31日まで、個別品目の表示ルールは2030年3月31日まで従来どおりでも構いません。つまり店頭には当分のあいだ新旧が混在します
- 同時に、個別の食品ごとに義務づけられていた表示のうちかなりの数が削除されました(乾めん類の調理方法、即席めん類の「油揚げめん」表示、無菌充填豆腐の「常温保存可能品」など)
食品のパッケージの裏面にある表示は、食品表示法にもとづく「食品表示基準」という内閣府令でルールが決まっています。この食品表示基準が、2026年4月1日に改正・施行されました。
報道では「カシューナッツとピスタチオがアレルギー表示に追加」という形で伝えられることが多いのですが、この2つは法的な強さがまったく違います。またこの改正には、アレルギー表示以外にも「個別の食品ごとの表示ルールの大幅な整理」という、もう一つの大きな柱があります。原典にあたって整理します。
📄 裏どりの概要
消費者庁が公表している「食品表示基準及び食品表示法第六条第八項に規定するアレルゲン、消費期限、食品を安全に摂取するために加熱を要するかどうかの別その他の食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項等を定める内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和8年内閣府令第34号)の新旧対照条文と、附則を含む溶け込み版本則、および「食品表示基準について」の一部改正(第40次改正・消食表第237号)の本文と別添「アレルゲン関係」を確認しました。あわせて、改正案に関する意見募集(令和7年12月26日)の資料を参照しています。
公布日と施行日が同じ日の改正
まず基本的な事実関係です。今回の改正内閣府令は令和8年内閣府令第34号で、公布日は2026年(令和8年)4月1日。附則第1条は「この府令は、公布の日から施行する」となっているので、公布日と施行日が同じ日です。
府令は2条建てになっていて、第1条が食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の改正、第2条がいわゆる「6条8項府令」(平成27年内閣府令第11号)の改正です。改正の対象になったのは、食品表示基準の第5条・第10条・第11条・第15条と、別表第3・第4・第5・第13・第14・第19・第20・第22・第23という広い範囲におよびます。
ただし「4月1日に施行された」からといって、翌日から店頭のパッケージが全部切り替わるわけではありません。後述する経過措置があるためです。
カシューナッツが「義務表示」になった
今回の改正で消費者に最も影響が大きいのは、カシューナッツが特定原材料に追加されたことです。
アレルギー表示には2つの階層があります。
| 区分 | 法的な強さ | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定原材料 | 表示が義務 | 食品表示基準 別表第14(内閣府令) |
| 特定原材料に準ずるもの | 表示を推奨(任意) | 「食品表示基準について」(消費者庁の通知) |
カシューナッツはこれまで下段の「準ずるもの」=推奨表示でした。それが今回、上段の特定原材料=義務表示に格上げされたことになります。改正後の特定原材料は次の9品目です。
特定原材料(表示義務・9品目)
えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
消費者庁が改正案の意見募集で示した理由はこうです。令和6年度の「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」で、木の実類のなかでもカシューナッツによる症例数・割合の増加が確認され、これが一過性のものとは考えられないと判明したこと。そしてカシューナッツの公定検査法の確立に目処が立ったことです。
この「検査法」の話は地味ですが重要です。義務表示にするということは、表示が正しいかどうかを行政が検査で確かめられなければなりません。検査法が確立していない段階では義務化できない、という順序になっているわけです。
ピスタチオは「推奨」──しかも根拠が内閣府令ではない
一方のピスタチオは、「特定原材料に準ずるもの」=推奨表示への追加です。表示するかどうかは事業者の判断に委ねられます。
そしてもう一つ、注意しておきたい点があります。ピスタチオの追加は今回の内閣府令には書かれていません。令和8年内閣府令第34号の新旧対照条文を通して読んでも、「ピスタチオ」という語は一度も登場しません。
根拠になっているのは、同じ2026年4月1日付で出された消費者庁の通知「食品表示基準について」の一部改正(第40次改正・消食表第237号)です。この通知にはこう書かれています。
平成27年度、平成30年度、令和3年度及び令和6年度の「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」の内容並びに令和7年1月に開催された「第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」での議論を踏まえ、「ピスタチオ」を特定原材料に準ずるものに追加しました。
改正後の「特定原材料に準ずるもの」は次の20品目です。
特定原材料に準ずるもの(表示は推奨・20品目)
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
カシューナッツがこのリストから抜けて特定原材料に移り、代わりにピスタチオが入ったので、品目数は20のままです。特定原材料9品目と合わせた合計は29品目になります。
「カシューナッツとピスタチオが追加された」とひとくくりに書かれている記事を見かけたら、この2つが義務と推奨で分かれていること、根拠が府令と通知で分かれていることを思い出してください。ピスタチオアレルギーの方にとっては、表示がない商品にピスタチオが入っている可能性が残るという実務上の違いになります。
経過措置は2本立て──2028年3月と2030年3月
今回の改正の附則には、経過措置が2条にわたって置かれています。条文はこうです。
第二条 令和十年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(業務用加工食品を除く。)及び同日までに販売される業務用加工食品の表示については、第一条の規定による改正後の食品表示基準別表第十四の規定にかかわらず、なお従前の例によることができる。
別表第14=特定原材料、つまりアレルギー表示の経過措置は令和10年(2028年)3月31日までです。
第三条 令和十二年三月三十一日までに製造され、加工され、又は輸入される加工食品(略)の表示については、第一条の規定による改正後の食品表示基準第五条、第十条、第十一条、第十五条、別表第三、別表第四、別表第五、別表第十三、別表第十九、別表第二十、別表第二十二及び別表第二十三の規定(略)にかかわらず、なお従前の例によることができる。
こちらは令和12年(2030年)3月31日まで。個別品目の表示ルールなど、アレルギー以外の部分です。
| 対象 | 経過措置の期限 | 期間 |
|---|---|---|
| アレルギー表示(別表第14) | 2028年3月31日 | 約2年 |
| 個別品目の表示ルールなど | 2030年3月31日 | 約4年 |
ここが消費者にとって一番の実務ポイントです。カシューナッツの義務表示が全商品に行き渡るのは2028年4月以降ということになります。それまでは、義務化に対応したパッケージと従来のパッケージが店頭に並びます。カシューナッツアレルギーのある方は、当面のあいだ「書いていない=入っていない」とは判断できません。
逆に言えば事業者側は、容器包装の切り替えのタイミングに合わせて順次対応していけばよい、という設計になっています。パッケージの版下を一斉に刷り直すコストを考えると、この長さは合理的ではあります。
もう一つの柱──個別品目の義務表示が「削られた」
アレルギー表示の陰に隠れがちですが、今回の改正のもう一つの柱は個別の食品ごとに定められていた義務表示の整理です。
食品表示基準の別表第19には、特定の食品にだけ課される表示事項が並んでいます。今回、そのかなりの数が削除されました。新旧対照条文で「削る」とされているものを拾うと、たとえば次のようなものがあります。
| 食品 | 表示しなくてよくなった事項 |
|---|---|
| 乾めん類 | 調理方法 |
| 即席めん類(生タイプ以外) | 油脂で処理した旨(「油揚げめん」「油処理めん」) |
| 無菌充填豆腐 | 常温での保存が可能である旨(「常温保存可能品」) |
| 凍り豆腐 | 調理方法 |
| プレスハム・ソーセージ類 | でん粉含有率 |
| 食肉製品 | 原料肉名、殺菌方法 |
| 鶏の液卵 | 殺菌方法 |
| 削りぶし | 名称の用語 |
| 風味調味料・乾燥スープ・果実飲料 | 使用方法/調理方法 |
この見直しの考え方は、消費者庁の分科会資料に整理されています。個別の表示事項を、①食品衛生上必要なもの=維持、②横断的な義務表示で代替できるもの=廃止、③品質に関わるが義務である必要がないもの=廃止、④監視の観点から維持が望ましいもの=要検討、の4つに分類して仕分けしたものです。
たとえば「でん粉含有率」は品質情報ではありますが、原材料名を見れば分かる部分と重なります。「調理方法」はそもそもパッケージに書いてあるのが普通で、義務にしなくても事業者は書きます。そうした整理です。
ただし、削除された=表示されなくなる、とは限りません。義務ではなくなっただけで、任意で表示することは自由です。実際、調理方法のように消費者が求める情報はこれまでどおり書かれ続けると考えるのが自然でしょう。
逆に追加・強化された部分もあります。冷凍食品については、「凍結させる直前に加熱されたものであるかどうかの別」を「冷凍食品である旨」の表示に近接した場所に表示することが第40次改正の通知で追加されました。分科会資料では「冷凍食品(凍結直前加熱)」という書き方の例が示されています。また、保存方法の表示を省略できる食品にうま味調味料が追加されました(従来は食塩のみ)。
「◯◯品目が見直された」という数字には注意
この改正について「個別品目◯◯品目の表示が見直された」という説明を見かけることがあります。調べたかぎり、消費者庁の一次資料には特定の総品目数を示した記載が見当たりませんでした。
一次資料で確認できる数字は次の3つです。
- 22品目:第16回の分科会資料(令和7年11月26日)の改正スケジュール案に、令和7年1月〜11月に検討した旧JAS法由来の品目として列挙されているもの(果実飲料、豆乳類、乾燥スープ、風味調味料、しょうゆ、凍り豆腐、乾めん類、削りぶし、煮干魚類、食酢、ドレッシング類、食用植物油脂、農産物漬物、トマト加工品、にんじんジュース類、ウスターソース類、ハム類、プレスハム、混合プレスハム、ソーセージ、混合ソーセージ、ベーコン類)
- 29品目:アレルギー表示の対象合計(特定原材料9+準ずるもの20)
- これとは別枠で「旧食品衛生法由来」の事項(食肉製品・乳・乳製品・冷凍食品など)があり、こちらは資料上、品目数が明示されていません
旧JAS法由来と旧食品衛生法由来を足せば、それなりの数にはなります。ただ、消費者庁自身がどこかで総数を数え上げて公表しているわけではないようです。数字を引用するときは出所を確かめたほうがよさそうです。
消費者としての実務的な結論
覚えておくと役に立つ3点
- カシューナッツは義務、ピスタチオは推奨。ピスタチオは書かれていないことがあります
- 2028年3月までは新旧のパッケージが混在します。カシューナッツの表示がないからといって、直ちに含まれていないとは判断できません
- 裏面から消える表示(調理方法、でん粉含有率など)がありますが、これは「義務でなくなった」だけで、書いてはいけないわけではありません
食物アレルギーのある方にとって、義務表示への格上げは確実に前進です。ただし切り替えには時間がかかります。その移行期間をどう過ごすかが当面の実務になります。パッケージの表示に加えて、メーカーのお問い合わせ窓口や商品ページの情報も併用するのが安全側の対応でしょう。
また、外食やテイクアウトには食品表示基準の義務表示そのものが及びません。今回の改正で変わるのは、あくまで容器包装に入れられた加工食品の表示です。