「睡眠障害を診てもらえる病院はどこ?」——そんな疑問に答えるかのように、2026年6月1日、厚生労働省の医療法施行令改正により、「睡眠障害」が医療機関の看板や広告に掲げられる診療科名(組み合わせ標榜)として新たに追加されました。不眠やいびき、日中の強い眠気などに悩む人が専門的な医療機関を探しやすくなる可能性がある改正として、ニュースやSNSで話題となっています。
📄 裏どりの概要
厚生労働省「標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について」(令和8年5月公布・6月1日施行)、同省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」、および令和5年「国民健康・栄養調査」を確認しました。
何が言われているか
今回の改正をめぐっては、主に次の2点がSNSやニュースで語られています。
① 「新しい診療科が誕生した」という受け止め方
「睡眠障害科という新しい科ができた」という表現がSNSで見られます。患者にとって「専門科が増えた」と映るのは自然な受け止め方ですが、後述するように制度の仕組みはやや異なります。
② 「日本人の5人に1人が睡眠問題を抱えている」という数字
今回の改正の背景説明として、「日本人の5人に1人が睡眠に関する問題を抱えているとされています」という言説が広く引用されています。この数字の根拠と精度については、次のセクションで一次資料に当たって確認します。
実際のところ(一次情報の確認)
改正の正確な内容:「新設」ではなく「組み合わせ標榜の追加」
厚生労働省の公表資料によると、今回の改正は「睡眠障害」という独立した診療科名の新設ではありません。「内科」などの基本診療科名と組み合わせて「睡眠障害内科」のように標榜できるようになる制度変更です。組み合わせ可能な疾病・病態はこれまで感染症・腫瘍・糖尿病・アレルギー疾患の4項目に限られていましたが、「睡眠障害」が5つ目として加わりました。約18年ぶりの追加とされています。なお、標榜するかどうかは各医療機関の任意の判断であり、実際に睡眠障害を専門的に診療している体制が整っていることが前提条件となります。
「5人に1人」の数字:実態は「約4人に1人」に近い
厚生労働省が実施する令和5年(2023年)国民健康・栄養調査によると、「睡眠で休養がとれている」と回答した成人は74.9%でした。逆に言えば、約4人に1人(25.1%)が慢性的な不眠状態にあることが報告されています。また、1日の睡眠時間が6時間未満の割合は男性38.5%・女性43.6%に上ることも報告されています。「5人に1人」という表現は調査方法や診断基準によって数値が異なる可能性があり、実態は20〜25%程度の幅で推移しているとみるのが適切とされています。
厚労省「睡眠ガイド2023」が示す推奨睡眠時間
厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人に対して個人差はあるものの6時間以上を目安にすることが示唆されています。ただし、必要な睡眠時間は体質・年齢・生活環境による個人差が大きく、「6時間で十分」と一律に断言できるものではないとされています。
読者として何に気をつけるか
「睡眠障害」の看板は専門性を自動的に保証しない
今後「睡眠障害内科」などを標榜する医療機関が増えてくる可能性がありますが、標榜していること自体が特定の専門資格や検査設備の保有を意味するわけではありません。不眠症・睡眠時無呼吸症候群・過眠症など睡眠障害の種類はさまざまで、対応できる検査や治療の範囲は施設によって異なる可能性があります。受診前に医療機関のウェブサイトや電話で、どのような睡眠の問題に対応しているかを確認しておくことをおすすめします。
睡眠の悩みは「自己診断」より「相談」から
「なかなか寝つけない」「昼間に強い眠気がある」「朝すっきり起きられない」といった症状は、生活習慣・ストレス・身体疾患・精神疾患など原因が多岐にわたるとされています。自己判断でサプリメントや市販薬に頼り続けるより、まずかかりつけ医や内科・精神科・心療内科に相談するのが安全な第一歩とされています。今後「睡眠障害」を標榜する医療機関が増えることで、相談の入り口がより見つけやすくなる可能性があります。
まず試せる生活習慣の見直し
厚生労働省の睡眠ガイドでは、医療機関を受診する前に日常生活で取り組める対策として、寝室の光・温度・音環境の整備、就寝前のカフェイン・アルコール・スマートフォンの制限、規則的な起床時間の維持などが示されています。こうした習慣の見直しを積み重ねることで睡眠の質が改善する可能性が示唆されており、継続しやすい対策として位置づけられています。
※本記事は公表情報をもとに中立的に整理したものです。情報は更新される可能性があり、健康に関する判断は一次情報の確認と医療機関への相談をおすすめします。