この記事の要点
- これまで「サプリメント」という言葉に法令上の定義はありませんでした。その定義案が2026年6月19日の中間とりまとめで初めて示されました
- サプリメントはこれまでどおり「食品」として扱われます。食品でも医薬品でもない第3の区分は作らない、という結論です
- 製造管理(GMP)の義務づけは錠剤・カプセル剤等の形状のものに限られ、グミなど一般の加工食品と同じ形のものは当面は対象外とされました
- ただし部会は「錠剤・カプセルではないから安全」という誤解が広まらないよう注意すべきだと、資料のなかで明記しています
- これは「中間とりまとめ」であって、決まった法律ではありません。施行日もまだありません
「サプリメント」という言葉は、すでに日常語として定着しています。ドラッグストアにも通販サイトにもその棚があり、多くの人が何らかの形で手に取ったことがあるはずです。ところが意外なことに、この言葉には長いあいだ法令上の定義がありませんでした。行政の通知のなかで対象範囲が示されたことはありましたが、法律が「サプリメントとはこれである」と線を引いたことは一度もなかったのです。
その線引きの案が、2026年6月に初めて公の文書として示されました。この記事では、その中身を一次資料で確認していきます。
📄 裏どりの概要
消費者庁が所管する食品衛生基準審議会 新開発食品調査部会が2026年(令和8年)6月19日付でとりまとめた「サプリメントの規制の在り方に関する新開発食品調査部会の中間とりまとめ」の本文を確認しました。あわせて、厚生労働省の第12回 厚生科学審議会 食品衛生監視部会(2026年7月1日開催)の配付資料「平成30年食品衛生法改正の施行状況等について」および参考資料1「検討スケジュールについて」を参照しています。中間とりまとめは同部会に参考資料2として報告されています。
なぜ今「サプリメントとは何か」を決めているのか
出発点は2024年の紅麹関連製品による健康被害の事案です。中間とりまとめの「背景・経緯」には、2024年(令和6年)5月31日の関係閣僚会合でとりまとめられた対応方針のなかに、「食品業界の実態を踏まえつつ、サプリメントに関する規制の在り方、許可業種や営業許可施設の基準の在り方などについて、必要に応じて検討を進める」と書かれていたことが記されています。
もう一つの流れが、2018年(平成30年)の改正食品衛生法に置かれていた「施行後5年を目途とした検討」という規定です。この法律の施行は2020年6月1日で、その5年後にあたる2025年(令和7年)10月23日の食品衛生監視部会から、見直しの検討が始まりました。
ここで少しややこしいのが、検討の担当が2つの役所に分かれている点です。中間とりまとめによれば、次のように役割分担されています。
| 検討事項 | 担当 | 審議会 |
|---|---|---|
| 事業者による健康被害情報の報告 | 厚生労働省 | 厚生科学審議会 |
| 営業の許可・届出 | 厚生労働省 | 厚生科学審議会 |
| サプリメントの定義 | 消費者庁 | 食品衛生基準審議会 |
| 製造管理の在り方 | 消費者庁 | 食品衛生基準審議会 |
定義と製造管理は「食品衛生法上の規格・基準の策定に関するもの」なので消費者庁、報告義務と営業の届出は厚生労働省、という切り分けです。今回の中間とりまとめは、このうち消費者庁側の2つについて、2025年11月27日から2026年6月9日までの計5回の審議を経て出されたものです。関連業界団体と消費者団体あわせて10団体からのヒアリングが行われています。
結論① サプリメントは「食品」のまま
最初の論点は、サプリメントを制度上どこに置くかでした。部会が検討した選択肢は3つです。
- 食品の一部として扱う
- 医薬品の一部として扱う
- 食品でも医薬品でもない第3の区分を新設する
結論は「従前のとおり、食品として整理することが適当である」でした。第3の区分(「サプリメント法」の新設を含む)を退けた理由として、資料は次の3点を挙げています。
第一に、執行の困難さです。食品や医薬品との関係を整理し直す必要が生じ、制度の運用に重大な混乱や困難が伴うことが想定される、とされています。
第二に、認識の変更コストです。サプリメントを扱う事業者や行政機関にすでに定着している認識を大きく変えることになる、という指摘です。
第三に、国際的な整合性です。欧米にもサプリメントを第3の区分として扱っている国はなく、仮に第3の区分にすると輸出入手続等に影響を及ぼすおそれがある、と書かれています。
もう一つ重要なのが、保健機能食品(特定保健用食品・機能性表示食品・栄養機能食品)を除外しないという判断です。中間とりまとめは「安全性の観点から、保健機能食品を除外することは適切でない」として、サプリメントを「食品の中で言わば横串として定義することが適当」としています。つまりトクホや機能性表示食品であっても、形状などの要件を満たせば「サプリメント」に含まれるという構造です。
結論② 定義案の全文と、「健康の維持・増進」が入らなかった理由
示された定義のイメージは次のとおりです。
「サプリメント」の定義(イメージ)
通常の食事による栄養摂取又は通常の食事による生理機能の調節を補助することが目的とされる食品であって、当該食品に含まれる成分の一部又は全部が製造工程において濃縮されたもの、錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤等の摂取の容易な形状であるものその他過剰摂取のおそれのあるもの
一読して長いのですが、構造は「目的」+「過剰摂取のおそれ」の2階建てです。
興味深いのは前半の「目的」の部分です。素直に考えれば「健康の維持・増進を目的とする食品」と書きたくなるところですが、部会はこれをあえて採用しませんでした。理由が資料に明記されています。「健康の維持・増進」を標ぼうするものは基本的に医薬品や保健機能食品に該当するものであり、消費者の誤解を招きかねないから、というのがその説明です。
代わりに使われたのが「栄養摂取」と「生理機能の調節」という表現でした。これは1980年代の研究で提唱された食品の3つの機能——一次機能(栄養)、二次機能(味覚・感覚)、三次機能(体調調節)——の考え方に対応させたもので、より客観的な表現を選んだ、と説明されています。
また「通常の食事による〜を補助する」という限定を置くことで、通常の液体調味料や粉末調味料、濃厚流動食といった「食事そのもの」を除外する狙いも示されています。
後半の「過剰摂取のおそれ」については、次の①〜③のいずれかに該当するものが範囲に入ると整理されました。
- ① 成分の一部または全部が製造工程において濃縮されたもの
- ② 錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤等の摂取の容易な形状であるもの
- ③ その他過剰摂取のおそれのあるもの
③は、特定の工程や形状によらなくても過剰摂取のおそれがあるものを包括的に対象とするために置かれた項目だと説明されています。なお生鮮食品は含まれません。社会通念上サプリメントの概念に含まれないため、というのが理由です。
結論③ GMPの義務づけは「錠剤・カプセル」まで。グミは当面外れる
買い手にとって最も実感に近いのが、この製造管理の話かもしれません。
GMP(Good Manufacturing Practice=適正製造規範)は、原料の受け入れから出荷まで、製品が設計どおりに一定の品質で作られることを担保するための管理手法です。これまでサプリメントに対しては、2024年3月11日付の通知(いわゆるGMP通知)などにより自主的な取り組みとして促されてきました。
中間とりまとめは、このうち錠剤・カプセル剤等食品についてはGMPの遵守を義務づけることが適当だと結論づけています。理由として、これらは形状や使用方法が医薬品に類似していること、水で飲み込む形で摂取されることが多く色や香りといった感覚では異常に気づきにくいことが挙げられています。
一方で、グミなど一般の加工食品と同じ形状のものについては、扱いが分かれました。こうした製品は嗜好品としての菓子類の製造ラインや工場で作られることもあり、従来のGMP通知でも対象として想定されていなかったため、錠剤・カプセルと同じ扱いをするのは「規制の実効性から見て困難な実情がある」として、当面の間、GMP遵守義務の対象から除外することもやむを得ないとされています。
原材料を製造する事業者についても同様に、天然由来の原材料は製造工程が多岐にわたり、一般の食品工場で作られたものを転用している場合もあることから、一律にGMP遵守義務を課すことは困難だとして適用範囲外と整理されました。
ただし部会は、この除外を恒久的なものとは位置づけていません。米国ではグミ形状のサプリメントであってもGMPの遵守が義務づけられていることに触れたうえで、今回の除外は「当面の措置」であり、義務づけに至る具体的な道筋を明確化することが必要だと書いています。
部会自身が念を押している2つの誤解
この中間とりまとめで個人的に最も印象に残ったのは、部会が自分たちの結論が誤読されることを先回りして警告している箇所です。2つあります。
誤解その1「錠剤・カプセルではないから安全」。資料には、グミ等をGMP義務の対象から除外することについて、「錠剤、カプセル剤等食品ではないから安全である」といった趣旨の誤解が広まらないよう、リスクコミュニケーションとして積極的に情報発信する等、必要な取組を進めることが重要である、と明記されています。除外の理由はあくまで規制の実効性であって、リスクが否定されたからではない、という念押しです。
誤解その2「GMP準拠なら摂りすぎても平気」。これも資料の言葉がはっきりしています。GMPは製品を設計されたとおりに製造し、その均質化を図るための手法である。したがって「おいしい」といった理由から過剰に摂取してしまうリスクは、GMPの遵守によっても低減されるものではない——という趣旨のことが書かれています。作り方の管理と、飲み方の問題は別だ、ということです。
製造の質が上がることと、摂取量の判断が要らなくなることは、まったく別の話です。「GMP準拠」という表示を見かけたときに、この区別を持っておくと読み違えずに済みます。
厚生労働省側の動き──健康被害の報告を義務にする案
ここまでは消費者庁側の検討でした。厚生労働省側では、2026年7月1日の食品衛生監視部会に「対応方針案」が示されています。
現在の食品衛生法では、食品全般について、営業者が健康被害(医師の診断を受けたものに限る)の情報を得た場合に自治体へ報告することは努力義務にとどまっています。義務になっているのは指定成分等含有食品、そして食品表示法等に基づく特定保健用食品と機能性表示食品です。
資料の対応方針案は、新たに定義される「サプリメント」についても、反復・継続して摂取されることが見込まれ、健康被害が発生した場合に被害拡大のおそれが高いことから、取り扱う営業者に自治体への健康被害報告を義務づけてはどうか、と提案しています。報告の対象は機能性表示食品等と同じく「健康被害の発生及び拡大のおそれがある旨の情報」で、具体的には重篤な事例が発生した場合、または短期間に複数の症例が発生した場合が想定されています。
あわせて、サプリメントの製造・加工施設を把握する仕組みの検討も進んでいます。現在は「いわゆる健康食品の製造・加工業」としての営業届出や、菓子製造業などの営業許可のなかで扱われており、サプリメントを製造しているかどうかを把握する仕組みがないことが課題として挙げられています。営業届出の記載事項に「サプリメントの製造・加工の有無」を加える案が示されています。
これは「決定」ではない──読むときの距離感
最後に、この記事でいちばん強調しておきたい点です。
ここまで紹介してきたのは、「中間とりまとめ」と「対応方針案」であって、成立した法律ではありません。施行日も決まっていません。中間とりまとめ自身が、「厚生科学審議会に報告の上、サプリメントの規制の在り方に関する他の検討事項とともに、更に所要の検討を進めていく必要がある」と述べています。定義についても「今後の検討により調整の必要が生じ得ることを踏まえ、本部会としては、上記の案をイメージとして示すものである」と、案であることを明示しています。
ですから「2026年からサプリの定義が変わりました」と読むのは正確ではありません。正しくは「変わる方向で議論が進み、その骨格が初めて文書の形で見えた」段階です。
そのうえで、買い手として今日から使える視点を挙げるとすれば、次の2つでしょうか。
ひとつは、形状は安全性の指標ではないということ。グミ型のサプリメントが増えていますが、それは食べやすさの工夫であって、製造管理の水準を示すものではありません。部会が当面の除外に際してわざわざ注意を促したのは、まさにこの点でした。
もうひとつは、体調の変化に気づいたときの行動です。健康食品の摂取後に不調を感じた場合は、摂取を中止して医療機関に相談することが一般的に推奨されています。報告制度が整えられていく方向にあるとはいえ、情報が集まる出発点は受診時の申告です。「どの製品を、どれくらいの期間、どれだけ摂っていたか」を伝えられるようにしておくと、記録としての価値が生まれます。
制度は、事故が起きてから形を変えます。今まさに形が変わりつつある領域の議論を、決まってから知るのではなく、決まる前に眺めておく。一次資料を読む値打ちは、だいたいそのあたりにあります。
※本記事は厚生労働省および消費者庁の公表資料をもとに中立的に整理したものです。紹介した内容は審議会の中間とりまとめおよび対応方針案の段階であり、今後の検討により変更される可能性があります。個別の商品や健康状態に関する判断は、一次情報の確認と医療機関へのご相談をおすすめします。