「注目トレーニー名鑑」第4回は、日本ボディビル史上に燦然と輝く絶対王者にして、世界の頂点にまで到達した唯一無二の存在、鈴木雅さんです。分割法シリーズ第2回・背中トレで解説した広背筋の使い方を、これほど緻密に言語化できる人は他にいません。「背中を学ぶなら鈴木雅」は、日本のトレーニー共通の合言葉です。
この記事の要点
- 日本選手権9連覇(2010〜2018)という空前の記録を持つ絶対王者
- 2016年にアーノルドクラシック・アマチュアと世界選手権の2冠を達成
- 「細かすぎる」と愛される理論的解説で、背中トレ学習の屈指の教材を提供
- 現在はゴールドジムを拠点に、指導・セミナーで日本のフィットネスを牽引
何者か——日本の頂点に9年間立ち続けた男
鈴木雅さんは、JBBF日本ボディビル選手権を2010年から2018年まで9連覇した、文字通りの絶対王者です。日本選手権は、全国の強豪が集うボディビル競技の国内最高峰。そこで一度優勝するだけでも生涯の栄誉とされるなか、9年間にわたり一度も王座を譲らなかったという事実は、日本のボディビル史において別格の記録です。しかもその間、挑戦者は毎年進化してくる。王者であり続けるとは、誰よりも速く進化し続けることに他なりません。
実績——アーノルドクラシックと世界選手権、2つの世界タイトル
鈴木さんの偉大さは、国内にとどまりません。2016年3月、アーノルド・シュワルツェネッガー主催の世界最大級のスポーツの祭典「アーノルド・スポーツ・フェスティバル」で、アーノルドクラシック・アマチュアボディビル80kg級を制覇。さらに同年11月には、IFBB男子世界アマチュアボディビル選手権80kg級でも優勝を果たします。国別対抗の色彩が濃く、各国の代表級がしのぎを削る世界選手権での優勝は、日本ボディビル界の悲願でした。同一年に2つの世界タイトルを獲得した2016年は、日本のトレーニング史に刻まれる金字塔の年と言ってよいでしょう。
驚くべきはその出発点です。福島県出身の鈴木さんは、少年時代は小柄で細身。大学時代に友人とジムに通い始めたのがきっかけで、21歳からボディビルの世界に入りました。エリート街道ではなく、「やればやるほど体が変わる面白さ」に魅せられて積み上げた20年。デビュー2年目の2005年に東京選手権を制して「ゴールデンボーイ」と呼ばれて以降の躍進は、才能と探究心の掛け算がもたらした必然でした。
「考えるボディビル」——理論家としての凄み
鈴木さんの代名詞は、その圧倒的な理論性です。骨格の構造、関節の角度、筋肉の起始停止、マシンの軌道特性——それらを踏まえて「なぜこの種目を、この角度で、このグリップで行うのか」を徹底的に言語化する解説スタイルは、「細かすぎる」と愛される域に達しています。YouTubeで公開されている部位別解説シリーズ(BULK UP CAMPなど)では、背中・胸・肩・腕・脚の各部位について、家庭のダンベルからジムのマシンまで、機材ごとの最適解を惜しみなく公開。特に、種目数が多く迷子になりがちな背中トレを体系的に整理した解説は、当シリーズ第2回の内容をさらに深掘りする屈指の教材です。
さらに、その知見は競技の枠を超えて評価されています。プロ野球・読売ジャイアンツのトレーニング指導に招かれるなど、トップアスリートの世界からも「体づくりの専門家」として厚い信頼を得ているのです。
現在——王者から「育てる人」へ
鈴木さんは株式会社THINKフィットネスに所属し、ゴールドジムのトレーナー・アドバイザーとして活動しています。選手として頂点を極めた現在は、全国でのセミナー開催、初心者からコンテスト出場者までを対象とした指導、マッスルゲートなど大会イベントへの携わりを通じて、日本のフィットネス文化そのものを育てるフェーズへ。Instagramでの発信や各種メディア出演も継続しており、「学べるレジェンド」として第一線に立ち続けています。王者の知見に誰もがアクセスできる環境をつくってくれていること自体が、日本のトレーニーにとって大きな財産です。
私たちが学べるポイント
- 感覚を理論で裏づける:「効いた気がする」で終わらせず、骨格と軌道から逆算する鈴木さんの思考法は、伸び悩みを打開する強力な武器になります。
- 基本種目の解像度を上げる:ラットプルダウンひとつでも、グリップ・軌道・肩甲骨の使い方で別物になる。既知の種目を深く掘る姿勢は全部位に応用できます。
- 小柄なスタートでも頂点に立てる:恵まれた体格からの出発ではなかったからこそ、その方法論は私たち一般トレーニーにとって再現性のある希望です。
まとめ
- 日本選手権9連覇(2010〜2018)という空前の記録を持つ絶対王者
- 2016年にアーノルドクラシック・アマチュアと世界選手権の2冠を達成
- 「細かすぎる」と愛される理論的解説で、背中トレ学習の屈指の教材を提供
- 現在はゴールドジムを拠点に、指導・セミナーで日本のフィットネスを牽引
次回は、日本人として初めてミスター・オリンピアの舞台に立った海外挑戦のパイオニア、山岸秀匡さんを紹介します。
※本記事の情報は2026年7月時点の公開情報に基づいています。最新の活動状況は各公式チャンネル・アカウントをご確認ください。