この記事の要点
- 体組成計の数値は、骨密度の検査に使うX線の装置で測った値とおおむね連動する(相関がある)ことが、日本の複数の研究で報告されています。ただし「連動する」ことと「同じ値が出る」ことは別でした。
- 40〜78歳の153人を調べた研究(①)では、足で乗るだけの体脂肪計の体脂肪率が、X線の装置の値から1割以内に収まった人は男女とも半分に届きませんでした(女性45.1%・男性47.1%)。やせ型の人は高めに、脂肪の多い人は低めに出る傾向でした。
- 高齢者1,617人の研究(④)では、業務用の体組成計で測った手足の筋肉量がX線の装置より平均で約9%少なく出て、「筋肉量が少ない」と判定される人の割合が38.1%対9.1%と4倍以上違いました。
- 同じ人を2つの体組成計で続けて測ると、機種によって胴体の筋肉量が3.6〜4.5kg違いました(⑤)。違う機種の数値を比べても意味は薄いと考えられます。
- 運動で汗をかいた後や水を飲んだ後では、体脂肪率の表示が変わったと報告されています(⑦)。
- 筋トレで増えた分を体組成計が拾えるかを調べた海外の2つの試験(⑧⑨)では、平均の変化はおおむね追えても、2つの方法で一人ひとりの変化量が食い違う幅は増えた量より大きい、あるいは増えた分を検出できない、という結果でした。
体重計に乗ると、体脂肪率も筋肉量も「基礎代謝」も一度に表示される。家庭用の体組成計はとても便利です。では、その数字はどのくらい当てにしてよいのでしょうか。
このブログでも以前、筋トレの指針を紹介した記事で「タニタMC-780A等の精密な体組成計で現状を正確に把握し」と書きました。しかし、体組成計がどのくらい正確なのかを示す研究は示していませんでした。
この記事では、「体組成計の体脂肪率や筋肉量は、どのくらい正確なのか」「筋トレで増えた筋肉を体組成計で確かめられるのか」を、日本の7つの研究と海外の2つの試験で確かめます。
前提として、体組成計の多くは生体電気インピーダンス法(=体に弱い電気を流し、その流れにくさから体の中身を推定する方法)を使っています。水分を多く含む筋肉は電気を通しやすく、脂肪は通しにくい、という性質を利用しています。つまり、筋肉や脂肪の重さを直接量っているのではなく、電気の通りやすさと身長・体重などから計算式で推定した値です。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Mitsui T, et al. "Accuracy of Body Fat Assessment by Bioelectrical Impedance in Japanese Middle-Aged and Older People." J Nutr Sci Vitaminol 2006;52(2):154-156 | 名古屋大学など。40〜78歳の地域住民153人で、足で乗る体脂肪計の体脂肪率をX線の装置と比較 | 全文無料(J-STAGE) |
| ② | Kim M, et al. "Comparison of segmental multifrequency bioelectrical impedance analysis with dual-energy X-ray absorptiometry for the assessment of body composition in a community-dwelling older population." Geriatr Gerontol Int 2015;15(8):1013-1022 | 東京都健康長寿医療センター研究所。65〜87歳の551人で、手足と胴体を別々に測る体組成計とX線の装置を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ③ | Tanaka NI, et al. "Accuracy of segmental bioelectrical impedance analysis for predicting body composition in pre- and postmenopausal women." J Clin Densitom 2015;18(2):252-259 | 国立健康・栄養研究所など。30〜88歳の女性559人で、閉経の前後で精度が違うかを比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ④ | Nakagata T, et al. "Agreement and systematic difference between bioelectrical impedance analysis and dual-energy X-ray absorptiometry for appendicular lean mass in 1617 community-dwelling older adults: The Bunkyo Health Study." Clin Nutr ESPEN 2026;72:102961 | 医薬基盤・健康・栄養研究所、順天堂大学など。「文京ヘルススタディ」に参加した65〜84歳1,617人で、手足の筋肉量を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑤ | 貞清香織ほか「家庭用身体組成計の臨床利用の検討」『理学療法科学』2018;33(1):151-154 | 国際医療福祉大学。学生191人を、業務用の体組成計と家庭用の体組成計で続けて測定 | 全文無料(J-STAGE) |
| ⑥ | Ohara K, et al. "Similarities and discrepancies between commercially available bioelectrical impedance analysis system and dual-energy X-ray absorptiometry for body composition assessment in 10-14-year-old children." Sci Rep 2023;13(1):17420 | 関西医科大学など。兵庫県淡路市の小中学生443人で、⑤と同じ家庭用の機種をX線の装置と比較 | 全文無料(PMC10576075) |
| ⑦ | Demura S, et al. "The influence of transient change of total body water on relative body fats based on three bioelectrical impedance analyses methods." J Sports Med Phys Fitness 2002;42(1):38-44 | 金沢大学。18〜23歳の30人で、運動で汗をかいた後と水を飲んだ後の体脂肪率の表示を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑧ | Schoenfeld BJ, et al. "Comparison of Multifrequency Bioelectrical Impedance vs. Dual-Energy X-ray Absorptiometry for Assessing Body Composition Changes After Participation in a 10-Week Resistance Training Program." J Strength Cond Res 2020;34(3):678-688 | アメリカ。若い男性21人の10週間の筋トレの前後で、体組成計とX線の装置の「変化量」を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑨ | Nascimento MA, et al. "Agreement Between Bioelectrical Impedance and Dual-Energy X-Ray Absorptiometry to Track Changes in Fat-Free Mass After Resistance Training in Older Women." J Strength Cond Res 2020;34(6):1700-1708 | ブラジル。高齢女性43人の12週間の筋トレの前後で、同じく「変化量」を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
①⑤⑥は全文を確認し、数値は本文と表から取りました。②③④⑦⑧⑨は全文が有料のため、要旨に書かれた内容だけを使っています。
設計──「X線の装置」を物差しにして比べる
体組成計の正確さを調べる研究の多くは、次のような手順をとっています。
- 同じ人を、体組成計と基準になる装置で続けて測る:基準によく使われるのが二重エネルギーX線吸収法(=2種類の弱いX線を当てて、骨・脂肪・それ以外の組織を見分ける装置。骨密度の検査に使われるものと同じ方式)です。以下では「X線の装置」と書きます。⑦は、水中で体重を量って体の密度を求める方法を基準にしています。
- 2つの値がどれだけ連動するか(相関)と、どれだけずれるか(差)を別々に見る:相関が高くても、いつも3kg少なく出る機械なら「連動はするが同じ値は出ない」ことになります。この記事では、この2つを分けて読みます。
- 筋トレの前後で測って「増えた量」をそろえて比べる(⑧⑨):一度測った値が正しいかではなく、変化を追えるかを調べる設計です。
なお、X線の装置も筋肉そのものを数えているわけではなく、「脂肪でも骨でもない組織」の重さを測っています(この中には筋肉のほか、内臓や皮膚、水分も含まれます)。以下で「筋肉量」と書くとき、多くは手足のこの組織の重さのことです。
結果①──数値はおおむね連動するが、同じ値は出ない(①②③④)
①は名古屋大学などの研究者らが、40〜78歳の地域住民153人(女性102人・平均63.6歳、男性51人・平均72.8歳)を調べたものです。足で乗るだけの両足型の体脂肪計(タニタ TBF-210)と、X線の装置で体脂肪率を測っています。参加者は3時間以上食事をとらずに測定を受けました。
| ①の結果 | 女性(102人) | 男性(51人) |
|---|---|---|
| 2つの体脂肪率の相関 | 0.79 | 0.69 |
| X線の装置の値から1割以内に収まった人 | 46人(45.1%) | 24人(47.1%) |
| 1〜2割ずれた人 | 39人(38.2%) | 19人(37.3%) |
| 2割以上ずれた人 | 17人(16.7%) | 8人(15.7%) |
「1割以内」は体脂肪率そのものに対する割合で、たとえばX線の装置で30%なら、27〜33%に収まれば「1割以内」です。著者らは、相関の高さより、基準とのずれの大きさのほうが重要だと述べています。
ずれ方には傾向がありました。男女とも、体脂肪の少ない人では高めに、多い人では低めに表示され、ずれが最も小さかったのは中くらいの人でした。女性を年齢で分けると、若い組では高めに、中間と年長の組では低めに出て、ずれが最も大きかったのは中間の組(平均64.1歳)でした。著者らは、学術用の機器と家庭用の機器の違いが、研究ごとに精度の評価が分かれる一因かもしれないとしています。
※読み取りに注意:①の表1の男性のBMIは「21.2」と書かれていますが、同じ表の平均身長162.8cm・平均体重61.2kgから計算すると約23になります。平均値どうしの計算は個人のBMIの平均と一致しないこともあるため、どちらが正しいかはこの論文からは判断できません。結論には関わらない部分です。
②は東京都健康長寿医療センター研究所の研究で、65〜87歳の551人(男性241人・女性310人)を、手足と胴体を別々に測るタイプの体組成計(複数の周波数で測る方式)とX線の装置で測っています。
| ②の結果(要旨) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 全身の脂肪量:連動の強さ(決定係数)と推定の誤差 | 0.91・1.4kg | 0.94・1.2kg |
| 全身の「脂肪でも骨でもない組織」:同上 | 0.88・1.9kg | 0.83・1.5kg |
| ずれの向き | 体組成計は脂肪量を多めに、脂肪でも骨でもない組織を少なめに推定 | |
著者らは、体組成計は高齢者の体組成を推定する「よい代わり」になるとしながらも、脂肪は多め・筋肉側は少なめに出るという一定のずれがあると結論しています。全身の値では、値の大きい人ほどずれが大きくなる傾向(比例したずれ)も見られましたが、手足の値ではその傾向は見られなかったとされています。
③は国立健康・栄養研究所などの研究で、30〜88歳の女性559人を閉経の状況で4群に分け、手足と胴体を別々に測るタイプの体組成計(1つの周波数で測る方式)とX線の装置を比べています。要旨によると、閉経の前後にかかわらず、体組成計は体脂肪率と脚の筋肉側の量をわずかに多めに、全身と腕の筋肉側の量を少なめに推定しました。誤差の目安として、体脂肪率で5.3〜6.7%、脚で5.1〜6.1%、全身で6.2〜7.6%、腕で2.8〜3.7%という数値が示されています。
※読み取りに注意:③の要旨では、これらの数値のうち体脂肪率の分だけに「推定の標準誤差」という説明が付いており、ほかの数値が同じ意味なのか、ずれの大きさそのものなのかは、要旨からは判別できません。
閉経後の女性では脚の値の誤差が大きく、全身・腕・体脂肪率の誤差は閉経前の女性のほうが大きかったとされ、著者らは「脚の値を目的にしない限り、閉経後の女性でも精度は劣らない」とまとめています。
④は医薬基盤・健康・栄養研究所や順天堂大学などの研究者らが、「文京ヘルススタディ」に参加した65〜84歳の1,617人(男性680人・女性937人)を調べたものです。前の晩から食事をとらずに、朝に業務用の体組成計(InBody 770)とX線の装置で手足の筋肉側の量を測っています。
| ④の結果(要旨) | 数値 |
|---|---|
| 2つの値の相関 | 0.95 |
| 体組成計の値がX線の装置より少なかった割合(平均) | 約9.2%(男性 約7.0%・女性 約10.7%) |
| 差の平均と、95%の人が収まる範囲 | −1.64kg(−4.14〜+0.87kg) |
| 「筋肉量が少ない」と判定された人の割合 | 体組成計 38.1% / X線の装置 9.1% |
| 体組成計の値を1.10倍に補正した場合 | 9.7%(X線の装置とほぼ同じ) |
相関が0.95と非常に高いのに、「筋肉量が少ない人」の割合は4倍以上違っていました。基準値が同じでも、機械によって値が一定の割合でずれていれば、判定の結果は大きく変わるということです。著者らは、この結果は特定の機器と方式の組み合わせについてのもので、ほかの集団でも確かめる必要があるとしています。
結果②──機種が違えば、筋肉量は数kg違う(⑤⑥)
⑤は国際医療福祉大学の貞清香織先生らが、学生191人(男性108人・女性83人、平均19.6歳)を、業務用の体組成計(InBody520)と家庭用の体組成計(タニタ インナースキャン BC-622)で、同じ日に間をあけずに測った研究です。測定は食後2時間以上たってから、運動や入浴の直後を避けて行われました。⑤はX線の装置を使っていないので、どちらが正しいかではなく、機種でどれだけ違うかを見た研究です。
| ⑤の表1(平均) | 男性 業務用 | 男性 家庭用 | 女性 業務用 | 女性 家庭用 |
|---|---|---|---|---|
| 体脂肪率 | 15.7% | 16.1%(差なし) | 27.6% | 29.2% |
| 全身の筋肉量 | 49.5kg | 50.3kg | 36.7kg | 36.6kg(差なし) |
| 体幹の筋肉量 | 22.9kg | 27.4kg | 17.1kg | 20.7kg |
| 右腕の筋肉量 | 2.8kg | 2.5kg | 1.8kg | 1.6kg |
| 右脚の筋肉量 | 8.4kg | 9.1kg | 6.0kg | 6.4kg |
太字は、もう一方の機種より統計的に有意に高かった値です。同じ人を続けて測っても、胴体の筋肉量は男性で4.5kg、女性で3.6kgの差があり、腕は業務用、脚と胴体は家庭用のほうが高く出ました。一方で、2つの機種の値の相関は、男性ではすべての項目で0.82以上と高く、女性でも多くの項目で高い値でした(低かったのは、手足の筋肉量から計算する指数の0.50など)。体重も家庭用のほうが約1kg重く出ており、著者らは業務用の機種が衣服の分として0.5kgを差し引くことや、家庭用の機種の握り部分の重さが影響した可能性を挙げています。
著者らは、機種による違いがあることを考慮すれば家庭用の体組成計も臨床で利用できると結論しています。対象が健康な若者に限られること、誤差の検討が不十分なことは、著者ら自身が限界として挙げています。
⑥は関西医科大学などの研究者らが、兵庫県淡路市の10〜14歳の小中学生443人(男子226人・女子217人)を、⑤と同じ家庭用の機種(BC-622)とX線の装置で測った研究です。
| ⑥の表2(平均) | 家庭用の体組成計 | X線の装置 |
|---|---|---|
| 男子の体脂肪率 | 16.0% | 17.6%(約1.6ポイント低く表示) |
| 女子の体脂肪率 | 21.4% | 21.5% |
| 骨の重さ(男子/女子) | 1.8kg/1.9kg | 1.1kg/1.1kg |
2つの値の相関は0.853〜1.000と高い一方、すべての項目で一定のずれや、値の大きさに比例したずれが見られました。また、BMIが最も低い4分の1の子どもでは、脂肪量と体脂肪率の一致が悪かったと報告されています。①で「やせ型の人ほど高めに出る」とされたことと、方向は違いますが「やせ型でずれやすい」という点は共通しています。
著者らは、体組成計はX線の装置とまったく同じ値は出せないが、同じ人が日々の健康管理のために続けて使うには十分な性能だと結論しています。ただし⑥は一度ずつ測った研究で、同じ子どもを繰り返し測って変化を追えるかどうかは、調べていません。⑥は日本学術振興会の研究費によるもので、著者らは利益相反なしと申告しています。
結果③──運動や水分で表示は動く。筋トレで増えた分は拾えるか(⑦⑧⑨)
⑦は金沢大学の研究で、18〜23歳の30人(男女15人ずつ)を対象に、手から足・手から手・足から足に電気を流す3種類の体組成計で、自転車こぎで60分汗をかく前と後、さらに水を飲んだ後に体脂肪率を測りました。要旨によると、
- 運動の後は、3種類とも運動の前より体脂肪率が低く表示された
- 水を飲んだ後は、3種類とも基準の方法より体脂肪率が高く表示された
とされ、著者らは「どの方式でも、運動・発汗・飲水による体の水分の変化が体脂肪率に反映される」と結論しています。どれくらいの量を飲んだのか、表示が何ポイント動いたのかは、要旨には書かれていません。
⑧はアメリカの大学などの研究者らが、若い男性21人(平均22.9歳、平均BMI 26.9)に全身の筋トレを10週間行ってもらい、前後の変化を体組成計(複数の周波数で測る方式)とX線の装置で比べた試験です。
| ⑧の結果(要旨) | 体組成計の変化 | X線の装置の変化 | 2つの方法の食い違いの目安 |
|---|---|---|---|
| 体脂肪率 | −1.05ポイント | −1.28ポイント | 1.15ポイント |
| 脂肪量 | −1.13kg | −1.19kg | 1.0kg |
| 脂肪以外の重さ(除脂肪量) | +0.10kg | +0.37kg | 1.5kg |
平均の変化は2つの方法で統計的な差がなく、著者らは体組成計を「変化を追う方法として受け入れられる」としています。ただし、筋肉側の増加は体組成計では約4分の1しか表示されておらず、一方の変化量からもう一方を予測したときの誤差の目安(推定の標準誤差1.5kg)は、増えた量そのもの(0.37kg)より大きい結果でした。つまり、平均では近くても、一人ひとりで見ると2つの方法の変化量はかなり食い違いうるということです。腕・脚・胴体ごとの変化については、2つの方法は互いの予測にほとんど役立たなかったとされています。
※読み取りに注意:⑧は題名と要旨の方法部分では「10週間の筋トレ」としていますが、要旨の結論では「食事と運動を組み合わせたプログラム」と書かれています。食事の指導がどの程度あったのかは、要旨からは分かりません。
⑨はブラジルの研究で、平均65.2歳の女性43人が12週間(週3回・8種目・各2セット・10〜15回)の筋トレを行いました。
- X線の装置では、除脂肪量が平均0.65kg増えた(有意)
- 1つの周波数で測る体組成計の機器の表示値では、有意な変化は見られなかった
- 高齢女性向けの6つの計算式のうち、有意な増加を示したのは2つだけ(0.55kg、0.61kg)で、ばらつきはX線の装置の2倍以上(標準偏差1.69kg、1.88kg 対 0.82kg)
著者らは、1つの周波数で測る方式の体組成計では、12週間の筋トレによる変化を追うのに十分な精度が得られない可能性があると結論しています。
この研究が言えないこと
- あなたの家の体組成計の精度は分からない。研究で使われた機種は、①が2006年の論文で使われた両足型、⑤⑥が家庭用の1機種、④⑤が業務用の機種です。②③⑧⑨は要旨に機種名がなく、家庭用か業務用かも分かりません。計算式は機種やメーカーごとに違い、⑤のように機種で数kg違うことがあるため、結果を別の機種にそのまま当てはめることはできません。
- X線の装置も「筋肉そのもの」を測ってはいない。基準にした装置が測っているのは「脂肪でも骨でもない組織」で、筋肉以外の組織や水分も含みます。基準とのずれは「体組成計の誤差」と言えますが、基準自体も筋肉の量そのものではありません。
- 筋トレの変化を追えるかの根拠は少ない。筋トレの前後で比べた⑧⑨は海外の試験で、21人と43人の小規模なものです。今回、日本人で筋トレの前後を体組成計と基準の装置の両方で比べた研究は、確認できませんでした。⑧⑨は日本人集団のデータではありません。
- 年代に偏りがある。日本の研究の対象は、小中学生(⑥)、大学生(⑤⑦)、40〜78歳(①)、高齢者(②④)、30〜88歳の女性(③)で、筋トレに関心のある働き盛りの男性を中心に調べたものはありません。
- 食事や入浴、時間帯の影響の大きさは分からない。⑦は運動と飲水の影響を示していますが、何ポイント動いたかは要旨にありません。食事・入浴・時間帯の影響は今回読んだ資料では直接調べられておらず、⑥の著者らも、測定時刻をそろえられなかったことを限界に挙げています。
- 半分以上が要旨だけの情報。②③④⑦⑧⑨は全文が有料で、細かい条件や表の数値は確認できていません。③の誤差の数値の意味も、要旨からは判別できませんでした。
- 研究費と利益相反の確認は一部だけ。⑥は日本学術振興会の研究費で利益相反なし、③は厚生労働科学研究費と日本学術振興会、④は文部科学省の研究費の記載が文献データベースにあります。①⑤は全文に研究費・利益相反の記載が見当たらず、②⑦⑧⑨は要旨だけのため確認できていません。体組成計のメーカーとの関係は、確認できた範囲では記載がありませんでした。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
- 「正確に把握」ではなく「傾向を見る道具」と考える:以前このブログで書いた「精密な体組成計で現状を正確に把握し」は、今回読んだ資料からは言い過ぎでした。①では1割以内に収まった人が半分に届かず、④では業務用の機種でも平均で約9%の差がありました。表示された数値は「ある計算式による推定値」として受け止めるのが無難だと考えられます。
- 比べるのは同じ機種どうしだけ:⑤のように、機種が違えば胴体の筋肉量が3.6〜4.5kg違うことがあります。ジムの機械と家の機械の数値を並べて「筋肉が減った」と考えるのは避けたほうがよさそうです。
- 測る条件をそろえる:⑦では、運動や飲水の後で体脂肪率の表示が変わりました。⑤では、機器の説明書に従って食後2時間以上たってから、運動や入浴の直後を避けて測っています。毎回、同じ時間帯・同じ状態で測るほうが、日々の上下に振り回されにくいと考えられます。
- 1回の数値より、数週間の流れを見る:⑧では、平均の変化はおおむね追えた一方、2つの方法の変化量の食い違いの目安は1.5kgありました。数百グラムの増減は誤差の範囲に埋もれてしまう可能性があります。
- 部位別の筋肉量は特に慎重に:⑤では部位によって機種の差が大きく、⑧でも部位ごとの変化は2つの方法で一致しませんでした。「右脚だけ筋肉が増えた」といった細かな読み取りは難しいと考えられます。
- 筋トレの成果は、ほかの記録と合わせて見る:⑨では、X線の装置で増えた筋肉側の量を、体組成計の表示値では捉えられませんでした。扱える重さや回数、腕や太ももの周囲の長さなど、体組成計以外の記録も合わせて見ると判断しやすいかもしれません。
なお、体の水分量や体型によって、体組成計のずれ方には個人差があるとされています。
まとめ
「体組成計の体脂肪率や筋肉量は正確か」について、今回読んだ資料からは、次のように整理できます。
- 体組成計の値は、X線の装置の値とおおむね連動すると報告されています(①②③④⑥)。相関の強さは研究によって0.69〜0.95ほどと幅があります。
- ただし同じ値は出ず、やせ型の人・脂肪の多い人でずれやすく(①⑥)、業務用の機種でも筋肉量が平均で約9%少なく出た研究があります(④)。
- 機種が違えば筋肉量は数kg違うことがあり(⑤)、運動や飲水で表示は変わります(⑦)。
- 筋トレによる変化は、平均ではある程度追えても、一人ひとりで見ると2つの方法の食い違いが増えた量より大きく、増えた分を検出できなかった試験もあるという海外の報告があります(⑧⑨)。
「体組成計はでたらめ」とも「体組成計で正確に分かる」とも、資料からは言えません。現時点では、同じ機種・同じ条件で測り続ければ大まかな傾向はつかめる可能性があるが、1回の数値や数百グラムの変化、部位別の値をそのまま信じるのは難しい、というのが資料から言える範囲だと考えられます。
出典(一次資料)
- Mitsui T, Shimaoka K, Tsuzuku S, Kajioka T, Sakakibara H. Accuracy of Body Fat Assessment by Bioelectrical Impedance in Japanese Middle-Aged and Older People. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2006;52(2):154-156. doi:10.3177/jnsv.52.154 全文(J-STAGE)
- Kim M, Shinkai S, Murayama H, Mori S. Comparison of segmental multifrequency bioelectrical impedance analysis with dual-energy X-ray absorptiometry for the assessment of body composition in a community-dwelling older population. Geriatr Gerontol Int. 2015;15(8):1013-1022. doi:10.1111/ggi.12384 要旨(Europe PMC)
- Tanaka NI, Hanawa S, Murakami H, Cao ZB, Tanimoto M, Sanada K, Miyachi M. Accuracy of segmental bioelectrical impedance analysis for predicting body composition in pre- and postmenopausal women. J Clin Densitom. 2015;18(2):252-259. doi:10.1016/j.jocd.2014.07.002 要旨(Europe PMC)
- Nakagata T, Yamada Y, Tabata H, Someya Y, Kaga H, Kawamori R, Watada H, Tamura Y. Agreement and systematic difference between bioelectrical impedance analysis and dual-energy X-ray absorptiometry for appendicular lean mass in 1617 community-dwelling older adults: The Bunkyo Health Study. Clin Nutr ESPEN. 2026;72:102961. doi:10.1016/j.clnesp.2026.102961 要旨(Europe PMC)
- 貞清香織, 佐々木拓良, 杉田裕汰, 前田聖也, 遊佐彩野, 渡邉真奈, 貞清秀成, 石坂正大, 久保晃. 家庭用身体組成計の臨床利用の検討. 理学療法科学. 2018;33(1):151-154. doi:10.1589/rika.33.151 全文(J-STAGE)
- Ohara K, Nakamura H, Kouda K, Fujita Y, Mase T, Momoi K, Nishiyama T. Similarities and discrepancies between commercially available bioelectrical impedance analysis system and dual-energy X-ray absorptiometry for body composition assessment in 10-14-year-old children. Sci Rep. 2023;13(1):17420. doi:10.1038/s41598-023-44217-0 全文(PMC10576075)
- Demura S, Yamaji S, Goshi F, Nagasawa Y. The influence of transient change of total body water on relative body fats based on three bioelectrical impedance analyses methods. Comparison between before and after exercise with sweat loss, and after drinking. J Sports Med Phys Fitness. 2002;42(1):38-44. 要旨(Europe PMC)
- Schoenfeld BJ, Nickerson BS, Wilborn CD, Urbina SL, Hayward SB, Krieger J, Aragon AA, Tinsley GM. Comparison of Multifrequency Bioelectrical Impedance vs. Dual-Energy X-ray Absorptiometry for Assessing Body Composition Changes After Participation in a 10-Week Resistance Training Program. J Strength Cond Res. 2020;34(3):678-688. doi:10.1519/JSC.0000000000002708 要旨(Europe PMC)
- Nascimento MA, Silva DRP, Ribeiro AS, Pina FLC, Gerage AM, Gobbo LA, Mayhew JL, Cyrino ES. Agreement Between Bioelectrical Impedance and Dual-Energy X-Ray Absorptiometry to Track Changes in Fat-Free Mass After Resistance Training in Older Women. J Strength Cond Res. 2020;34(6):1700-1708. doi:10.1519/JSC.0000000000002581 要旨(Europe PMC)