この記事の要点
- 「有酸素運動をすると筋トレの効果が落ちる(筋肉がつきにくくなる)」という話を、海外の統合分析(複数の研究をまとめて計算し直す分析)4本で確かめました。
- 43研究・1,090人をまとめた2022年の分析では、筋トレに有酸素運動を加えても、筋肉の太さと最大筋力の伸びは「筋トレだけ」と差がありませんでした。
- 一方で、ジャンプ力のような「瞬発的な力」の伸びは小さくなり、とくに同じ日の同じ時間帯(20分以内)に続けて行った場合に差が出ていました。
- 筋線維(筋肉をつくる細い繊維)1本ずつの太さで見ると小さなマイナスが出た分析や、「鍛えている人」「男性」でだけ脚の筋力の伸びが小さかった分析もあり、条件によって結果は割れています。
「筋肉をつけたいなら、ランニングはほどほどに」「有酸素運動をすると筋肉が分解される」という話は、ジムでもネットでもよく聞きます。体脂肪を落としたくて有酸素運動も始めたいけれど、せっかくの筋トレが無駄になるのでは、と迷う人も多いでしょう。
当サイトでも、過去の記事で「週数回・中強度・30〜40分程度の有酸素運動であれば、多くの人にとって干渉より恩恵が上回ります」と書いてきました(干渉=有酸素運動が筋トレの効果を妨げること)。今回はこの一文の裏付けを、筋トレに有酸素運動を加えた人と、同じ筋トレだけをした人を比べた研究をまとめた統合分析4本で確かめます。
読む一次資料
| 年 | 論文(掲載誌) | まとめた研究と見た項目 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ①2022 | Schumann M, et al. "Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis." Sports Med 52(3):601-612 | 43研究・1,090人/筋肉の太さ・最大筋力・瞬発的な力 | 全文無料(PMC8891239) |
| ②2022 | Lundberg TR, et al. "The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis." Sports Med 52(10):2391-2403 | 15研究・300人/筋線維1本ずつの太さ | 全文無料(PMC9474354) |
| ③2021 | Petré H, et al. "Development of Maximal Dynamic Strength During Concurrent Resistance and Endurance Training in Untrained, Moderately Trained, and Trained Individuals: A Systematic Review and Meta-analysis." Sports Med 51(5):991-1010 | 27研究・750人/脚の最大筋力(トレーニング歴別) | 全文無料(PMC8053170) |
| ④2024 | Huiberts RO, et al. "Concurrent Strength and Endurance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis on the Impact of Sex and Training Status." Sports Med 54(2):485-503 | 59研究・1,346人/筋力・瞬発的な力(男女別・トレーニング歴別) | 全文無料(PMC10933151) |
①はドイツ体育大学ケルンを中心に、スウェーデンのカロリンスカ研究所などが加わったグループです。②は同じグループ(筆頭著者はカロリンスカ研究所)が、①と同じ事前登録の計画から筋線維の太さだけを取り出して分析したものです。③はスウェーデン体育スポーツ大学、④はオランダのアムステルダム自由大学の研究者によるものです。4本とも、利益相反(研究結果に影響しうる金銭的な関係)は「なし」と記載され、①②④は外部からの研究資金なし、③は所属大学の資金とされています。
設計──「筋トレだけ」と「筋トレ+有酸素運動」を比べる
4本に共通するのは、次のような研究だけを集めている点です。
- 一方のグループは筋トレだけを行う。
- もう一方のグループはまったく同じ筋トレに、自転車こぎやランニングなどの有酸素運動を加えて行う。
- 4週間以上続け、筋肉の太さや筋力の伸びを比べる。
こうすると、差が出た場合は「有酸素運動を加えたこと」によるものと考えられます。結果は「標準化平均差」という数字で示されます。これはグループ間の差を、測定値のばらつきの大きさで割った値で、0なら差なし、マイナスなら「筋トレ+有酸素運動」のほうが伸びが小さいことを意味します。④の論文は、0.2を「意味のある差」の最小の目安として使っています。
この現象は、1980年に発表された研究(Hickson RC, Eur J Appl Physiol)で、筋トレと持久力のトレーニングを同時に行うと筋力の伸びが妨げられたと報告されて以来、「干渉効果」と呼ばれて議論されてきました。その後の研究では、同じ結果になったものとならなかったものがあると③の序論は整理しています。
結果① 筋肉の太さと最大筋力は「差なし」(2022年・43研究)
①は、健康な成人を対象に、指導者の管理下で4週間以上行った研究43本(参加者1,090人)をまとめました。有酸素運動の内訳は、自転車こぎが24研究、ランニングが16研究です。
| 項目 | 研究数 | 標準化平均差(95%信頼区間) | 判定 |
|---|---|---|---|
| 筋肉の太さ(画像検査などで測定) | 15 | −0.01(−0.16〜0.18) | 差なし(p=0.919) |
| 最大筋力(1回だけ挙げられる最大の重さなど) | 37 | −0.06(−0.20〜0.09) | 差なし(p=0.446) |
| 瞬発的な力(ジャンプ力・素早く力を出す能力) | 18 | −0.28(−0.48〜−0.08) | 筋トレだけのほうが伸びた(p=0.007) |
※論文本文の値。信頼区間は「真の値がおそらくこの範囲にある」という幅で、0をまたいでいれば差があるとは言えません。なお筋肉の太さの値は、点推定(−0.01)が区間の真ん中から少しずれており、読み取りには注意が必要ですが、いずれにしても差はほぼゼロです。
さらに、次の条件で分けても、筋肉の太さと最大筋力の結果は変わりませんでした。
- 有酸素運動が自転車こぎかランニングか
- 筋トレ+有酸素運動の回数が週5回より多いか少ないか
- 参加者が運動未経験か、ふだんから活動的か
- 参加者の平均年齢が40歳未満か40歳以上か
瞬発的な力については、筋トレと有酸素運動を同じ時間帯(間が20分以内)に続けて行った研究で差が出て(−0.31、p=0.043)、少なくとも3時間あけた研究では差が見られませんでした。どちらを先にやるかの順番による違いは確認されていません。
著者らは「筋トレと有酸素運動を組み合わせても、筋肥大と最大筋力の伸びは妨げられない。ただし瞬発的な力の伸びは小さくなりうる」と結論づけています。
結果② 筋線維1本ずつで見ると、小さなマイナス(2022年・15研究)
②は、筋肉を少し採取して顕微鏡で筋線維1本ずつの太さを測った研究15本(300人)をまとめたものです。筋線維には、持久力にすぐれる「遅筋線維(タイプI)」と、大きな力を出す「速筋線維(タイプII)」があります。
| 項目 | 標準化平均差(95%信頼区間) | 判定 |
|---|---|---|
| 筋線維全体 | −0.23(−0.46〜−0.00) | 小さなマイナス(p=0.050) |
| 遅筋線維(タイプI) | −0.34(−0.72〜0.04) | 差があるとは言えない(p=0.078) |
| 速筋線維(タイプII) | −0.13(−0.39〜0.12) | 差があるとは言えない(p=0.315) |
| 遅筋線維・有酸素運動がランニングの場合 | −0.81(−1.26〜−0.36) | 筋トレだけのほうが太くなった |
※論文本文の値。
筋線維全体のp値は0.050で、統計的に意味があるかどうかの境目ちょうどです。ランニングでマイナスが大きく出た結果は、ランニングを使った研究がわずか3本(自転車こぎは12本)に基づいています。著者らも「予備的な結果」と位置づけ、「筋肉を増やしたい人は、有酸素運動にはランニングより自転車こぎを検討してよい」と控えめに述べています。
著者らは、①で筋肉全体の太さに差が出なかったことと食い違う点について、「筋線維の小さな差が、筋肉全体の太さの測定では見えにくい可能性」などを挙げています。また、1回の採取で測る筋線維の太さはばらつきが大きく、同じ人でも約13%ずれるという別の研究の報告を引いて、限界として明記しています。
結果③ 「鍛えている人」「男性」でだけ、脚の筋力の伸びが小さかった(2021年・2024年)
③は、18〜40歳の健康な男女750人(27研究)で、スクワットやレッグプレスの最大挙上重量の伸びを、トレーニング歴別に比べました。
| 参加者 | 標準化平均差(95%信頼区間) | 判定 |
|---|---|---|
| 運動していない人 | 0.03(−0.29〜0.35) | 差なし(p=0.87) |
| ふだん活動的な人 | −0.20(−0.42〜0.02) | 差があるとは言えない(p=0.08) |
| 鍛えている人 | −0.35(−0.59〜−0.11) | 筋トレだけのほうが伸びた(p<0.01) |
| 鍛えている人・同じ時間帯(20分以内)に実施 | −0.66(−1.08〜−0.25) | 筋トレだけのほうが伸びた(p<0.01) |
| 鍛えている人・2時間以上あけて実施 | −0.10(−0.43〜0.23) | 差なし(p=0.55) |
※論文本文の値。
ここでの「鍛えている人」は、競技者か、計画的なトレーニングを3か月以上続けていた人と定義されています。何年も鍛え込んだ上級者だけを指すわけではありません。また、著者ら自身が「同じ時間帯の結果は、ほぼ1本の研究の2グループによって引っ張られている」と注意書きしています。
④は、18〜50歳の1,346人(59研究)を男女別に分けた分析です。
- 脚の筋力(20研究):男性は−0.43(−0.64〜−0.22)で筋トレだけのほうが伸びた。女性は0.08(−0.34〜0.49)で差なし。男女の違いは統計的に意味あり(p=0.03)。
- 瞬発的な力:男性−0.27(p=0.05)、女性−0.52(p=0.03)で、男女とも伸びが小さい傾向。男女の違いはなし。
- 筋肉の太さ:該当する研究が4本しかなく、すべて男性だったため、結論は出せなかった。
- トレーニング歴:筋力の伸びについて、未経験者と鍛えている人の間に違いは見られなかった。
つまり、③は「鍛えている人でだけ差が出た」とし、①と④はトレーニング歴による違いを確認できなかったという食い違いがあります。①の著者らは、③の計算方法(複数の介入グループを同じ対照グループと何度も比べている点など)が結果を強めた可能性を指摘していますが、①でも鍛えている人のほうがマイナス寄りという向きは同じだったと述べています。
この研究が言えないこと
- 「有酸素運動で筋肉が減る」かどうかを調べた研究ではありません。4本とも、比べているのは「筋トレだけ」と「筋トレ+有酸素運動」の伸び方の差です。筋トレをせずに有酸素運動だけをした場合の筋肉の変化は、この記事の対象外です。
- 日本人集団のデータではありません。分析はドイツ・スウェーデン・オランダの研究者によるもので、元の研究も主に欧米の参加者です。
- 期間の短い研究が中心です。③は「多くの研究が12週間未満で、各グループ10人未満のものも多い」と限界に挙げています。何年も続けた場合に差が広がるかどうかは分かりません。
- 有酸素運動の強さと量の影響は、ほとんど分析できていません。①は、元の研究の記載がそろわないため有酸素運動の強さを分析から外したと明記しています。マラソンの練習のような大量の有酸素運動で同じ結果になるとは言えません。
- 上級者のデータはほとんどありません。③は、高度に鍛えた人の研究が少ないため、その区分を設けられなかったとし、5年以上の本格的なトレーニング歴を持つ人での研究が必要だと述べています。④も、高度に鍛えた選手は研究が少ないと述べています。
- 女性と中高年のデータは少なめです。④では女性の研究が男性より少なく、筋肉の太さの研究は男性だけでした。③の対象は18〜40歳、④は18〜50歳です。
- 元の研究の質は「中程度」が中心です。①では研究の質の点数の平均が10点中4.3点で、7本は質が低いと評価されています。運動の研究では参加者に内容を隠すことが難しいという事情もあります。
- ランニングと自転車こぎの違いは、まだ予備的です。②でランニングのマイナスが大きく出たのは3研究だけの結果で、①ではランニングと自転車こぎの間に違いは見られませんでした。
- ①と②は同じ研究グループによる分析です。互いに独立した確認ではありません。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
4本を並べると、「有酸素運動をすると筋トレの効果が消える」と言える根拠は見当たりません。筋肉の太さと最大筋力は、43研究をまとめた分析で「筋トレだけ」と差がありませんでした。冒頭で引いた当サイトの過去記事の一文(週数回・中強度・30〜40分程度なら恩恵が上回る)は、少なくとも筋肉の太さについては、これらの資料と矛盾しないと言えそうです。ちなみに③に含まれた研究の有酸素運動は、トレーニング歴の区分ごとの平均で週2.6〜2.9回・1回29〜37分でした。
一方で、差が出やすい条件もいくつか見えてきました。資料と矛盾しない範囲で整理すると、次のようになります。
- ジャンプ力や瞬発力を重視する時期は、筋トレと有酸素運動の時間をあける。①では3時間以上、③では2時間以上あけた研究で差が見られませんでした。
- 筋肉を増やすことが最優先なら、有酸素運動は自転車こぎ(エアロバイク)を選ぶのも一案。ただし根拠はまだ予備的です。
- すでに鍛えている人や男性で、脚の最大筋力を伸ばしたい時期は、同じ時間帯に続けて行うのを避ける。③では鍛えている人、④では男性でマイナスが出ていました。
反対に、運動を始めたばかりの人や、健康づくりが目的の人は、組み合わせ方を細かく気にするより、続けやすさを優先してよいと③の著者らも述べています。有酸素運動には心肺の働きを高めるなど、筋トレとは別の利点があるとされています。効果の出方には個人差があります。
まとめ
- 筋トレに有酸素運動を加えても、筋肉の太さと最大筋力の伸びは「筋トレだけ」と差がなかったと報告されています(43研究)。
- 瞬発的な力の伸びは小さくなり、とくに同じ時間帯に続けて行った場合に差が出ていました。
- 筋線維1本ずつの太さでは小さなマイナス、「鍛えている人」や「男性」の脚の筋力でもマイナスが出た分析があり、条件によって結果は割れています。
- 短期間・中程度の質の研究が中心で、日本人のデータではなく、上級者や大量の有酸素運動については分かっていません。
出典(一次資料)
- Schumann M, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Freitag N, Rønnestad BR, Doma K, Lundberg TR. Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022;52(3):601-612. doi:10.1007/s40279-021-01587-7 全文(PMC8891239)
- Lundberg TR, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Schumann M. The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022;52(10):2391-2403. doi:10.1007/s40279-022-01688-x 全文(PMC9474354)
- Petré H, Hemmingsson E, Rosdahl H, Psilander N. Development of Maximal Dynamic Strength During Concurrent Resistance and Endurance Training in Untrained, Moderately Trained, and Trained Individuals: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med. 2021;51(5):991-1010. doi:10.1007/s40279-021-01426-9 全文(PMC8053170)
- Huiberts RO, Wüst RCI, van der Zwaard S. Concurrent Strength and Endurance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis on the Impact of Sex and Training Status. Sports Med. 2024;54(2):485-503. doi:10.1007/s40279-023-01943-9 全文(PMC10933151)