この記事の要点
- 日本の試験では、家でできる足の筋トレをした人のひざの痛みは、痛み止めやヒアルロン酸注射を使った人と同じくらい軽くなったと報告されています(①②)。
- ただし、この記事で読む日本の7つの試験は、どれも「運動をしない人」と比べていません。運動そのものの力がどれだけあるかは、日本の試験だけでは分かりません。
- 「運動をしない人」と比べた海外139試験の統合分析(⑬)では、痛みの差は100点満点で約9〜13点でした。著者は、意味のある差かどうかははっきりしないと慎重です。
- 高重量の筋トレを1年半続けた海外の試験(⑭)では、勉強会に通っただけの人と痛みに差がありませんでした。高重量にすれば痛みが軽くなる、とは言えません。
- 日本の試験(⑤)では筋トレでひざの痛みが強まった人が12.0%いました。重い副作用はありませんでしたが、やり方の調整は必要です。
始める前に
急にひざが腫れた、熱を持っている、けがのあとから痛い、ひざが動かなくなる、夜も痛む、といった場合は、筋トレで様子を見ずに整形外科を受診してください。この記事は治療の指示ではありません。
ひざが痛くなると、「太ももを鍛えなさい」と言われることがよくあります。日本整形外科学会の一般向けの解説でも、変形性膝関節症(=ひざの軟骨がすり減って痛みや変形が起きる病気)の予防として、ふとももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることが挙げられています(日本整形外科学会「変形性膝関節症」)。
では、筋トレで本当に痛みは軽くなるのでしょうか。痛み止めと比べるとどうなのか。どのくらいの重さで、週に何回やるのか。そして、やることで悪くなる人はいないのか。
この記事では、日本の研究者による12の研究(試験7つ、別の試験の追加解析1つ、複数の試験をまとめた統合分析2つ、住民調査2つ)を読み、最後に海外の大規模な2つの資料で答え合わせをします。
読む一次資料
| # | 資料(掲載誌) | 中身 | 入手性 |
|---|---|---|---|
| ① | Doi T, et al. Am J Phys Med Rehabil 2008;87(4):258-269 | 日本の複数の医療機関。ひざの痛みのある142人。太ももの筋トレ(家で)と痛み止めを8週間比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ② | Kawasaki T, et al. J Orthop Sci 2009;14(2):182-191 | 順天堂大学。女性102人。家での運動とヒアルロン酸注射を24週間比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ③ | Kawasaki T, et al. J Bone Miner Metab 2008;26(3):279-287 | 順天堂大学。女性142人。家での運動にグルコサミンや骨の薬を足して18か月 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ④ | Kudo M, et al. J Orthop Sci 2013;18(6):932-939 | 札幌医科大学。女性209人。教室に通う運動と家での運動を比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑤ | Mitoma T, et al. Age Ageing 2025;54(8):afaf224 | 岡山大学など。65歳以上の女性75人。3か月の筋トレに女性ホルモンの塗り薬か偽薬を足す | 全文(PMC12342371) |
| ⑥ | Kanazawa H, et al. Medicine (Baltimore) 2026;105(42):e51197 | 順天堂大学。閉経後の女性88人。24週間の家での運動にビタミン剤を足す | 全文(PMC13681127) |
| ⑦ | Katagiri N, et al. Sci Rep 2025;15(1):39992 | 順天堂大学など。65〜80歳の126人。4週間の家での運動に電気刺激か偽の刺激を足す | 全文(PMC12618572) |
| ⑧ | Iijima H, Aoyama T. Med Sci Sports Exerc 2024;56(12):2267-2274 | 京都大学など。50人の試験の追加解析。太ももの筋トレで痛みが軽くなりやすい人は誰か | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑨ | Tanaka R, et al. Clin Rehabil 2013;27(12):1059-1071 | 広島国際大学など。8試験の統合分析。筋トレと有酸素運動の比較 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑩ | Tanaka R, et al. J Phys Ther Sci 2014;26(7):969-975 | 同じグループ。17試験の統合分析。運動の頻度と期間 | 全文(PMC4135217) |
| ⑪ | Muraki S, et al. BMC Musculoskelet Disord 2015;16:305 | 東京大学など(ROAD研究)。東京都板橋区と和歌山県の住民2152人の調査 | 全文(PMC4609096) |
| ⑫ | Harada K, et al. J Aging Phys Act 2015;23(1):1-8 | 国立長寿医療研究センターなど。高齢者1351人の調査 | 要旨のみ(Europe PMC) |
| ⑬ | Lawford BJ, et al. Cochrane Database Syst Rev 2024;12:CD004376 | オーストラリアなど。139試験・12,468人の統合分析(海外の検証) | 全文(PMC11613324) |
| ⑭ | Messier SP, et al. JAMA 2021;325(7):646-657 | 米国。377人。高重量・低重量の筋トレと運動をしない勉強会を18か月比較(海外の検証) | 全文(PMC7887656) |
①②③④⑧⑨⑫は要旨しか読めていません。数値は読めた範囲で書き、書かれていないことは補っていません。⑬は全文が公開されていますが、数値は要旨の部分から取りました。
設計:まず「比べた相手」を見る
ひざの痛みの試験を読むときに一番大事なのは、何と比べたかです。痛みは本人が答える数字で、次の理由でも軽くなると考えられているからです。
- もともと波がある:痛みが強い時期に試験に参加すると、何もしなくても落ち着いていくことがあります。
- 期待の影響:「やっている」という気持ちで、答える数字が変わることがあります。⑭の著者もこの可能性に触れています。
- 人と会うこと:集まりに通うだけで気持ちや活動量が変わることがあります。
そのため、この記事では試験を「運動と他の治療を比べたもの」「全員が運動をして、足したものを比べたもの」「運動をしない人と比べたもの」に分けて読みます。
結果①:痛み止めや注射と比べると、同じくらい軽くなった
| # | 比べたもの | 期間 | 結果 |
|---|---|---|---|
| ① | 家での太ももの筋トレ(63人) vs 痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛薬、58人) | 8週間 | どちらも全ての尺度でよくなり、変化の差は有意でなし |
| ② | 家での運動 vs ヒアルロン酸注射(合計102人、平均70.4歳) | 24週間 | 3つの尺度で同じようによくなり、差は有意でなし |
| ④ | 教室に通う運動(81人) vs 家での運動(122人) | 要旨に記載なし | 教室のほうが、痛みと機能の尺度が有意に大きくよくなった |
①の著者は「太ももの筋トレは痛み止めに劣らない」と結論しています。日本人を対象にした試験で、薬と同じくらいという結果は心強いものです。ただし、次の点に注意が必要です。
- ①は、参加者も自分がどちらをしているか分かっている試験で、142人のうち21人が途中で抜けて121人での解析です。
- 「差が有意でない」は「同じだと証明された」とは違います。①②の要旨には、差がどの程度までなら同等とみなすかの基準は書かれていません。
- ②の要旨には運動の具体的な内容が書かれていません。同じグループの⑥の論文は、自分たちの以前の試験で家での運動が注射と同等だったと紹介しています。
④は同じ運動でも、教室に通うほうが大きくよくなったという結果です。人に見てもらうこと、人と一緒にやることの違いが出た可能性があります。ただし要旨からは、その理由までは分かりません。
結果②:全員が筋トレをした試験では、足して差が出たのは電気刺激だけ
次の4つの試験は、全員が運動をしたうえで、薬やサプリメント、電気刺激を足すかどうかを比べたものです。ここでは「運動だけ(または運動+偽物)」の人の変化を見ます。
| # | 運動の内容 | 「運動だけ」の人の変化 | 足したものの効果 |
|---|---|---|---|
| ③ | 家での運動、18か月 | 要旨に数値なし(全ての群で痛みと機能がよくなった) | グルコサミン・骨の薬ともに足した分の差なし |
| ⑤ | 週3回(教室1回+家で2回、家での回は25分)、3か月 | 椅子から立ち上がる回数(30秒間)15.58→17.37回/痛みの点数 −5.03点(開始時27.26点)/足の筋力 +2.56N/kg | 女性ホルモンの塗り薬は主要な評価で差なし(P=.16) |
| ⑥ | 毎日2回・3種目(足を伸ばして上げる、横向きで足を上げる、ひざでボールを挟む)、24週間 | 20人:痛み(0〜100)53.5→29.8点/ひざの質問票の合計 33.6→17.0点/太ももの筋力 15.9→20.7kgf/10m歩行 9.19→7.76秒 | 活性型ビタミンD・ビタミンEとも差なし |
| ⑦ | 1日20分・週5日、4週間 | 偽の刺激の人:痛み(0〜10)5.24→3.91、さらに4週間後3.35/痛いほうのひざを伸ばす力 241.75→252.68Nで有意な変化なし | 電気刺激の人は痛み 5.67→2.84、ひざを伸ばす力 235.56→294.92Nと、より大きく変化(有意) |
読み取れることが3つあります。
1つ目は、「足しても差が出にくい」こと。③⑤⑥では、薬やサプリメントを足しても主要な評価に差はありませんでした。③の著者は、グルコサミンなどに効果があったとしても運動の効果を超えるものではなかった、という趣旨で考察しています。ただし⑤は、下位の解析で早い段階のひざでは差がある可能性にも触れており、著者自身が探索的な結果だと書いています。⑦の電気刺激だけは差が出ましたが、4週間の短い試験で、早い段階のひざの人に限られています。
2つ目は、⑦で筋力が増えないまま痛みが軽くなっていること。偽の刺激の人は4週間で筋力に有意な変化がなかったのに、痛みは5.24から3.91へ下がっていました。ここから「筋力がついたから痛みが軽くなった」と単純には言えないと考えられます(ただし、偽の刺激自体の影響や自然な変化も混ざっています)。
3つ目は、⑤の1年後です。筋トレのプログラムが終わって9か月後、偽薬の人の痛みは開始時との差が+0.09点と、ほぼ元の数字に戻っていました。一方で、立ち上がりの回数は+1.63回を保っていました。参加者が終了後に運動を続けていたかは、読めた範囲では分かりません。また⑤の参加者は開始時の痛みが低めで、立ち上がりの回数も過去の報告より多いと論文に書かれています。
資金について、⑤は日本学術振興会の科学研究費で、利益相反なしと記載されています。⑥は資金提供と利益相反ともになしと記載。⑦はオムロンヘルスケア株式会社が電気刺激の装置や測定機器を提供しており、論文は会社が研究の設計や解析に関与していないと記載しています。
読み取りに注意
⑥の方法の項目には「偽薬を使った比較試験」とありますが、割り付けの説明には偽薬の群が出てきません。また、運動だけの群は最初から21人と、他の群より少なく、ひざの変形が強い段階の人も20人中1人と少なめでした(他の群は33人中10人、27人中10人)。著者は人数の計算をしていない予備的な試験だと書いています。
結果③:有酸素運動より筋トレ? 週に何回?
日本の研究者が海外の試験を中心にまとめた2つの統合分析があります。数字は標準化平均差(=物差しの違う研究をそろえるための値で、マイナスが大きいほど痛みが軽くなったことを示す)です。
| # | 分類 | 試験数 | 痛みの差(95%信頼区間) |
|---|---|---|---|
| ⑨ | 全体(8週までの短期) | 8 | −0.94(−1.31〜−0.57) |
| ⑨ | 座ったり寝たりして行う筋トレ | − | −1.42(−2.09〜−0.75) |
| ⑨ | 立って体重をかける筋トレ | − | −0.70(−1.05〜−0.35) |
| ⑨ | 有酸素運動 | − | −0.45(−0.77〜−0.13) |
| ⑩ | 筋トレ・8週まで・週3回まで | 9 | −1.06(−1.50〜−0.61) |
| ⑩ | 筋トレ・9週以上・週3回まで | 4 | −0.23(−0.40〜−0.06) |
| ⑩ | 筋トレ・9週以上・週4回以上 | 4 | −0.58(−0.78〜−0.37) |
| ⑩ | 有酸素運動・9週以上・週3回まで | 3 | −0.41(−0.62〜−0.21) |
⑨は「短期間で痛みを軽くするなら、体重をかけない筋トレが一番大きい」と結論しています。⑩は、筋トレでは頻度と期間で差が出ており、9週以上続けるなら週4回以上のほうが差が大きいと報告しています。
ただし、これは別々の試験を分類して比べた結果で、同じ人たちを週3回と週4回に分けて比べたわけではありません。⑩の著者も、研究ごとの内容のばらつきが大きいこと、原因を特定できなかったことを限界として書いています。後で見る⑬は、運動の種類や回数による差を見つけられなかったと報告しています。
結果④:太ももの筋力が強い人は痛みが少ない。でも、筋トレをする人は痛みが多い?
| # | 調査 | 結果 |
|---|---|---|
| ⑪ | 住民2152人(男性690人、女性1462人、平均71.6歳)。その場での測定 | 太ももの筋力は、痛みのない人29.1kgf、痛みのある人23.9kgf(右ひざ)。筋力が5kgf高いごとに、痛みのある人の割合の目安(オッズ比)は0.83(0.78〜0.88)。足の筋肉の量には関連なし(2.59 vs 2.58kg/m²) |
| ⑫ | 高齢者1351人(3000人に依頼、回答52%)の調査 | 自分の体重を使う筋力運動や、日常生活の中で筋力を使う活動を週2日以上している人は、ひざの痛みがある割合が高い |
⑪は「筋肉の量ではなく筋力が痛みと関連する」という興味深い結果で、レントゲンで見たひざの変形の程度とは独立していたと報告されています。一方の⑫は、逆の向きに見える結果です。
どちらもある時点の調査なので、順序は分かりません。⑪は「痛いから太ももを使わなくなり、筋力が落ちた」のかもしれませんし、⑫は「痛いから運動を始めた」「普段から足を使う人だから痛くなった」のかもしれません。どちらの調査も、筋トレが痛みを軽くするか悪くするかを決められるものではありません。
結果⑤:だれでも同じように軽くなるわけではない
⑧は、太ももの筋トレをした試験50人の追加解析です。歩くときにひざが外側へ揺れる動き(外側スラストと呼ばれます)がある人とない人で分けると、揺れのない人のほうが痛みが大きく軽くなったと報告されています。要旨に具体的な数値はなく、人数も少ないので、これだけで「揺れのある人は筋トレをしても無駄」とは言えません。ただ、同じメニューで全員に同じ結果を期待しにくいことを示す一例です。
海外の検証:運動をしない人と比べるとどうか
ここまでの日本の試験に足りなかった「運動をしない人との比較」を、海外の2つの資料で確かめます。
| # | 比べたもの | 結果 |
|---|---|---|
| ⑬ | 運動 vs 何もしない・通常の診療(56試験・4184人) | 痛み(0〜100)で13.14点よい(10.36〜15.91)。確かさは低い |
| ⑬ | 運動 vs 偽の治療など(28試験・2873人) | 痛みで8.70点よい(5.70〜11.70)。確かさは低い |
| ⑭ | 高重量(最大の75〜90%)の筋トレ vs 勉強会(運動をしない比較群。60分の集まりを18か月で24回) | 18か月後の痛み(0〜20)5.1 vs 4.9、差は有意でなし(P=.61) |
| ⑭ | 高重量 vs 低重量(最大の30〜40%)の筋トレ | 5.1 vs 4.4、差は有意でなし(P=.08) |
⑬は139試験をまとめた統合分析で、運動は痛みを軽くするだろうとしながら、本人が「よくなった」と感じる最低限の差(痛みで12点)と比べると、意味のある差かどうかははっきりしないと結論しています。多くの試験で参加者が自分の治療を知っていたことが、結果に影響した可能性も指摘しています。また、⑬は筋トレだけでなく陸上の運動全般をまとめたものです。
⑭は週3回・1回60分の筋トレを1年半続けた大規模な試験です。筋トレ群と勉強会の群で痛みに差はなく、ひざにかかる力の推定値にも差がありませんでした。著者は、勉強会の人でも痛みが33%軽くなったことが、差が出なかった理由の一つかもしれないと考察しています。
軽い副作用は高重量群53件、低重量群30件、勉強会の群4件でした。著者は、高重量で痛みが強まる可能性は否定できないとも書いています。一方で、レントゲンで見た病気の進み方を高重量の筋トレが悪化させることはなかったとも報告しています。⑭の参加者は米国の人たちで、多くが肥満であったと論文に書かれており、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。資金は米国国立衛生研究所の助成です。
副作用:筋トレでひざの痛みが強まった人は12.0%
⑤には、日本人女性のデータとして筋トレに関する副作用が表で示されています。全75人のうち、筋肉痛が13人(17.3%)、ひざの痛みの悪化が9人(12.0%)、腰の痛みの悪化が10人(13.3%)でした。骨折や筋肉が壊れる重い副作用は0人です。
「安全だから我慢して続ける」のではなく、8人に1人くらいは痛みが強まる可能性があると知ったうえで、調整しながら進めるのが現実的だと考えられます。
この研究が言えないこと
- 日本の試験だけでは、運動そのものの効果の大きさは分かりません。この記事で読んだ日本の7つの試験には、運動をしない群がありません。「軽くなった」には自然な変化や期待の影響も含まれます。
- 「痛み止めと同じ」は証明されていません。①②は差が有意でなかったという報告で、同等性を確かめる設計かどうかは要旨から確認できていません。薬をやめてよいという意味でもありません。
- 海外の資料は日本人集団のデータではありません。⑨⑩⑬⑭の中心は海外の試験です。体格、生活様式(正座や床での生活など)、参加者の性別の割合が違います。
- 日本の試験の多くは女性です。②③④⑤⑥は女性のみで、男性にそのまま当てはまるかは分かりません。
- 軟骨が元に戻るかは分かりません。読んだ試験の多くは痛みや機能の質問票を見ており、軟骨が再生するかどうかを確かめたものではありません。⑭でもひざの関節の隙間は群を問わず年に4〜5%ほど狭くなっていました。
- どの運動が一番よいかは決まっていません。⑨⑩は種類や回数の差を報告し、⑬は差を見つけられていません。比べ方によって結論が変わる段階です。
- 長く続けた場合の効果ははっきりしません。多くが数週間から半年の試験です。⑤では終了9か月後に痛みの差が消え、⑭では18か月後に勉強会と差がありませんでした。
- 調査は順序を示しません。⑪⑫は同じ時点の調査で、筋力が痛みを減らすのか、痛みが筋力を落とすのかを区別できません。
- 人工関節の手術を避けられるかは、今回読んだ資料からは言えません。手術を減らすかを主な評価にした試験を、この記事では読んでいません。
実践の視点から
筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。
① まず受診して、ひざの状態を確かめる。痛みの原因は変形性膝関節症だけではありません。今回の試験の多くは、レントゲンなどで診断された人を対象にしています。ひざに痛みがあって自己判断で高重量を始めるのは、資料の範囲を超えています。
② 高重量でなくていい。⑭では、高重量の筋トレは低重量や勉強会を上回りませんでした。⑥の家でのメニューは、足を床から10cmほど上げて5秒止める、といった負荷の軽い運動です。普段バーベルを担いでいる人でも、ひざに痛みがある間は重さを追う理由が資料からは見当たりません。
③ 試験で使われたメニューは家でできる。⑥は次の3種目を朝と夕方の2回、それぞれ20回でした。
- 足を伸ばして上げる:あおむけで足首を床から10cmほど上げて5秒止め、ゆっくり下ろす
- 横向きで足を上げる:痛いほうを上にして横になり、水平まで上げて5秒止め、ゆっくり下ろす
- ひざでボールを挟む:高めの椅子に座り、ひざの間にボールを挟んで5秒押しつぶす
④ 痛みが増えたら量を減らす。⑤では12.0%でひざの痛みが強まりました。⑨の結果を踏まえると、立って行う運動で痛むなら、座ったり寝たりして行う運動に切り替えるのは一つの選択肢だと考えられます。
⑤ サプリメントより先に運動。③⑥では、グルコサミンやビタミン剤を足しても運動だけの場合と差がありませんでした。グルコサミンについてはグルコサミンと膝|広告と科学のギャップで詳しく整理しています。
⑥ 期待の大きさを調整する。「筋トレをすればひざの痛みはなくなる」ではなく、「平均すると軽くなると報告されているが、その差は大きくなく、個人差がある」くらいが、今の資料に沿った理解だと思います。続けられる形で、痛みと相談しながら進めるのがよさそうです。
まとめ
「ひざの痛みは筋トレで軽くなるのか」への答えは、「平均すると軽くなると報告されているが、運動そのものの力は思われているより小さいかもしれない」です。
日本の試験では、家でできる軽い筋トレで、痛み止めや注射と同じくらい痛みが軽くなったと報告されています。ただし、どの試験にも運動をしない群がありませんでした。海外の統合分析では100点満点で約9〜13点の差にとどまり、高重量の筋トレを1年半続けた試験では勉強会と差がありませんでした。
費用がほとんどかからず、読んだ試験では重い副作用も報告されていないので、試す価値はあると考えられます。重さを追わず、痛みが強まったら減らし、医師と相談しながら進める。その範囲で期待するのが、今の資料から言えることです。
腰の痛みについては筋トレで腰痛は軽くなる?日本と海外の7つの研究で、軽い負荷の筋トレで筋肉が増えるかについては軽い筋トレでも筋肉は増える?高齢者2つの実験で整理しています。
出典(一次資料)
- Doi T, Akai M, Fujino K, Iwaya T, Kurosawa H, Hayashi K, Marui E. Effect of home exercise of quadriceps on knee osteoarthritis compared with nonsteroidal antiinflammatory drugs: a randomized controlled trial. Am J Phys Med Rehabil. 2008;87(4):258-269. doi:10.1097/phm.0b013e318168c02d 要旨(Europe PMC)
- Kawasaki T, Kurosawa H, Ikeda H, et al. Therapeutic home exercise versus intraarticular hyaluronate injection for osteoarthritis of the knee: 6-month prospective randomized open-labeled trial. J Orthop Sci. 2009;14(2):182-191. doi:10.1007/s00776-008-1312-9 要旨(Europe PMC)
- Kawasaki T, Kurosawa H, Ikeda H, et al. Additive effects of glucosamine or risedronate for the treatment of osteoarthritis of the knee combined with home exercise: a prospective randomized 18-month trial. J Bone Miner Metab. 2008;26(3):279-287. doi:10.1007/s00774-007-0813-5 要旨(Europe PMC)
- Kudo M, Watanabe K, Otsubo H, et al. Analysis of effectiveness of therapeutic exercise for knee osteoarthritis and possible factors affecting outcome. J Orthop Sci. 2013;18(6):932-939. doi:10.1007/s00776-013-0443-9 要旨(Europe PMC)
- Mitoma T, Ooba H, Takahashi K, et al. Oestrogen replacement combined with resistance exercise in older women with knee osteoarthritis: a randomised, double-blind, placebo-controlled clinical trial. Age Ageing. 2025;54(8):afaf224. doi:10.1093/ageing/afaf224 全文(PMC12342371)
- Kanazawa H, Kurosawa H, Nagao M, et al. Additive effects of active vitamin D3 or vitamin E administration on therapeutic lower-limb home exercise for knee osteoarthritis: a pilot prospective randomized controlled trial. Medicine (Baltimore). 2026;105(42):e51197. doi:10.1097/md.0000000000051197 全文(PMC13681127)
- Katagiri N, Kawashima K, Hamasuna M, Motoyama M, Yamaguchi T. Effects of TENS with home exercise improve pain and muscle strength in older adults with pre-radiographic to mild knee osteoarthritis. Sci Rep. 2025;15(1):39992. doi:10.1038/s41598-025-23670-z 全文(PMC12618572)
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- Tanaka R, Ozawa J, Kito N, Moriyama H. Efficacy of strengthening or aerobic exercise on pain relief in people with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Rehabil. 2013;27(12):1059-1071. doi:10.1177/0269215513488898 要旨(Europe PMC)
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- 日本整形外科学会「変形性膝関節症」(2026年10月31日確認)