研究ノート・自重トレとサプリメント

レモンマートルで自重トレの効果は増すか|高齢者の試験

公開日: 2026-09-21 · 約12分で読めます

ヒロ

執筆・編集:ヒロ

ボディメイク・筋力トレーニング/体組成分析/減量・栄養・睡眠を、科学的エビデンスと実体験から発信。

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この記事の要点

  • 順天堂大学スポーツ健康科学部・町田修一先生(教授)の研究室と、化学メーカーカネカ株式会社(大阪)の共同研究3本(ランダム化比較試験)です。自重を使った軽い負荷の筋力トレーニングを週2回・12週間続けた日本人高齢者に、オーストラリア原産のハーブ「レモンマートル」の葉の抽出物を追加摂取してもらい、太ももの筋肉の厚みの変化をプラセボ(偽物のカプセル)群と比較しました。
  • 3セットの通常量トレーニングでは統計的な有意差が確認できず(傾向のみ、P=0.082)1セットの少ないトレーニング量では有意差が確認できた(P<0.05)など、3つの試験で結果が揃っていません。
  • プラセボ群(レモンマートルを摂らずトレーニングだけ行った人たち)も、12週間の自重トレーニングだけで太ももの筋肉が5〜10%前後太くなったと報告されています
  • 3つの試験すべての資金提供者は、レモンマートル抽出物を製造・販売するカネカ株式会社で、共著者のうち3人が同社の社員です。

「自重トレーニングだけで、高齢者の筋肉は本当に増えるのか」「増やす助けになる成分はあるのか」。この2つの問いに、同じ研究チームが3本のランダム化比較試験で答えようとしています。今回読むのは、順天堂大学スポーツ健康科学部とカネカ株式会社の共同研究チームが2025年と2026年に発表した論文です。負荷を使わない自重の筋力トレーニングと、「レモンマートル」というオーストラリア原産のハーブの葉から採れる抽出物を組み合わせたときに、高齢者の太ももの筋肉がどう変わったかを、3つの独立した試験の数値で確認します。

読む一次資料

項目内容
論文①Mitsuhashi R, Sawada S, Nishino A, Honda S, Tominaga Y, Makio S, Ozaki H, Machida S.
"Low-Dose Lemon Myrtle Supplementation Enhances Muscle Hypertrophy in Older Adults Undergoing Low-Load Resistance Training: A Randomized Controlled Trial."
Journal of Aging Research 2026(半量・125mg/日・3セット)
論文②Sawada S, Nishino A, Honda S, Tominaga Y, Makio S, Ozaki H, Machida S.
"Lemon myrtle extract enhances muscle hypertrophy induced by low-load bodyweight resistance training in older adults: Findings from two independent randomized controlled trials."
The Journal of Nutrition, Health & Aging 2025(通常量・250mg/日・Study1=3セット/Study2=1セット)
実施機関順天堂大学スポーツ健康科学部・大学院スポーツ健康科学研究科(千葉・東京)+カネカ株式会社(大阪)
研究の種類ランダム化・二重盲検・プラセボ対照比較試験(3本・ランダム割付時点でのべ148人)
入手性いずれもオープンアクセス=全文無料。数値はすべて本文・表から確認しました
一次資料PMC12862105(論文①・全文)PMC12547727(論文②・全文)

責任著者(コレスポンディングオーサー)は順天堂大学スポーツ健康科学部教授・町田修一先生です。筋肥大・筋萎縮のメカニズムを専門とする研究者で、両論文とも研究の統括を担当しています。筆頭著者は研究チームの中心メンバーで、共著者のうち3人(西野・本多・冨永の各氏)はカネカ株式会社の社員です。

設計──同じトレーニングに成分をプラスする3つの試験

項目内容
対象「自分の筋力や歩く速さが落ちたと感じている」65歳以上の日本人男女(3試験のランダム割付時点の合計で148人=論文①60人+論文②Study1の47人+Study2の41人、実施地は東京)。持病・服薬などの条件で事前にふるいにかけたうえで、歩く速さや立ち座りテストの成績が一定より良い人(=すでに衰えていない人)は除外
介入食品レモンマートル(Backhousia citriodora)の葉の熱水抽出物を粉末化した錠剤(製品名「Lemon Myrtle UP」)。有効成分はエラジタンニンの一種「カスアリニン」。プラセボ錠は同じ外見・重さで有効成分を含まない
用量論文①=125mg/日(カスアリニンとして1.25mg)=半量。論文②=250mg/日(カスアリニンとして2.5mg)=通常量
トレーニング内容スクワット・左右のスプリットスクワット・腕立て伏せ・クランチの4種目、すべて自重(器具なし)。1回あたり3秒で下ろし3秒で戻す動作、セット間の休憩60秒
トレーニング量「通常量」=1セット6〜8回・週の後半に2→3セットへ漸増。「少ないトレーニング量」=1セット中心(開始2週のみ2セット)。いずれも週2回・12週間、専門インストラクターの監督下
実施場所民間フィットネスクラブ「スポーツオアシス」の東京都内の拠点(論文②は雪が谷・武蔵小金井・赤塚の3支店、論文①は雪が谷支店)
倫理・登録順天堂大学スポーツ健康科学研究科倫理委員会の承認(論文①=2024-51、論文②=2022-131)。UMIN臨床試験登録(論文①=UMIN000054801、論文②=UMIN000050432)
主要評価項目超音波で測った太もも前面の筋肉の厚み(Anterior Thigh, AT)
副次評価項目通常・最大歩行速度、30秒椅子立ち座りテスト(CS-30)

3つの試験は、それぞれ独立して募集・ランダム割付されています。論文①は125mg/日×3セット(60人登録、最終解析42人)。論文②は2つの試験を含み、Study 1が250mg/日×3セット(47人)、Study 2が250mg/日×1セット中心(41人)です。

結果① 通常量トレーニング(3セット)では、成分の効果は統計的にはっきりしなかった

試験太もも筋厚の相対増加率群間差
論文②Study 1(通常量250mg・3セット・n=47)レモンマートル群+14.9%(95%CI 11.1〜18.6%)絶対値の差1.29mm(95%CI −0.17〜2.75mm)
P=0.082=統計的に有意でない(相対増加率どうしの比較はP<0.05)
プラセボ群+9.7%(95%CI 6.3〜13.0%)

論文②のStudy 1は、通常量(3セット)のトレーニングにレモンマートルを追加した効果を調べた試験です。筋肉の厚みの絶対値(mm)で群を比較する分析(混合効果モデル)では、レモンマートル群とプラセボ群の差は統計的に有意ではありませんでした(P=0.082)。一方で、ベースラインからの相対的な増加率(%)どうしを比べる別の検定では、レモンマートル群のほうが有意に大きく増えていました(P<0.05)。同じデータでも、どの数値・どの検定方法で比較するかによって「有意」の判定が変わる、という点に注意が必要です。この試験では、レモンマートル群の92.0%、プラセボ群の86.4%で、何らかの筋肥大(厚みの増加)が確認されています=どちらの群でもほとんどの人の筋肉は増えており、差はその「増え方の大きさ」にとどまります。

結果② 少ないトレーニング量(1セット)では、成分の上乗せ効果が統計的にも確認された

試験太もも筋厚の相対増加率群間差
論文②Study 2(通常量250mg・1セット中心・n=41)レモンマートル群+11.5%(95%CI 7.7〜15.3%)絶対値の差1.59mm(95%CI 0.19〜2.98mm)
P<0.05=統計的に有意
プラセボ群+5.4%(95%CI 1.5〜9.3%)
試験太もも筋厚の相対増加率群間差
論文①(半量125mg・3セット・n=42)レモンマートル群+11.9%P<0.05=統計的に有意(12週時点の絶対値:25.8→28.8mm)
プラセボ群+6.5%

低ボリューム(1セット中心)で行った論文②Study 2では、絶対値・相対値どちらの比較でも統計的に有意な差(P<0.05)が確認されました。効果量(グループ差の大きさの指標)もStudy 1の0.155に対しStudy 2は0.745と、より大きく出ています。一方、量を半分にした論文①(125mg・3セット)でも有意差が出ています。「セット数が多いほど」「用量が多いほど」効果がはっきり出るという単純な関係にはなっておらず、3つの試験を並べても一貫した量ー反応関係は見えません。研究チーム自身も、この点をトレーニング量による個人差やサンプルサイズの限界として論じています。

いずれの試験でも、通常・最大歩行速度や30秒椅子立ち座りテスト(CS-30)といった「体の動きやすさ」の指標には、レモンマートル群とプラセボ群のあいだで統計的な差はついていません。筋肉の厚みが増えても、歩く速さや立ち座りの回数といった実際の体の動きの指標にまでは、この12週間では反映されていませんでした。

結果③ トレーニングをやめると、成分の効果も6週間で消えた

論文①(半量・42人)だけは、12週間のトレーニング終了後にさらに6週間のトレーニング休止期間(デトレーニング)を設け、その間もレモンマートルまたはプラセボを摂り続けてもらっています。

時点レモンマートル群プラセボ群群間差のP値
0週(開始前)25.8±4.74mm25.9±3.35mm0.923
12週(トレーニング終了時)28.8±5.98mm27.5±3.39mm0.380(本文中では相対増加率どうしの比較でP<0.05)
18週(6週間の休止後)26.8±4.92mm26.8±3.21mm0.982=差なし

トレーニングをやめて6週間が経つと、レモンマートル群の筋肉の厚みは28.8mmから26.8mmまで戻り、プラセボ群との差は事実上消えました。レモンマートルを摂り続けていても、トレーニングをしなければ増えた筋肉は維持されなかった、という結果です。なお12週時点の表中の絶対値どうしのt検定はP=0.380で有意水準に届いていませんが、これは前掲のとおり相対増加率(%)どうしの比較(P<0.05)とは別の検定であり、論文はこちらを主たる結論として提示しています。

安全性については、3つの試験を通じて有害事象の発生率にレモンマートル群とプラセボ群で統計的な差はなく、すべての有害事象は試験食品・トレーニングと無関係と医師が判断しています。摂取コンプライアンス(指示どおり摂れた割合)は99%を超えていました。

資金と利益相反

この研究が言えないこと

  1. 3つの試験すべての資金提供者と、共著者3人の所属先が、この成分を製造・販売するカネカ株式会社です。利益相反として論文に開示されている点は健全ですが、独立した第三者機関による再現データではありません。
  2. 3つの試験の結果が一貫していません。通常量・3セットの試験(論文②Study 1)では絶対値の群間差は有意でなく(P=0.082、相対増加率どうしの比較ではP<0.05)、通常量・1セットの試験(論文②Study 2)と半量・3セットの試験(論文①)では有意差が出ています。用量やトレーニング量と効果の関係を単純に説明できる法則性は、3試験を並べても見えません。
  3. 主要評価項目(筋肉の厚み)で差が出ても、副次評価項目(歩行速度・立ち座りテストという「体の動きやすさ」の指標)には、どの試験でも統計的な差がついていません。筋肉が「太くなった」ことが、実際の生活動作の向上に直結するかは、この3試験だけでは確認できていません。
  4. 対象者は「自分で筋力低下を自覚している」自己申告ベースの高齢者で、医学的にサルコペニア(筋肉減少症)と診断された集団ではありません。
  5. 民間のフィットネスクラブに通い、週2回12週間のプログラムに参加できた健康な高齢者のデータです。要介護・虚弱で外出が難しい高齢者にそのまま当てはまるかは分かりません。
  6. 効果が確認されたのは12週間のトレーニング中だけです。論文①では、トレーニングをやめると6週間で群間差が消えました。レモンマートルを摂り続ければ筋肉量が維持されるという結果ではありません。
  7. 参加者の脱落・除外が少なくありません。論文①は60人が登録されましたが、体調不良やプロトコル違反(指示外の運動をした、トレーニングを規定回数以上欠席した等)による除外を経て、最終的な解析対象は42人でした。除外の判定は盲検化を保ったまま行われたとされていますが、当初のランダム化集団そのものの解析(intention-to-treat)ではありません。
  8. 安全性が確認されているのは12週間(および6週間の追跡)の範囲だけです。より長期に摂取した場合の安全性・効果の持続性は、この3試験だけでは分かりません。

実践の視点から

筆者はトレーニング歴約40年の実践者ですが、公的な資格は保有していません。以下は資料を読んだうえでの整理であり、指導ではありません。

この3つの試験からまず読み取れるのは、「特別な器具を使わない、軽い自重トレーニングだけでも、高齢者の太ももの筋肉は12週間で5〜10%前後太くなる」というプラセボ群(トレーニングのみ)の結果です。スクワットやプッシュアップのような自重の種目を週2回続けるだけでも、筋肉は反応する、という点は3試験に共通しています。

レモンマートルという成分がその効果を「さらに底上げする」かどうかについては、今回読んだ3試験の結果は一様ではありません。1セット中心の低ボリューム試験では統計的にも明確な上乗せが確認された一方、3セットの通常量試験では絶対値の比較で有意差に届かず、相対増加率の比較でのみ差が出ています。「レモンマートルを摂れば筋肉がもっと増える」と単純に言い切るには、まだ試験どうしの結果が揃っていません。加えて、3試験とも資金提供者がこの成分の製造元である点は、結果を受け取るときに念頭に置いておくべき情報です。

一方で、「軽い負荷の自重トレーニングでも、継続すれば高齢者の筋肉は増える」ということ自体は、プラセボ群のデータからも一貫して確認できる実践的な情報です。器具やジムの会費がなくても、決まった種目を週2回コツコツ続けることに意味がある、という点は、この3試験からも読み取ってよいと思います。

まとめ

出典(一次資料)

  1. Mitsuhashi R, et al. Low-Dose Lemon Myrtle Supplementation Enhances Muscle Hypertrophy in Older Adults Undergoing Low-Load Resistance Training: A Randomized Controlled Trial. J Aging Res. 2026.(PMC全文・オープンアクセス)
  2. Sawada S, et al. Lemon myrtle extract enhances muscle hypertrophy induced by low-load bodyweight resistance training in older adults: Findings from two independent randomized controlled trials. J Nutr Health Aging. 2025;29(12):100706.(PMC全文・オープンアクセス)

よくある質問

レモンマートルとは何ですか?

オーストラリア原産のハーブ(Backhousia citriodora)で、レモンのような香りが特徴の植物です。今回の研究で使われたのは、その葉を熱水で抽出し粉末にした「カスアリニン」という成分を含む錠剤で、カネカ株式会社が製造・提供しています。

自重トレーニングだけでも高齢者の筋肉は増えるのですか?

今回読んだ3つの試験のプラセボ群(成分を摂らずトレーニングだけ行った群)では、週2回12週間の自重トレーニング(スクワット・スプリットスクワット・腕立て伏せ・クランチ)だけで、太ももの筋肉の厚みが5〜10%前後太くなったと報告されています。

レモンマートルを摂ると、どのくらい筋肉が増えるのですか?

試験によって差があります。1セット中心の少ないトレーニング量の試験では、レモンマートル群がプラセボ群より統計的に有意に大きく増加しました(相対増加率11.5% vs 5.4%)。一方、3セットの通常量トレーニングの試験では、絶対値の比較では統計的な有意差には届きませんでした(P=0.082)。試験によって結果が一貫していません。

筋肉の厚みが増えれば、歩く速さや立ち座りも楽になるのですか?

今回読んだ3試験のいずれでも、通常・最大歩行速度や30秒椅子立ち座りテスト(CS-30)といった「体の動きやすさ」の指標には、レモンマートル群とプラセボ群で統計的な差はついていません。筋肉の厚みの変化が、そのまま体の動きの向上につながるかは確認されていません。

レモンマートルを摂るのをやめたら、増えた筋肉はどうなりますか?

半量(125mg/日)の試験では、12週間のトレーニング終了後に6週間トレーニングを休止したところ、成分を摂り続けていても筋肉の厚みはほぼ元の水準に戻り、プラセボ群との差は消えました。トレーニングを続けることが前提の効果です。

この研究にはどんな利益相反がありますか?

3つの試験すべての資金提供者は、レモンマートル抽出物の製造元であるカネカ株式会社(大阪)です。共著者のうち3人が同社の社員で、試験食品の提供を担当しています。データの解析・キュレーションには関与していないと論文に明記されています。

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